- 小川美潮
- 4 to 3
この作品を聴いていない人は不幸だと思う。そこまで言い切れる邦楽界不朽の名盤である。
小川美潮は実験的なバンド「チャクラ」を経てソロ活動に入った。このアルバムはソロ2作目であるが前作からかなりのインターバルが空いているので実質的には第2のソロ時代1作目という位置づけにある作品。
チャクラ時代にはちょっとエキセントリックな変わった声のVOだな程度の認識しかなかった。また、彼女はフランク・ザッパのフリークとしても有名で、ちょっと普通のミュージシャンとスタンスが異なっていた。
この作品は正に「美潮」印の大ヒットである。
チャクラ時代からの盟友、板倉文(またこの人もかなりのくせもの)を始めとする作曲陣(美潮本人のペンになる曲もある)がまた良い仕事をしている。
「小川美潮に歌わせるとしたらこういう曲?小川美潮の世界ってこういう感じ?」という各人のあまり気負いの無い思惑や方向性が見事に結実したのではなかろうか。
彼ら作曲陣にとってもこのアルバムの製作タイミングは絶妙だったらしく、この作品以降は「小川美潮」っぽさを同じような路線で追求しようとする気負いが、今度は「ありすぎて」なぜか失敗している印象がある。
まあ、そうは言っても良いアルバム、曲がありますけどね。これには及ばない。
アルバムの収録曲はどれもホント素晴らしい。聴いていると日頃の生活で張りつめた緊張がほぐされていく気持ちよさを体感できる。こういう感覚ってなかなか味わえない。
”四つ角曲がるみたいに いつも心は勝手気儘 景色を変える 闇を滑り地獄へでも行ける 橋を渡り天国へも行ける 望む世界みんな隣合わせ 微笑み涙もここにあるよ だから”・・・これらの歌詞に代表されるある意味、世の真理を語っているかのような彼女の内部世界から産み出された歌詞、曲たち。
どこか肩の力が抜けたようなおしつけがましくない美潮の歌声もこういうメッセージを伝える際にマッチしていて良い。
まるで短編映画を見るかのような完結した世界を歌い上げる見事な名曲「窓」。
そしてタイトル曲「4 to 3」・・・これは多分、4速から3速へのシフトダウンを意味するのだろう。日々の生活を送る中でシフトダウンしてこそ見いだせるもの、シフトダウンしなければ見えてこないもの。その必要性を歌っているんだと思う。
・・・さよならをかさねる度、愛しいものが増えていく・・・
人間として生きていく上で必ず共感できるフレーズがどこかにあると思う。
実は音楽を聞くときにあまり歌詞を重要視しない私であるが、このアルバムについてはちょっと違う。
この人のライブは4回ほど見ているが、ライブでは実に雄壮な歌唱力を披露してくれる。ライブ内のトークから察するにニュートラルな生き方が出来る女性なんだろうな。
発売時のCDの帯にあった「いいうたいっぱいうたいたい」というコピーは彼女の歌に対する姿勢を良く表していると思う。