The Dreaming / Kate Bush | 音楽見聞録
Kate Bush
The Dreaming
ケイト・ブッシュはデビュー初期に、「嘆きの天使」や「嵐が丘」等の曲でのヒラヒラ踊り&エキセントリックなお嬢様のイメージがあまりに強すぎ、それ以降自身の方向性をなんとなく見失いかけていたのではないだろうか?もっともその時期のケイトも十分に魅力的であり才能にあふれている事は間違いない。
「嵐が丘」を題材に持ってくるところなんて文学少年少女の心を限りなくくすぐってくるしね。「嵐が丘」は曲そのものも変拍子で構成された見事なもの。イントロのピアノに続いて「あの声」・・・・惹かれない訳がない。
2枚目以降はプロデュースする側があまりにイメージを先行させすぎ、彼女に自由な作風を許さなかったのだろうか?前作の3rdアルバム「Never for Ever」にしても佳作はあるものの今一つ作品全体を貫く通奏低音と言える部分が無かったように思うのは私だけだろうか。なんか一皮むけてないない印象があるんです。
そうは言っても一定の水準に達している良い作品でしたけどね。
そういったモヤモヤを一気に吹き飛ばしたのがスタジオ盤4枚目の本作である。本作の彼女の叫びは突出しているなあ。アルバムとしてもボルテージの極めて高いトータル性を感じる。それと彼女の音に対する拘りも。
この頃は精神的に追いつめられておりまずかった時期だったらしいが、収められた作品の数々はホント、クオリティが高い。また、これまでのリスナーからの期待感を含め、何ものにも媚びる事のない彼女の本当にやりたかった音楽が展開されているような気がする。一旦、ここで過去を断ち切ったような印象を受ける。
これぞ本来のミュージシャン、ケイト・ブッシュの姿ではなかろうか?「かわいさ」を売り物にした半アイドル時期があったように思えるから尚更そう感じてしまう。
当時最高ともいえる72トラックのレコーダーを使用し、そのうちなんと半分の32トラックをVOパートのために充てている、この拘り。曲も細部まで計算し、丁寧につくりこまれたものが多い。
ささやきから絶叫までケイト・ブッシュの多彩なVOが楽しめる。何と豊かな才能の持ち主なんだろう。詩の世界も女性であるが故の独特の強烈さと輝きと想像力を放っている。
頭の中に「内なるイメージの世界」を作りだし、それを作詞・作曲によって具体的に曲として仕上げ、更に自分自身の歌声でそれを現実的な形である作品として完結させる、といった作業経過が良くわかる。自分の、自分だけの世界をしっかりと持っている希有なミュージシャンである。この時期に是非をライブやって欲しかった。この時期のプロモーション・ビデオのはじけ具合から考えると本当にこの楽曲たちでのステージを見たかったなあ。
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