中日にトレードされた伴から
「今までお前に協力した借りをわしに返してくれ」
といきなり言われてしまった飛雄馬
しかし大リーグボール2号を失った今、飛雄馬には
借りを返すすべもなく途方に暮れる
更に無意識で立ち寄った実家の長屋は取り壊しに・・・
これには父一徹もショックを受け、妻春江との
思い出を回想する
「知ってます・・・川上さんがさっき言付けを
持ってきました」
「うう・・・かわかみだとぉ~
あんの野郎・・・わしの魔送球をビーンボールだと
ぬかしやがった」
「もう野球も巨人軍もどーでもいいわ・・・
春江っ、酒だっ酒買ってこいっっっ」
「あなた・・・・しっかりしてくださいっ」
「チッ・・・うるせーよ。。。。」
それからの一徹は酒浸りの毎日を送り
しょっちゅう近所で騒ぎを起こした
「なんだよこの野郎っ、ちょっと暴れたくらいで
つまみ出すとはいい度胸じゃねーか・・・ヒック」
「星さん、もういい加減にしたらどうだい?
ツケだってかなり溜まってるし、あんたに来られると
迷惑なんだよ」
「なんだとーっ、ぶっ殺すぞてめえヒック」
「あなたっ」
「しかしハルさんも大変だねえ・・・・
星の旦那働きもせず毎日昼間から酒かっくらって
大暴れするんだから・・・」
「・・・・・」
「言っちゃ悪いが星の旦那は人間の屑だね」
「にんげんの・・・くず・・・・」
明子ねーちゃんは覚えなくて
もいい言葉を覚えた
一徹が働かないので春江は、内職の傍ら
身の回りの物を売って、金や食料を貰い歩いていた
「星さん・・・なんかだんだん持って来るもんが
セコくなるねえ・・・こんなゴミこたいなもん貰っても
何もあげられないよ」
「す・・・すみません・・・・
今はそんなものしかないんです。。。。。」
ついに疲労から心臓発作を起こしてしまう
「お・・・おかあちゃん・・・・」
「へ・・・平気だよ・・・ちょっと苦しくなっただけさ
この事はお父ちゃんには黙ってるんだよ」
「おかあちゃん・・・・・・」
「あたしあのおとうちゃんきらいっ
だってにんげんのくずだもん」
「な・・何を言うの明子
おとうちゃんだって苦しいのよ・・・・」
「家族が苦しんでいたら助けないといけないの!
わかって明子」
「うん・・・わかった」
明子ねーちゃん、子供の頃からこんな地獄を
見て育ったんだ、、、、
「あなた、飛雄馬の面倒見てくれてありがとう
飛雄馬ぐずったりしなかった?」
「へへへへ・・・ヒック
別に・・・しかしこいつはわしの子だなぁ・・・
才能あるぜ・・・ヒック」
「才能?」
「初めてボール持たせたんだけどな・・・・
しっかりスナップ効かせて投げ返しやがった・・・ヒック
こいつは将来プロになれるかもしれないな・・・ヒック」
すると春江の顔色が変わる
「あなたっ、飛雄馬に野球は教えないでって
前から言ってるでしょ」
「へへっ、どーだい!
盗んだんじゃないぜ、俺の稼いだ金で買ったんだ」
「春江・・・俺働くことにしたよ
日雇いの土方だけどな・・・お前に迷惑かけすぎたよ
飛雄馬には野球の事も話さん」
すると突然泣き出す春江
「ん?泣く事ないだろ、これからは真っ当に働いて
お前にも苦労はさせん!
人間の屑にはなりたくないからな」
「あなたっ・・・・本当に野球辞めちゃうのね・・・
もう巨人軍での復帰は絶望なのね、、、、」
それからというもの、一徹は土方仕事に励んだ
人が変わったように毎日ツルハシを振って
昼も夜も働き続けた
「飛雄馬に野球教えてーな・・・・
しかし母さんがあんなに反対する以上どうにもならん。。。」
「やあハルさん、星の旦那最近は立派に働いてるっ
てーじゃないっスか
よかったよかった」
「・・・・どうも」
「なんスか?
うれしくねぇーんですかい」
「・・・・失礼します」
やがて春江の心臓病が悪化
いよいよ危なくなった時、虫の息で春江は一徹に伝える
「あなた・・・布団の下を見てちょうだい・・・」
それは一徹が引き裂いたユニフォームを仕立て直して
作った子供用のユニフォームだった
単にGではなくちゃんとGIANTSのロゴが入ってる
「それを飛雄馬に着せてください・・・・・
あなたの手で立派な野球人に育てて・・・・」
「し・・・しかしお前飛雄馬に野球を教えるの
あんなに拒否してたじゃないか」
「それはあなたに野球選手として復活して欲しかったの・・・
だってあのままじゃあ、あなたは苦しいだけの
野球選手で終わったでしょ・・・だからあなたに奮起して
もらいたかったの。。。」
「は・・・春江っっっ」
「どうかあなたの手で、飛雄馬をジャイアンツの選手に・・・
巨人の星に育てて・・・それがあなたに残された
最後の仕事よ・・・・」
「飛雄馬にはあなたの分までプロ野球選手として
頂点に立たせてあげて」
「そ・・・そうだったのか・・・春江っ
わ・・・わしはそれに気付かず、、、スマン春江」
ガクッ
「お・・・おいっ春江?
は・・・・・春江っ、目を覚ませ・・・・・」
「ふっ、そうして巨人の選手になった飛雄馬だが・・・
その飛雄馬を地獄に落としたのはこのわしだよ母さん・・・
何をやっとるのだと怒っておるじゃろうな」
「だがあいつはきっと蘇る
何度死んでも不死鳥のごとくな・・・・・
わしはそれを望んでおるのだよ」
しかしその飛雄馬
一緒に取り壊され、瓦礫の下に埋まった家財道具を
必死であさっていた
「クソッ、土建屋のやつことごとくぶっ壊していきやがった
母ちゃんの遺影もどっかにいっちゃったぜ。。。
あれが唯一俺が知ってる母ちゃんの顔だったのに・・・」
「大リーグボール2号も、伴も姉ちゃんも失い
そのうえ思い出までも失うとはな、、、、
ガチで何にも残らないでやんの。。。。
完全にオワタ、、、、、、」
ちなみに前回の予告編では飛雄馬は瓦礫の中から
オモチャを見つけると言っていたが、そんなものは
欠片も見つけていなかった・・・
巨人の星栄光の星編第162話 「仕組まれた罠」
につづく