飛雄馬は大リーグボール2号でついに宿敵花形を
打ち負かした
見事リーグ制覇5連覇を成し遂げ、更に日本シリーズでも
消える魔球で征し、川上巨人をV5に導いた
しかしまだまだ飛雄馬の戦いは続くのだ
というわけで今回から栄光の星編です
これが最終章となり、今回は第133話
「大投手・金田の引退」というエピソードです
物語は少し時間を遡ります
1969年(昭和44年)10月10日
巨人の星では阪神戦でV5を達成していたが
史実ではこの前日の中日戦で巨人が勝ちV5を決めている
この日は中日との2戦目、先発は城之内だったが
3-1とリードの5回表から川上監督は城之内を交代
カネヤンをリリーフに送った
ここまで通算399勝のカネヤンである
勿論この登板は、カネヤンに400勝をさせるためだ
巨人は9回表まで7-2と大きくリードを広げ
ツーアウトでバッターは島谷金二
ちなみにカネヤン、この試合5回からリリーフに立ち
9回までに50球行かない省エネピッチ
取られた得点は、フォックスという水原監督の友達の
息子というコネで入った外国人のホームラン1本のみ
それをサードの長嶋さんがわざわざ土井さんの
守備位置まで出張してキャッチ
一塁の王さんに送球して試合終了
多分実際は土井さんが処理したと思うけどね
カネヤン飛び上がって喜ぶでもなく
マウンド上で静かに立ち尽くす
実際もそんな感じだったらしい
これがこの年の5勝目だった
前半戦は全く勝てず、後半戦川上監督の温情で
登板数増やしてもらっての400勝達成だから
最初考えてた派手なパフォーマンスも全部
忘れたとか
「400勝は川上監督はじめ、チームのみんなと
わしを支えてくれたファンのおかげだや
ホンマにありがとう」
「いや、今年は全然勝てんかったでよー
もう399勝で終わるんじゃないかと思とったよ」
「バカいえ~、今期たった5勝だぎゃ・・・・
わしにあと20年やれ言うとんのか」
「え~っ、まさかこれで引退とかじゃ
ないですよねえ?」
記者が冗談のつもりで言ったのだが・・・・
会場が急にざわめき出す
カネヤン本人は否定も肯定もしなかったが
『引退だなんて・・・・こうなりゃ直接
金田さんに問いただしてみよう』
「かっ・・・金田さんっっっ・・・・・
と・・・突然押し掛け、申し訳ござりませぬ
でしたであります・・・・」
緊張する二人
「な・・・なんだぎゃ、そんなよそよそしい
挨拶しよって・・・・」
「は・・・はあすんません・・・・・
実は星のやつが、金田さんにどうしても聞きたい
事があるっちゅーもんで・・・ハイ」
さんっっっっ!」
「ん?
まさか今更わしにカーブの投げ方聞きにきた
わけじゃあなかろうな・・・・」
「か・・・・カーブの投げ方・・・・・
そういやそんな事ありましたね・・・・」
「そう、ありゃあ去年の春の台湾キャンプの時の事
だったぎゃ・・・・」
「金田さんっ、俺の軽い球質ではストレートだけでは
心もとないです!
どうか俺に変化球を教えてくださいっっ」
何を寝言ぬかしよるっ」
「使い古しの変化球覚えるより、自分で編み出さんかっ
大リーグの選手にできて日本人のおみゃあに
できんことはにゃーでよ」
「あの時の金田さんのあの言葉がなければ・・・・
大リーグボール1号もなかった・・・・・
金田さんは俺の命の恩人です」
「なんだ、そんな事言いに来よったんか?
命の恩人っちゅうのは大げさだぎゃ」
「いえ、俺の野球生命の恩人である事は間違いないです」
「それであの・・・・引退されるって本当なんですか?」
「・・・・・・・・・」
「ふふっ、できる事なら死ぬまで引退なんかしたくないがのう
こいつが言う事聞かんでよぉ・・・」
「これでも真っすぐ伸ばしとるつもりだぎゃ・・・・
カーブの投げすぎで曲がったままでよぉ」
「ま・・・・曲がったままっ!?」
カネヤンの曲がった左腕を見せられて飛雄馬は
モーレツにショックをうけたのだった
巨人の星(栄光の星編)第133話 「大投手・金田の引退」①-2
につづく