出兵した若き日の一徹は、戦場で偶然ひとりの男と出会う
それはかつて甲子園を沸かせた海草中の嶋清一だった
嶋は戦争に行ってもいつでも野球ができるようにと
手作りのズックのボールを持ち歩いていた
一徹も嶋も早く戦争が終わって野球がしたい
という気持ちは同じだった
しかしそこに無情にも米軍の襲撃が始まる
避難する一徹と嶋だったが、ついに嶋が
モロに銃撃を浴びてしまった
四つ光ってるのは南十字星か?
「先輩・・・・これ、お会いできた記念に
受け取ってください・・・・」
「しっかりしろと言われても・・・・・僕は
もうダメらしいです・・・・」
「何を弱気になっとる!
わしの許可なく死ぬことは許さんぞっ」
「先輩、約束してください・・・・再び日本の空に
白球を飛び交わさせてやると・・・・」
「わ・・・わかった約束する!
だが今は死ぬな、ここでは死ぬな、日本に帰ってから死ね」
ちなみにこれは完全な巨人の星の創作で、実際の嶋は
海軍の通信兵であり、軍艦の電探(レーダー)係だったため
陸上で小銃かまえて撃ったりする事はなく
最後は日本に帰還中の輸送船に搭乗中、敵潜水艦の魚雷で
撃沈され海の藻屑となってしまった
「ダメだ嶋君・・・・どうやらわしはもう
君との約束を果たす力はなくなった、、、、、」
訪れたのは和歌山の嶋の生家
嶋から預かったズックのボールを、嶋の母親に
返そうとするが・・・
「お話はわかりましたが、私はこれを受け取る
わけにはいきません」
「そりゃあ清一の形見のボールです・・・・・
いらないわけではありませんが、これは清一が
星さんに渡したものです・・・」
『星さん、そのボールは母に渡したんじゃない
僕の夢をあなたに託して渡したんだ』
「嶋君っ、わしだって約束を破りたくはないっ!
好き好んで巨人のユニフォームを脱ぎたいわけじゃないし
野球も辞めたくないっっっ」
ダメなんじゃぁぁぁ」
巨人の星(不死鳥編)第125話 「ズックのボール」②-2
につづく