秦野から鶴巻温泉、山と脇道 | 濃密ナチュラル、そんなオシャレマガジン

山と脇道

 

先週、友人と逗子の山を登った。

 

思った。

ハイキングしながら会話するのは、居酒屋とかで話す大人としてはっちゃけようぜ、みたいなのとはまた別で、

冒険を通じて子供と子供のピュアなコミュニケーションになって楽しい。

 

もうひとつ思った。

神奈川は海だけでなく、山もいいね。

 

今日は起きた瞬間から気分アガる。気持ちのいい晴れ。神奈川の山を一つ登ろう。1人瞑想ハイキングすることにした。

 

向かったのは横浜駅から電車で1時間、秦野駅。何度か地図で秦野は目にしていたが。ずっと「はたの」って呼んでた。濁点ありの「はだの」なのね。

秦野駅から鶴巻温泉駅まで4つの小さい山を縦走する。浅間山(せんげんさん)、権現山(ごんげんやま)、弘法山(こうぼうやま)、吾妻山(あづまやま)突っ切ろうじゃないか。

 

登ってちょっと下って登って、山頂で景色みて。次の山頂でも景色見て。ずんずん進む。

 

山道の途中、スタートから70%くらいは進んだ後半に、「この先ずっと下っていくと自興院」って書いてる看板と小道があった。

 

悩む。

 

ずーっと、ってどんくらい下るの? そんで自興院ってなに? たぶん自分は別に興味はないやつだ。ずっと別の道を下っていって、はい、その寺院つきました、はい、別に興味ないので、戻りますか。またずっと登りますか。元の道に戻るためにひたすら登るんですか!? ってなるのが面倒だから悩む。

 

天気がいいからか、ハイキングの人が結構通るけど誰もその小道に進まない。それまでずっと開けた、明るく安全な道を通ってきた。いろんな景色があった。桜も、緑の葉っぱも、鳥の鳴き声も、目まぐるしく変わる景色もホントめちゃくちゃ良い。けど瞑想という点でいうと、自分の内側の世界に入りにくい。高尾山の水辺の側の道で瞑想ハイキングを2回ためしたが、2回とも強制的に瞑想の過集中みたいになったけど、今回それがなかなか起こってこない。閉じられた、もっと剥き出しの自然に近そうな小道は自分の動物性を刺激してくれそうで、瞑想には良いかもしれない。

 

 

 

人間が進む道かちょっと疑わしい景色の道だけど進むことにする。倒れた木とかを飛び越え、小枝のトンネルをボキボキ折って、虫がわんさかいる草ボーボーの中で若干歩きやすい部分があり、それをたどるように歩く。気づいたら瞑想状態はいっちゃってた。「やった・・・入ってる・・・」大きく喜ぶと統一された精神が乱れるんで、小さく喜びながら瞑想して歩く、瞑想して歩く、自然の中を瞑想して歩く、く~~ったまらねえ!! 

 

 

こっちの小道に来てよかった。道の入り口からちょっと進んだ時に、道の自然の荒々しさを目撃できた。もし、ちょっとも進まなかったら、このディープな自然を予想できなかった。ちょっと進んでみたり、ちょっと試してみて、それで体験できたこと、体感できたこといっぱいあるよな。

 

10年近く前の話、旅仲間の中にはエンジニアがいいよ、リモートで旅しながら働けるしクリエイティブでプロダクティブで普段はロジカル、時にアーティスティックでエクセレントなんだ、という友人の勧め、世間はエンジニアブームなんでエンジニアの勉強をしてみた。

 

勉強した後、今日からエンジニアでがんばるぞ、って派遣された会社で全然、別の仕事やって、ベラベラ喋ってコミュニケーションとる仕事で「エンジニアの内容わすれてく~」と共に「まあ人間とコミュニケーションとる仕事の方が好きかもな」なんて思いながら道が萎(しぼ)んでいった。

 

その流れでエンジニアにならず、なれず、でもその脇道はよかった。多少なりとも勉強した分の知識があるから世界が広がってる。「エンジニアです」って言われて、ソフト面かハード面か、とか、自社製品か他社製品か、客先常駐かそうでないか、とかで「たぶんこういう働き方なんかな」とかある程度、想像できたり。若い友人が「エンジニアやってみようかな」って言い出したら、向いてそうだなって人もいるし、いや、(自分と一緒で)向いてないっしょって見当つけたり。

 

生きている中で自分の進んでいる大きな道があるとして、脇に小道が見えた時に、そこに目もくれずに、一途に自分の道を突き進む人がたくさんいる。

反対に、ずっと何回も別の脇道を行っては引き返して、行っては引き返しての人もいる。脇道ばっかり行く人は「何フラフラしてんだろ?」とあまり褒められることがないかもしれないけど、個人的には脇道を行く選択こそ人間クサくて味があるように思える。

 

今日の脇の小道を進むことにし、寺院に辿り着く前に自然の道に満足して引き返した。もし行かなかったら「行こうか、行かぬか」迷ったことさえも忘れてるんだろう。ちょっと進む体験は、その人の醸し出す雰囲気のダシの匂いを重層的にする。昆布っぽくもあり、椎茸っぽくも、煮干しっぽくも鰹節っぽくもあるけど、実は干しエビや貝柱も入ってるような、そんな何かよくわからんけど深みのある味わいに。タモリとか所ジョージとか、いろんな脇道をつまんでるんだろうな。

 

無人野菜が売ってた。脇道は進む、気になるものは摘まむ考えたばっかりの精神で、ニラが好きだからニラ買った。好きのパワーで2束。買って少し後悔した。ニラって臭いじゃん、ビニールもないしどこにいれよう。まあいいか。細かいこと考えるのやめて手に持てばいいか。

 

帰りは鶴巻温泉駅。温泉入るか、いやでも1時間で家つくなら家帰ってのんびりするか迷って、迷ったならちょっと進んでみようの、さっき考えた精神で温泉入った。めっちゃ人で混み合っていたんで一気に現実に引き戻し、ああ、温泉は失敗だったかな、とか思っちゃったりする。でもお湯に浸かった後の身体は軽い。スイスイと家に帰れた、空いてる電車にのってただけだし。

 

家帰って、鏡見たら日焼けしてた。日焼けは火傷の一種らしいから、氷水を袋に入れて、顔にくっつけた。火照った皮膚がひんやりして気持ちい、今日はおつかれ~って感じ。この春夏シーズンも楽しくなりそうな予感しかない! ではでは!