アントニイ・バークリーさんの「最上階の殺人(Top Storey Murder )」(藤村裕美訳)を読みました
デビュー作である「レイトン・コートの謎」が非常に面白かったからです
今回の作品の探偵も、作家のロジャー・シェリンガムです
4階建のフラット(各階に二部屋ずつ)の最上階に住む老婦人が殺害されます
被害者は銀行嫌いで、かなりの現金を自宅においていたとのことで、警察はプロの仕業と推測して、犯行手口から容疑者をあぶり出します
しかし、シェリンガムは、室内の不自然な様子からフラット内の別の住人の犯行であると推理します
被害者の姪ステラが非常に美人であることから、彼女を秘書として雇ってあちこちに連れ回すシェリンガム
今ならハラスメント事案になりかねませんが、本作は1931年の作品です
各住人に聞き込みをして、次々と容疑者から外していくシェリンガム
最後にステラの前で、シェリンガムがどや顔でとんでもない大失敗をしそうになるところは、まさにコントのようで大爆笑させてくれました
アントニイ・バークリーの名は、ミステリ好きなら誰もが知っていて、特に「毒入りチョコレート事件」は多重解決をいち早く取り入れた作品として有名です
有名すぎていまだに読めていないのはさておき、本作は「毒入りチョコレート事件」よりも後の作品であって、ここでも多重解決が極めてうまく取り入れられています
解説によると「本作の趣向はヴァン・ダインの二十則に挑戦したものではないか」というのですが、そうであるならそういう遊び心もとてもいいですね