阿津川辰海さんの「黄土館の殺人」を読みました
火をテーマにした「紅蓮館の殺人」、水をテーマにした「蒼海館の殺人」に続くシリーズ三作目になります
大地震による土砂崩れが発生したせいで、荒土館と呼ばれている建造物に続く唯一の道が埋まってしまうと同時に、いっしょに荒土館に向かっていた名探偵と助手が、こちら側と向こう側に離ればなれになってしまいます
荒土館に行くことができなくなった名探偵は、その代わりに近くの旅館で「探偵が早すぎる」を披露します
ちょうど荒土館の主を殺害しようとやってきた男がおり、土砂崩れのために行くことができなくなってしまったところ、土砂の向こう側から交換殺人を持ちかける女性の声を聞きます
そこで、その男が荒土館の主の代わりに狙うことになったのが、旅館の女将だったのです
他方で、館の方では凄惨かつ不可能状況での連続殺人が発生し、助手が推理に挑みます
様々なタイプのトリックをふんだんに盛り込むサービス精神が感じられる作品で、話しの流れが複雑になりがちな特徴については、助手が節目節目で推理のポイントをメモでまとめる設定を設けることによって、わかりやすさが確保されていました
作者としては、本当はフーダニットで読者をあっと驚かせたかったのでしょうけども、残念ながら連続殺人の結果によって生存している登場人物が減っていくと、犯人候補は自ずから一択になってしまいます
でも、これはしょうがない
本シリーズは全四作になる予定だそうで、「紅蓮館の殺人」が火と夏、「蒼海館の殺人」が水と秋、本作が地と冬をテーマにしたとのことですから、次は風と春がテーマになります
四部作の最後となると、どうしても例の展開が予想されてしまいますが、どうやって驚かせてくれるのでしょうか
今から楽しみです
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