ホリー・ジャクソン/卒業生には向かない真実 | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

ホリー・ジャクソンさんの「卒業生には向かない真実(AS GOOD AS DEAD)」(服部京子訳)を読みました

 

イギリスの小さな街を舞台にした三部作の完結編です

 

 

 

第1作は、高校生のピッパが自由研究をきっかけに、持ち前の真っ直ぐな心と行動力を武器にえん罪を暴いて、加害者家族として苦しんでいた者たちを救うストーリーとなっており、すべてにおいて非常にバランスのよい快作でした

 

これに対して、第2作は、ストーリーのテンポが悪くて間延びしており、おまけにピッパの正義が暴走する流れとなっていたため、かなり残念な思いをしました

 

「この先のラストは、どうせピッパ様の正義が通って、予定調和のハッピーエンドになるんだろ」という萎えた気持ちになり、第3作は読むのを止めようかとも思っていたくらいです

 

しかし、すごく衝撃的な内容だという出版社の煽りに負けて、つい手に取ってしまいました

 

ああ、作者はこれをやりたかったのか!

 

そのための第1作だったのか!

 

第2作の「暴走」なんてレベルではない、まさに絶対悪に手を染めるピッパ

 

でも、地獄に堕ちていく彼女の内心が冒頭からしっかり描かれていて、全くもって「ピッパの天真爛漫な正義が勝ってめでたしめでたし」という内容にはなっていませんでした

 

作者のあとがきを読むと、なぜこの三部作(特に本作)が書かれたかがよくわかります

 

イギリスの刑事司法は日本のそれよりもかなり「先進的」という印象があり、つい最近もイギリス国籍の被疑者の日本への引渡しについて、「人権侵害の手続がされるおそれがある」としてイギリスが拒んだという報道がありました

 

それでもああいう話になるのは、やはりあのテーマは万国共通なのですね

 

なお、今さらですが、イギリスの刑事裁判で国王が原告となる形式がとられているという点は、日本との大きな違いで興味深かったです

 

いずれにしても、本作はとても意欲にあふれた三部作として締めくくられたわけですが、個人的にはさすがに長すぎるかな?

 

第2作の部分をもっと大胆にカットして、上下巻ですっきりまとめていたら、もっと読みやすかったでしょう

 

とはいえ、この作者については、次作も期待したいと思います

 

 

 

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