蔡駿さんの「幽霊ホテルからの手紙」(舩山むつみ訳)を読みました
「台北プライベートアイ」や「辮髪のシャーロックホームズ」の舩山さんが翻訳を担当された作品ですので、事前の期待は高まります
警察官である葉䔥のところに、学生時代の親友で作家をしている周旋が訪ねてきます
田園という名の女優から謎めいた古い木匣を入手したというのですが、まずその過程がつかみどころのない漠然とした恐怖感に彩られています
田園が、木匣を開けないままで幽霊客桟に届けてほしいと言い残して急死してしまったので、周旋は旅立ちます
そこまでが第1部で、第2部は周旋が葉䔥に対して幽霊客桟から送った手紙という形式を取っています
全部で12通の手紙には、信じられないような超常現象・心霊現象がてんこ盛り
幽霊客桟にいる人々は皆どこか不安定で、生きているのか死んでいるのかもよくわかりません
これは周旋もとっくに死んでいるという展開になるのかなと思いながら読み進めていきますと、12通目の手紙でいよいよ周旋が絶体絶命の危機に瀕して、葉䔥の助けを乞うという形の最後を迎え、第2部が閉じられます
第3部では、幽霊客桟に旅立った葉䔥によって種明かしがされます
なるほど、ちょっと肩透かし気味ですが、合理的な説明です
ただ、本作はミステリよりもホラーの要素にみるべきものがありました
何が起きているのかがよくわからないまま不思議な話がひたすら語られ続ける第2部は読み応え満点
さすが中国のスティーブン・キングと呼ばれているだけのことはありました