白井智之/名探偵のいけにえ(人民教会殺人事件) | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

白井智之さんの「名探偵のいけにえ(人民教会殺人事件)」を読みました

 

白井さんの作品は、2019年マイベストの1位、2020年マイベストの2位に輝いております

 

 

当然に事前の期待は大きくなるわけですが、本作は年間レベルではなくオールタイムベストクラスのとんでもない傑作でした

 

現実に起きた人民寺院事件をモチーフにしているのですが、それを見事にフィクションに落とし込んでいます

 

まず、エピローグが読み返し必須の構成になっており、再読時にビリっビリにしびれさせてくれます

 

また、白井さん得意の多重解決は、本作でも抜群の冴えをみせていました

 

次の犯行を防ぐための推理、信仰者としての推理、余所者としての推理、いずれもカルト宗教の特殊な舞台を生かし切っており、どれも説得力がありました

 

さらに、「前日譚」で張られた巧みな伏線が「終焉」で次々と回収されていく様はクラクラするほど素晴らしかったですし、「後日譚」が明かす真相と最初のタイトル回収には度肝を抜かれました


「探偵の加害性」は言い古された概念ですが、それをここまで昇華させてくるとは!

 

ここで終了でも大傑作なのに、「後日譚(二)」で明かされる究極のホワイダニットと真のタイトル回収には、思わずうなり声を上げてしまいました

 

人民寺院事件をモチーフにしたのは必然であって、まさにフィクションの極みというものを堪能しました


天才探偵有森りり子は「お前の彼女は二階で茹で死に」の天才女子高生探偵マホマホを完璧にグレードアップしたものでしたし、彼女がカルト宗教の二世というのは、偶然クリティカルヒットした設定なのでしょうが、これも天命なのでしょう


「こんな傑作を書いてしまったら、もう何もかけなくなってしまうのではないか」と、今後が心配になるほどのスーパーな作品でした