スチュアート・タートン/名探偵と海の悪魔 | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

スチュアート・タートンの「名探偵と海の悪魔(The Devil And Dark Water)」(三角和代訳)を読みました

 

前作「イヴリン嬢は七回殺される」が非常に意欲的な作品だったので、とても楽しみにしていたところ、本作もすさまじい力作でした

 

主人公のアレントは、17世紀にオランダの大富豪の家に生まれながら、幼少期に父を失った際の苦い思い出から傭兵に転じ、名探偵サミー・ピップスのワトソン役として名をはせるようになります

 

サミーとアレントは、オランダ東インド会社のジャカルタ総督ヤン・ハーンから依頼された「愚物」盗難事件を解決したのですが、なぜかその直後に総督はサミーを捕縛してしまいます

 

総督は、「愚物」をみやげにオランダに帰還して、世界の最高権力者「17人会」の会員になろうとしており、ジャカルタからアムステルダムに向かって8ヶ月もの大航海に乗り出そうとしますが、港ではいきなり航海について呪いの言葉を吐くとともに燃えさかる炎に包まれて死ぬ者が派手に登場します

 

その後も、船には、「トム翁」なるヨーロッパを荒らし回ったという悪魔の印があちらこちらに表れ、包帯を巻き付けた謎の「病者」が船内を徘徊するようになったことから、アレントは総督から捜査を依頼されます

 

サミーは上記のとおり、総督の激しい怒りを買って船でも独房に閉じこめられているので、名探偵といっても安楽椅子探偵になるのが精一杯という状況です

 

トム翁が夜中に船にいる者達に対して望みをかなえてやろうと語りかけてくるエピソードもあり、いったい物語をどのような方向に展開していくのか興味津々でしたが、しっかり合理的な解決が待っていました

 

アレントのキャラクターがうまく設定されていて、読者は自然と彼を応援してしまいます

 

また、総督の妻サラは自由を求める聡明な女性で、やはり読んでいて好感が持てるのですが、さすがに現代的な価値観が移植されすぎではないかと感じるところもありましたね

 

ラスト近くに訪れるカタストロフィから明かされる真相は、十分に意外なもので非常に満足できましたし、ミステリとしての側面だけでなく、海を舞台にした冒険ものとしての側面や、17世紀を舞台にした歴史物としての側面においても、とても楽しく読むことができました

 

次の作品も今から楽しみです

 

 

 

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