ドン・ウィンズロウ/壊れた世界の者たちよ | 弁護士宇都宮隆展の徒然日記

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くにたち法律事務所@吉祥寺 東京大学法学部卒 東京弁護士会所属(35489) レアルマドリー・ボクシング・小説・マンガ・音楽・アート・旅行・猫などが中心のブログです

ドン・ウィンズロウの「壊れた世界の者たちよ(BROKEN)」を読みました

読み応え満点の中編6つが収められた作品集です
 
まず冒頭のタイトル作では、麻薬取締官とギャングとの抗争がエスカレートしていくのですが、ド派手でえげつないバイオレンス描写がすごい

一転2作目は人を殺めない宝石泥棒と哀愁漂う刑事の話

3作目は爽やかな若い刑事を主人公にした話(2作目の刑事も登場します)

恋愛ものとしてもハッピーな感じで、苦い話ばかりの本作の中で清涼剤代わりになっています

表現が今っぽく、皮肉が効いていて、とにかくユーモラスでした

4作目はダメになり果てた伝説のサーファーを保釈金業者の仲間たちが追う話

なんと西海岸で大学教授をしている老いたニール・ケアリーも登場します


ダメ人間と周囲の者たちのやりきれない関係がうまく描かれておりました

5作目はカウアイ島で大麻栽培を始めようとする若い男女が地元のギャングと抗争になる話

これも過去作品の登場人物がたくさん出てきているそうです

いわゆるスターシステムですね

ラストは母と引き離されて不潔な檻に叩き込まれたエルサルバドルからきた不法移民の少女と国境警備隊員の話

どれも面白い話でしたが、個人的にはこの話がベスト

5作目までは世界が壊れているというより、登場人物が壊れているわけですが、6作目はまさに現在の壊れたアメリカが描かれています

1作目のタイトルが単に「BROKEN」なのに、邦題が「壊れた世界の者たちよ」とされているのは、まさに6作目を意識してのものではないでしょうか

不器用な主人公や同僚のキャラクターにはとても引きつけられましたし、ラストには思わず涙しました

やはり、ドン・ウィンズロウはすごい


改めて他の作品を読みたくなりました