あんパンの彼女のおかげで、一筋の光を
見出し、暗闇の中の泥沼に陥るのを脱した
私は、安んじて、クリスマス・シーズンを
迎えることができました。
彼女は映画、とくにディズニー映画が
好きで、よく観る、ということでした。
ちょうど街の映画館でやっていたディズニー
映画『サンタクロース』を観に行くことに
なりました。
その作品の中で、宙を飛ぶサンタクロース
の橇がトナカイたちとウルトラ空中大回転
をするシーンがありました。
仲間である妖精が落下するのを助けるための
ウルトラＣであるアクロバット飛行です。
それを見て、私は、自分自身が彼女に
助けられたことと重ね合わせ、
不覚にも涙を流していました。
もちろん、その当人であるあんパンの彼女は
気づいていません。
観終わり、お礼も兼ねて食事をしに、
前に友人達と合コンをしたことのある
綿兎という意味の名前の店に行きました。
彼女が店の選択を私に任せるというので、
他に女性を連れて行けるような手頃な店も
知らなかったので、そこにしたのです。
他の知っている店というと、焼き肉屋
とか中華料理店とか、安い居酒屋で、
とてもおしゃれとは言い難いところ
ばかりだったのでした。
私としては、その日、せいいっぱいの
おしゃれをしていたのです。
とは言え、流行とかそうしたものとは
まったく無縁でしたので、持ち物で
最もまともなものを着ていっただけですが。
ビールやカクテルなどで楽しく食事をした後、
勘定をするときに店員が前に来ていた私を
覚えていて、親しく話しかけてきました。
私もそれに快く応対していました。
ところが、その様子を見ていた彼女は
私に、ずいぶん慣れてるんですね、
と幾分疑わしそうに言いました。
どうも、私がその店を根城に、
いろいろな女性を連れ込んでいる
ナンパ男、と誤解をしたようです。
もちろん否定をしたのですが、その後、
彼女は私と2度と出かけることは
ありませんでした。
それでも、彼女の好きそうなコンサート
のチケットを手に入れ、いく約束をとり
つけるところまではもっていきました。
ですが、当日彼女が高熱を出し、
行けなくなってしまったのです。
しばらくして、別のコンサートに誘った
ときには、お友達といくことにした、と
体よくふられたのでした。
当日私は、やむなく彼女を紹介してくれた
後輩に余ったチケットをあげ、コンサートに
男2人でいきました。
すると、遠目で彼女が10歳くらい上に
見える男性と2人で親しげにしているのを
見かけたのです。
後輩の説明では、彼女と同じ研究室の
年長で尊敬のできる先輩ということでした。
やはり私は軽いナンパ男として
処理されたというわけです。
私はもちろんがっかりしなかったと
言えば嘘になります。
が、なにしろ、彼女には「大回転」で
あやうく泥沼に陥るところを救われた、
と勝手に思い込んで感謝の気持
ちの方が勝っていました。
また、そもそも、彼女とどのように交際
するのか、具体的には全然イメージできて
いませんでした。
そう、私はリハビリ中だったのです。
しかし、それが転機となり、私はプロフィール
でも書いたように、「対象とともに成長する」
方法の着想を得ていたのです。
それは、当時貪るように読んでいた
高橋留美子氏の名作『めぞん一刻』から
得たのでした。
おまえの知識の出どころは漫画ばっかり
じゃないか、と言われそうですが（笑）。
あらためて、「対象と共に成長する」
の着想元について説明します。
本作の主人公五代勇作の恋敵、三鷹舜は
財閥の御曹司でありながら、プロのテニス
コーチとして独立している爽やかな
スポーツマンです。
常に前向き積極的な人生姿勢・長身で
秀麗な容貌に、光る歯というアクセントを
もつ強力なライバルです。
ヒロイン音無響子をめぐり、万事控え目・
受け身で周囲に流されやすく、貧乏くじを
引き続ける五代と争うわけです。
ただ、彼には1つ隠された弱点が
ありました。
そして、ヒロインの音無響子は若き未
亡人で、亡き夫と同じ名前の犬、惣一郎
を大事にしていたのです。
犬嫌いの彼がヒロインと結ばれるためには
その犬とどうあっても折り合いをつける
必要がありました。
そこで彼が編み出した方法とは、
私が、対象と共に成長する、方法です。
昔の忍者が跳躍力をつける方法として、
麻という成長の早い植物を飛び越えて
いく練習を積む、というものがあります。
ステップ１
最初は種で地中にあるためもちろん
問題ない。
ステップ２
さらに芽が出て、双葉が出ても低いので、
飛び越えるのに全く問題ありません。
ステップ３
が、麻はすぐに成長する植物なので、
それにあわせるようにして飛ぶ側も
次第に跳躍力が身につく。
対象と共に成長するわけですね。
三鷹は、まず赤ちゃん犬を入手し
その犬を飼い、世話をすることで
恐怖の対象である犬に慣れていった
のです。
であればそんなに怖くないですよね。
そしてまた、私もここから学んだの
です。
だから、あなたにもできます。
やりましょう！
私が応援します。