懐中温泉です、
古本屋で結がふと学研の歴史群像シリーズで
『上杉謙信』を見つけ、そこでの巻末
もしも謙信が生きていたら
シミュレーションを見つけました。
白浜の海は、思っていたよりもずっと静か
でした。
観光地のにぎやかな印象があったのですが、
少し外れると、波の音だけがゆっくりと続いて
います。その海を眺めながら、ふと頭に
浮かんだのが雑賀孫市のことでした。
ここから少し北に行けば、かつて「雑賀衆」
と呼ばれた人たちの本拠地があります。
雑賀衆は、戦国時代でも特に珍しい存在
でした。
特定の大名に仕える武士団ではなく、地縁
でまとまった半ば自治的な集団であり、
そして何より、鉄砲の扱いにおいて
当時最強クラスといわれた人たちです。
織田信長でさえ、石山合戦などで彼らの
鉄砲に苦しめられています。
その雑賀衆を率いたとされる人物が、
雑賀孫市です。
実在の人物像には諸説ありますが、「鉄砲を
駆使して戦場を支配する指揮官」という
イメージは広く知られています。
そして、ここでふと思いました。
もし、この雑賀衆が、上杉謙信と手を組んで
いたらどうなるのか。
正直に言うと、織田信長のやり方のほうが
現実的なのだと思います。
強く、合理的で、容赦がない。
ああいう人物が時代を前に進めるのは、おそらく
事実です。
それでも。
それだけで全部が決まってしまうなら、歴史は
少し寂しいものになってしまいます。
だからこそ、見てみたくなります。
「義」を掲げながら、それでも戦に勝ち続ける
上杉謙信の姿を。
しかも、ただ善戦するのではなく
すべてをひっくり返すくらい、痛快に。
というわけで今回は、
「上杉謙信があと20年長く生き、雑賀衆や武田、
さらには西国の諸勢力まで巻き込みながら、
織田信長と天下を争ったらどうなるのか」
という歴史IFを、できるだけ納得感を
持たせつつ、しかし思いきり爽快に描いてみたい
と思います。
結論から言うと、おそらくかなり強いです。謙信。
結は、しばらく海を眺めながら考えていました。
ただの思いつきではなく、「どうすればこの話が
一番面白くなるか」を、頭の中で組み立てて
いきます。
まず、出発点ははっきりしています。
上杉謙信があと20年、生きていること。
これだけで、戦国後期のバランスは大きく変わり
ます。
特に重要なのは、織田信長の拡大に対して、
正面から対抗できる存在が残るという点です。
結が最初に思い浮かべたのは、やはり手取川
でした。
史実でも、上杉軍が織田軍を大きく破った戦い
です。
雨と地形、そして機動力を活かした戦いで、
織田側は撤退に追い込まれました。
「ここを、もう一回やろう」
結は小さくつぶやきます。
しかも今回は、ただの再現ではありません。
ここに雑賀衆を加えるのです。
騎馬による機動戦だけでなく、鉄砲による
制圧力が加わる。
前面は上杉、側面は武田、そして後方や
要所を雑賀が撃ち抜く。
「……それ、強すぎない?」
自分で考えていて、少し笑ってしまいます。
でも、それくらいでいいとも思いました。
どうせやるなら、中途半端よりも思いきり痛快な
ほうがいい。
結の中では、すでに構図ができあがりつつ
ありました。
上杉謙信を中心に、
武田勝頼が機動力を担い、
雑賀孫市が火力を担い、
さらに西国では長宗我部や島津が呼応する。
一方で、織田信長は毛利や大友と手を組み、
巨大な連合として対抗する。
「ちゃんと強い同士でぶつけたいんだよね」
結はそう考えます。
どちらかが一方的に弱いのではなく、どちらも
「勝つ理由」がある状態でぶつかるからこそ、
最後の決着が気持ちよくなる。
ただし――
最後に勝つのは、やはり謙信です。
そこは、譲れません。
「だって、“義”が勝つ話にしたいし」
少し照れくさいような気もしましたが、それが
今回のテーマでした。
合理や力だけではなく、「こうあってほしい」
という願いが通る物語。
