さて、奈良ワークの話から少々それて
の続きをば。
アンシェヌマンより先に「音ちょうだい」とノーヒント、ノー情報で「ピッタリの曲」を要求する先生は結構いるぞ、という話。
おいおいこちとら超能力者じゃねーぞ、って話。
でもむちゃくちゃやり甲斐あるけどねっ♪、って話。
昨日は子供たちのワーク、キャラクテールという括りの上での話でしたが、今日は通常クラスレッスンの場合について書こうと思います。
ご登場いただくのは溝下司郎大先生。
この方がね、「音ちょうだい」なのよ。いきなり。
バーについて
「はい音」
…だから、何やるんですかあ〜?(笑)
ただし、この先生の場合は、基本けっこうルーティーンだったりするんです。バーはとくに。
順番、テンポ、ほぼ毎回おなじ(例外の場合は流石にアンシェヌマンを先にくれる)。
アンシェヌマンも、曲を聞いてから創るんじゃなくて、予め作ってある。
なので、五里霧中のなか半分あてずっぽで「えいやっ!」て弾くんではなく、「溝下ルール」にのっとった「溝下テンポ」の「溝下カラー」の曲を要求され、「溝下タッチ」で色付けして弾く感じ。
そして、アンシェヌマンの説明を、その出てきた曲でやるのだ。
あまりに曲と合わなかった場合には、順番はとりあえずその曲でやってもらって、本番では曲を変えても良いことになっている。
前にこのクラスのダンサーさんたちと、
「振り決まってるのに、なぜ最初にアンシェヌマン出さないんだろう」
って話になった。
いろいろ話し合った結果、
「曲で(説明を)やりたいんだよね」
ということになった。
同じ振りでもどんな音楽かによって、踊り方、呼吸の仕方、ニュアンスの付け方は全然ちがってくる。
そこんとこを最初から音と一緒にやろうよ、ということだと解釈した。
先生の出した順番をただやるのがバレエではないから。
その音楽を「どう踊るか」を普段のクラスレッスンの、バーからやろうよ、だと思った。
だから、説明の時点から音楽が要るのだ、きっと。
生ピアノでクラスレッスンをやる、意味がとてもあると思った。
話変わりまして鈴木未央こちらも大先生の場合。
あ、未央先生はアンシェヌマンが先のタイプで、「音が先」の話からは外れるんだけど、「生ピアノの意味、バレエピアニストの意味」について、とても良いことを仰ったことがあって、その話。
いつだったか、ジュニアクラスにて。
「音楽性を、どう踊るかということを提供してくれるのがピアニストさん」
「この音に、乗っかってごらん、利用してごらん、助けてもらってごらん」
「自分だけじゃ考えつかないような音楽性をくれるよ」
(↑ちょと前のエピソードで、細かいコトバとかはこのとおりじゃないかもしれません)
まさに昨日の記事で挙げた「理想のピアニスト像」の後半部分
「振付けのイメージが湧くフレーズや曲を次々に弾けて
自分(教師)の好みも知ってて
なんなら教師すら考えつかなかったような振りのイメージでさえ提供出来る」
に被さるなあ…ととても嬉しかったんだけどね。
あ、ジュニアクラスの場合はそこに「正しさ」も加わりますね。
クラシックバレエのメソッドが正しい形で使われやすい音であるかどうか。
ジュニアのみならず、プロクラスでも初心者クラスでも、バレエの場合は「正しさ」、大事。
そこんとこも提供出来るピアニストでありたい。
最後に。「音を先にちょうだい」の話に戻ります。
大トリは、大先生どころか、伝説のプリマの鈴木光代先生のご登場。
この方も、いきなり、ニコっとして
「音ください」
が多い。
センターアダージョなどで、音を聞きながら、どんどんどんどん即興的に創って、永遠に創ってらっしゃることもよくあるのだが
この方の場合
…ええっと…
音楽と一緒に説明しないとカウントどおりにならないことも多いから…
…
…
…
いいんです、先生は数えなくっても!!
数えてきちんとしたカウント数に整えて音楽を提供するのもバレエピアニストの仕事のウチです!(ホントだよ。あたしは極論、先生は数えられなくっても良いと思ってる。先生は生徒を良くするのが仕事だから。)
ご登場願った3人の先生とも、とても生ピアノでのクラスレッスンを大切にして下さいます。
ありがたいことです(涙)。
画像はここだけ奈良ワークに戻り、バシロフキナ先生とB1クラスの子供たち。
今年はあたし、B1クラスを一日に3コマという、ほぼ「担任の先生」状態でした。
次の記事はアクチョールにおける「音先問題」について書くね。