「今、何歳?誕生日はいつ?」
「31。2月14日生まれ」
「バレンタインデイなんだ。じゃ誕生日にはチョコレートケーキ作る。あ、だから愛美って名前にしたのかな?」
「ちよりちゃんは?」
「あたしは11月11日生まれ。来週誕生日だよ。期待してるからね。11月11日ってポッキーの日なんだよ。あ、だからってプレゼントはポッキーとかダメだからね。どんな物でもいいけど、ポッキーはダメ。プリッツもダメよ」
トッポならいいだろうか。
「それもダメ」
思考が読まれているのだろうか。
「じゃ来週で18歳だね。学年で14年も離れてるんだ」
「子供扱いしないでよ」
「はい。どちらかと言うと、ちよりちゃんの方が年上みたいだ」
「あ、あたし偉そうだった?ゴメンね。つい調子に乗っちゃうタイプなの。ちゃんと彼氏を立てるから安心してね」
なんか違うことを連想して、僕は照れた。
「じゃ、色々訊いていい?やっぱり彼氏のことは最低限知っとかないといけないことがあると思うの。ところで、敬語は使わなくていい?もう使ってないけど…」
矢継ぎ早とはこのことだ。
早くも、僕は年下の彼女にイニシアティブを握られている。
まぁ、実際のところこれまで付き合った女性のほとんど全てに、イニシアティブを握られていたのだが。
だから僕は特に抵抗感も感じず、「敬語なんていいよ。何でも訊いて。その代わり、ちよりちゃんのことも教えて」
なんとも気恥ずかしいが、今僕は最高に幸せだ。
それでもいいのと、彼女は訊いた。
予想外の展開に、僕はあわてた。
むしろ、その年の差を理由に断られると思っていた。
ところが、彼女の言葉は「それでもいいか?」だった。
突然与えられた決定権。僕はその幸運を逃すまいと、早口で「僕は気にしない。年齢なんて」
彼女はしばらく口を閉ざした。
僕は彼女の気が変わらないか、それこそ気が気でなかったが、かと言ってかける言葉もなく、黙って彼女を見つめた。
せめて自分の気持ちが軽はずみなものではないという思いを込めて。
「いつから?」
沈黙を破る言葉。
「へ?」
間抜けな返答。
「いつから私は沢口さんの彼女?」
なんだかもうよくわからないが、今日が人生最良の日だということは確かだろう。
「今」
これもまた間抜けな返答。