2010/2011シーズンのNHK杯で、シニアグランプリシリーズデビューを飾った羽生結弦。
3年ぶり6度目となる今大会を前に、4回転ジャンプへの思いやプログラムの見どころなどを語ってもらった。
4回転ジャンプの意義
▷シニアのグランプリシリーズデビューとなった2010年10月のNHK杯では、フリースケーティングで自身初となる4回転トゥループを成功させて、4位入賞を果たしました。羽生選手はその当時15歳でしたが、4回転ジャンプに取り組む意義をどのように考えていたのでしょうか?
羽生「4回転ジャンプの習得は当時、シニアのトップスケーターになるために欠かせない課題でした。今考えると自分の気持ちの中でかなり難しいジャンプだと固定観念があったように思います。ただ当時は1種類の4回転ジャンプで十分でした」
▷4回転トゥループを練習し始めてから試合で使えるまでに要した時間はどれくらいでしたか?
羽生「最初に跳べたのは初めてNHK杯に出た4月で、アイスショーの練習をしている時でした。ですから、試合でいれられるようになるまでには半年くらいかかったと思います。」
▷成功した時はどんな気持ちでしたか?
羽生「振り返ってみると、当時は4回転トゥループへの気持ちが強すぎて、練習も4回転トゥループばかりでしたね。ですから、10年のNHK杯では最初の4回転トゥループだけで力尽きていました。でも、ものすごく気持ちよく着氷できて嬉しかったことが記憶に残っています。」
▷前回のNHK杯出場は16年11月でした。会場は今回と同じ真駒内セキスイハイムアイスアリーナで、羽生選手は見事に優勝を飾っています。そのシーズンは「観客とのコネクト」をテーマの一つに挙げていましたね。
羽生「『コネクト』について思い返すと、どうしてもそのシーズンの最後に感じていた『コネクト』と比較してしまいます。(※ヘルシンキの世界選手権でショート5位から逆転優勝)。ですから16年年のNHK杯は、まだまだ出来ることがたくさんあったなと思います。」
▷ショートプログラムは「Let's Go Crazy」、フリーは「Hope & Legacy」に乗って滑りました。
羽生「ショートプログラムでは、シリーズ初戦のカナダで着た白い衣装から薄紫色のものに替えたりしていて、緊張しながらジャージを脱いだのをとても印象深く覚えています。ただ演技としてはもっともっとやらなくちゃと思っていました。」
「特別」と語るNHK杯とは?
▷過去に出場したNHK杯では、2015/2016シーズンに世界最高得点をマークするなど、思い出は色々あると思います。NHK杯で一番印象に残っているエピソードを教えて下さい。
羽生「やはり15年のNHK杯は特別ですね。あの時のNHK杯から、試合でのコントロールの仕方や自分のピークの作り方などを学ぶようになって、だんだんとできるようになったと思っています。もちろん、オリンピック連覇を達成した18年2月の平昌オリンピックは最高の思い出ですが、15年のNHK杯はそれと同じくらいの達成感と幸福感に包まれていました。」
▷昨シーズンは右足首の負傷に苦しみました。試合に出たくても出られない時の葛藤や、大会出場への渇望を、ファンと共有できる範囲で聞かせていただけますか?
羽生「昨年は、苦しい気持ちがもちろんありました。怪我の原因は物や人ではないですし、その苦しみを押し付けて逃げられるわけではないですから。それに、僕はその前の2017/2018シーズンも怪我をしてNHK杯には出場することもできませんでした。その時もとても苦しんでいたので、「またか」と、自分自身に落胆する気持ちも強くありました。ただ、怪我をしてからのことについて言えば、でき得ることは全うできたのではないかなと思っています」
4回転アクセルの手応え
▷今シーズンは、ショートプログラムとフリースケーティングの両方とも昨シーズンと同じ曲に再挑戦ということになります。それぞれ、今年ならではの見どころを教えてくださいますか?
羽生「ショートプログラムの『Otonal』では、過去を見つめ返して、懐かしみながら、その記憶とともに今を歩いていくということを表現できればなと思っています。ピアノの哀愁漂う音を、一つ一つ感じていただけるような演技をしたいです。」
▷フリースケーティングの曲 は「Origin」ですね。
羽生「フリーでは僕自身が音を感じるままに滑っています。ですから、力強さや曲自体を表現できたらなと思っています。両方とも昨シーズンと同じですが、昨年、怪我で滑ることができなかった時期もあったので、これを完成させたいという気持ちが強くあり、今シーズンも滑ることにしました。完成させられるよう頑張ります。」
▷現時点(9月)で、4回転アクセルにはどれぐらい練習で取り組めていますでしょうか?
羽生「まだプログラムに入れられるような段階ではないのですが、練習は続けています。壁はまだありますが、少しずつ、進化はしているのかなという実感もあります。」
▷3年ぶり6度目のNHK札幌の抱負を聞かせて下さい。
羽生「全力で、一生懸命に演技します。そのために、それまでの期間、しっかりできることを積み重ねていきます。」
▷最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
羽生「たくさんの応援、本当にありがとうございます。皆さんの前で、NHK杯で思いっ切り滑る事ができるように、最後の最後まで全力で取り組んでいきます。これからも宜しくお願いします。」
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