熊川哲也『スケーターもアーティストであってほしい』 | 羽生結弦さんの見つめる先を見ていたい

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羽生結弦選手を敬愛しています。羽生さんを応援する素敵ブログ様方を日々の心の糧にしている、ソチ落ち主婦のブログです。(横浜在住)

2016年の話なのですが、
バレエダンサー熊川哲也さんが、「バレエの視点からのフィギュアスケーターへのメッセージ」を寄稿していらっしゃったので、書き起こさせていただきます。

「ファンタジー・オン・アイス2016幕張公演」のパンフレットに記載されていたものです。

↑2016年は羽生くんが怪我の為、FaOIを全休しましたが、パンフレットには2014年、2015年のシーンも掲載されています。




「スケーターもアーティストであってほしい」

熊川哲也  (K-BALLET COMPANY 芸術監督)

 フィギュアスケートを見ていると、氷の上でよくあんなことができるなという驚きがぼくにはいちばん大きいです。あの細い1本のブレードだけで着地をすることがいまだに信じられない。
我々ダンサーは、地上で助走なしに跳びますから、もしあれだけのスピードと勢いがつけば、どれくらいのことができるんだろうと思います。じつは以前に「8回転くらいはできるんじゃないか」とあるテレビ番組で話したことがあるけれども、実現可能性はともかく、ダンサーであるぼく自身のイメージとしては、そのくらいの力が働いているように感じます。


ぼくはライブでフィギュアスケートを観させてもらったのは限られた回数しかありませんが、やはりテレビでは伝わらない迫力がありますね。氷を削っていく音だとか、その場にいないと味わえないものがある。それはバレエも同じです。
バレエは劇場の舞台の上で物語の世界観を具現化できるわけですが、アイスショーはまた違った世界がそこに広がっているのだろうなと思います。
四方全面に観客がいるパノラマ空間で、照明などを駆使しながら、ライブ空間を作り出す。そのためには、ぜひスケーターもアーティストであってほしいなと思います。

フィギュアスケートは、スポーツとしてのみ捉えることがもったいないなとずっと思ってきました。
ステップ1つ1つに点数を出して、順位をつけていく範囲には収まりきらないものが、フィギュアスケートにはあります。
その意味では、フィギュアスケートとバレエはとても近い。これまではそこに距離感があったかもしれないけれど、いまの世代のスケーターたちは、スケートにおけるバレエの重要性にも気づいているように思います。

じつはいま、ぼくが主宰する K-BALLET SCHOOL にもスケートをやっている生徒たちがバレエを学びに来ています。そこでは選手たちのためのクラスを設けるようにしているのですが、スタジオと教師、そして生ピアノの演奏という環境のなかで、学べるものを学び、バレエから"盗める"ものを持ち帰って欲しいと思いますね。
若い人たちは感受性が豊かだから、じっと見てちゃんと掴み取ってくれると思います。

イメージです。羽生くんの演技はいつも指先まで美しい。

 スケーターは思う存分バレエを取り入れてくれたらいいし、それで芸術性が高まるなら素晴らしいこと。
柔軟性、身体のライン、ステップとステップのつなぎ……そういった面に細心の注意を払うことができるスケーターが、競技者だけでなく本物のアーティストと言える存在になりうる。

たとえば、町田樹さんはテレビで見ていてもそれができているのがわかる。ステファン・ランビエールさんは音楽に瞬時に反応して滑っていて、芸術性がとても高いと感じます。

羽生結弦選手はとてもスタイルが綺麗だし、着地も含めてどこまでもしなやか。さらに自信が兼ね備わって、これからもっと彼の滑りが面白くなるような気がします。

近年のフィギュアスケートは、以前と比べても格段にアーティスティックになってきた。だからこそ、つねにラインの美しさを研究し、作品観や芸術性を追求するようなパフォーマンスを期待したいと思いますね。

(Fantasy  on Ice 2016 in MAKUHARIパンフレットより、寄稿文をそのまま書き起こしました)

天女の如き『春よこい』


長々とお付き合いありがとうございました。
書き起こしは、以上です。 

2016年発表のメッセージを何故いまごろ?と言われそうですが、
先日、羽生くんが出演できなかった2016年FaOIについて、少しお話しする機会があったので、6年振りにパンフレットを開いてみたのです。
実は、会場でパンフレットは購入したものの、出演者として羽生くんが載っていないページをめくるのがつらくて、ずっとしまいこんでいました。

そして、改めて熊川哲也さんのこの寄稿文を読んで、この内容はまさに羽生くんが目指している「アーティスティックなフィギュアスケート」への激励ではないかと、目が醒める思いがしました。
これは、お蔵入りは勿体ない!少しでも広く皆様にお伝えしたいと思い、今回の書き起こしを思いたった次第です。

羽生くんは、怪我の治療のため、この公演には参加出来なかったけれど、パンフレットは主催者から提供されているはずですし、この熊川哲也さんの文章も必ず読んでいるに違いないのです。

羽生くんにしてみれば、この熊川さんのメッセージはまさに「我が意を得たり!」の心境ではなかったかしら。

思い出すのは、
翌2016-2017シーズンのエキシビションナンバー、『ノッテ・ステラータ』!
この演目の醸し出す、バレエとの素晴らしい親和性❣️
それまでとは倍増しになった、白鳥さんの至高の優美さにも、大いに合点がいってしまうのです。おねがい

↑どのシーンを切りとっても、一瞬一瞬が

夢のように美しい『ノッテ・ステラータ』







今日も羽生くんが元気で練習できていますように!おねがい

画像は感謝してお借りしました。


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