「変身」した企業の例と、変革に取り組んだきっかけ | 『売れプロ!』ブログ -「売れる」「稼げる」中小企業診断士に-

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皆さん、こんにちは。

売れプロ12期生、中小企業診断士の長尾俊彦です。

 

3月14日の日経新聞に、「ビルからビール サッポロ回帰」という記事が載りました。サッポロビールを傘下に持つサッポロホールディングス(以下、サッポロHD)が、酒類事業を拡大する、という内容です。

 

サッポロHDは、売上高は変わらず酒類事業がトップですが、利益ベースで見ると、ビール工場だった跡地を再開発した「恵比寿ガーデンプレイス」などの不動産事業も大きなウエイトを占めています。

 

サッポロHDの場合はこの利益構成を見直し、再び祖業に力を入れようという動きなのですが、世の中の企業を見渡してみると、後から参入した事業の割合が大きくなり、いわば「変身」した企業もあります。

 

今回は、そのような企業の例を取り上げ、多角化や事業の入れ替えなどの変革に取り組んだきっかけについて、見ていきたいと思います。

 

大変身を遂げた企業

まずは、何と言ってもAmazonでしょう。当初はインターネット書店として登場し、やがて総合ECサイトになり、今度はその基盤を活かして、AWSという世界的なクラウドサービスで一気に市場を獲得するという、2度の大きな変身を遂げています。Amazonの2022年度のAnnual Reportを見ると、ECは100億ドル近くの赤字ですが、AWSで大きな黒字(228億ドル)を確保しており、利益の視点から見るとECが“おまけ”のような状態です。

 

日本でドラスティックに変化した企業の代表格は、富士フイルムホールディングスです。かつてはフィルム、写真プリント、カメラなど、写真を核にした鉄板の牙城を築いていたのが、デジタルカメラの登場で急激に市場が縮小。しかし、その後ヘルスケアに舵を切ったことで、再び成長企業になりました。2021年には日立製作所の画像診断関連事業も買収して、ヘルスケア事業を強化したほか、子会社だった旧・富士ゼロックスをリブランディングして、ビジネスイノベーション事業としています。この2事業で、売上・利益の6割近くを占め、フィルムを扱うイメージング事業は、今や2割にも満たない状況です。

 

化粧品や健康食品のDHCも、ユニークです。もともとは大学の研究室向けの翻訳事業から出発しており、DHCはDaigaku Honyaku Centerの略称です。実は今でも英語に関する事業は行なっていますが、DHCの英語教材といってもピンとこない人も多いでしょう。それほど、化粧品や健康食品の存在感は大きくなっています。

 

その他、「変身」に成功している企業

ここまでドラスティックな変化でなくとも、祖業に匹敵したり凌駕するほどの多角化に成功している企業は、他にもあります。例を挙げてみましょう。(いずれも、出所は各社の有価証券報告書・HP)

・学研ホールディングス 2004年から参入した介護事業が教育事業とほぼ同じ規模

 

・ダスキン ダスキン事業とミスタードーナツ事業がほぼ同じ規模

 

・白洋舎 クリーニング事業よりも、ホテルのリネンや飲食店のテーブルクロスなどのレンタル事業の方が売上高・利益とも上回る

 

・共立メンテナンス 給食施設の運営受託からスタート。直後に学生寮事業を開始。1993年から夜鳴きそばで有名なビジネスホテル「ドーミーイン」を展開。売上・利益とも「ドーミーイン」が過半を占める

 

・JR九州 鉄道事業は3分の1で、不動産・ホテル、流通・外食、ビジネスサービスで6割近くを占める

 

・ブラザー工業 ミシンの修理業で創業。現在の主業はプリンター

 

「変身」に取り組んだきっかけ

以上の企業が「変身」に取り組んだきっかけは様々ですが、整理してみると、いくつかのパターンが見えてきます。

 

①既存市場の大幅な縮小に伴い、起死回生として事業改革に取り組んだ例

 富士フイルムホールディングス、学研ホールディングス、JR九州

 

②既存事業の強みを活かして、新たな柱を築くために新規事業に取り組んだ例

 Amazon、白洋舎、共立メンテナンス、ブラザー工業

 

③創業者の発案で、創業時の事業とは全く異なる新規事業に取り組んだ例

 DHC、ダスキン

 

例えば、学研ホールディングスは、学習雑誌の売上が減少し、ビジネスモデルが崩れていく中で、介護保険法のスタートを機に全く畑が違う業界に参入しました。一方、②の企業は、基本的に祖業が好調な時に、多角化の路線を推し進めた企業です。

 

さらによく観察してみると、やはり「自社の強み」を活用した企業が多いことがわかります。Amazonや富士フイルムホールディングス、白洋舎、ブラザー工業は既存事業で培った技術、学研ホールディングスは「学研」というブランド力、JR九州は国から引き継いだ土地、共立メンテナンスは寮での運営ノウハウ、ダスキンは国際フランチャイズ協会に日本初のメンバーとして入会できたという強みです。①の企業であっても、強みがあったからこそ起死回生できたので、強みを常に意識して、それを横展開できる方法を探し続けるのが重要であることを示しています。

 

折しも、3月14日には、ブラザー工業が産業用プリンターに強いローランドDGに、TOB(株式公開買い付け)による買収提案を行うと発表しました。翌日の新聞には「ブラザー、3度目の『変身』へ」という見出しの記事が掲載されています。プリンター技術を活かし、産業機械に主力をシフトするという戦略です。

 

こうして考えると、SWOT分析の重要性を、改めて認識することができます。今後、時代の変化がますます速くなり、たくさんの企業が「変身」を求められると思います。常に「自社の強み」を多方面から認識し、それを活かし切るという視点が、成功への道であると言えるでしょう。

 

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