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売れプロ12期生で中小企業診断士の原口卓也です。
今後のブログでは、経営革新計画をテーマに、計画承認によるメリット、現状分析、新事業の構想と検証、新事業の数値化と進捗管理について記してまいります。今回は、経営革新計画の制度概要について、以下の構成でお届けします。
<目次>
1.ゾンビ企業の急増-過去最大の上昇率から感じた危機感-
2.経営革新計画の概要-経営革新計画とは-
3.経営革新計画を作成すべき理由-なぜ経営革新計画なのか-
1.ゾンビ企業の急増-過去最大の上昇率から感じた危機感-
経営革新計画をテーマにしたのは、帝国データバンクによる『「ゾンビ企業」の現状分析(2023年11月末時点の最新動向)』(以下 本調査))が1月19日に公表され、その結果に衝撃を受けたためです。
まず、調査対象であるゾンビ企業の定義を確認します。本調査では、国際決済銀行(BIS)の定義に準拠しています。
●ゾンビ企業 = 3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満且つ設立10年以上の企業
●ICR=営業利益+受取利息+受取配当金 ÷ 支払利息+割引料
そして、帝国データバンクが保有する企業財務データベース『COSMOS1』において、2022年度のデータを基づくと、3年連続ICRが算出できる設立10年以上の企業は10万1,478社あり、その内ゾンビ企業に該当する企業は1万7,387社と発表されました。さらに、ゾンビ企業率は17.1%であり、前年度からの上昇率3.6ポイントは調査を開始した2007年度以降で最大でした。2007年以降には、2008年のリーマンショック並びに2011年の東日本大震災と、日本経済に大きな影響を与えた出来事がありましたが、それ以上の上昇率とのことです。
また、ゾンビ企業率17.1%を、帝国データバンクの企業概要データベース『COSMOS2』に登録された約147万社を母集団に当てはめると、ゾンビ企業数は25万1,000社と推計されると公表されました。母集団を経済産業省が公表した『令和3年度経済センサス』の調査結果に基づく日本の中小企業社数約337万社を置き換えると、ゾンビ企業数は57万社6,000社となり、2023年度の企業倒産件数8,497件の約68倍もの倒産予備軍が存在していることになります。
では、何故ゾンビ企業が急激に増えているのでしょうか。それは、新型コロナウイルス感染症による外部環境の激変を受けた企業の資金繰りをゼロゼロ融資(実質無利子・無担保保証の融資)により支えていたためです(ゼロゼロ融資の貸付実績は2022年9月末時点で約245万件・約43兆円)。ゾンビ企業の定義におけるICRが1未満とは、稼いだ利益で借金の利息が賄えていない状況を意味します。本調査でも、売上高経常利益率・有利子負債月商倍率・自己資本比率の経営指標より、収益力・過剰債務・資本力の3項目を切り口に、ゾンビ企業の課題を分析しています。
●収益力【売上高経常利益率】▲4.04% ー 2.75%
●過剰債務【有利子負債月商倍率】9.87倍 ー 5.58倍
●資本力【自己資本比率】▲5.36% ー 28.29%
※左側がゾンビ企業平均。右側が全企業平均
上記の調査結果から、ゾンビ企業は何らかの変化により既存事業の収益性が悪化 → 資金繰りに窮したため、運転資金を金融機関からの融資で調達 → 収益性の抜本的な改善に至らず、資金を他人資本に依存していることがうかがい知れます。
つまりは、ゾンビ企業が陥っている負のスパイラルを脱するには、収益性を改善する“何か”が必要になります。それは、新規事業です。経営環境の変化から機会を見出し、これまでの事業で培った強みを活かす新しい取り組みが求められています。
2.経営革新計画の概要-経営革新計画とは-
東京都産業労働局のホームページでは、経営革新計画を次の通り定義しています。
「新事業活動により経営の相当程度の向上を図るための中期的な経営計画書」
この定義には二つのキーワードがあります。それは、新事業活動(新商品を開発または新サービス提供すること)、経営の相当程度の向上(利益を増やし、それを従業員に給与として還元すること)です。
経営革新計画は、新規事業をこれから検討・立案し、実行しようとする事業者のための制度なのです。
3.経営革新計画を作成すべき理由-なぜ経営革新計画なのか-
続いて、経営革新計画を紹介する理由を説明します。
それは、公的な中小企業支援策は数多くある中で、経営革新計画が、全国の中小企業が一年を通じて活用でき、他の支援策を有利に使う条件であるためです。
例えば、東京都令和5年度予算のうち、産業労働費は6,733億円ですが、それら支援策を利用できるのは、基本的に東京都内の事業者のみです。また、国の施策として、全国の事業者が利用できる事業再構築補助金第11回公募は、10/6までに申請する必要がありました。以上のように、他の中小企業支援策は使いたくても使えない、使いたい時に使えないということが多々あります。
また、経営革新計画の承認が得られると、日本政策金融公庫からの借入に特別利率が適用され、通常より0.65%安く資金調達できます。5,000万円を5年間で借り入れた場合、基準利率なら247万円が特別利率では164万円と、支払利息が83万円も削減できることになります。
そして、経営革新計画の承認は加点項目として、ものづくり補助金の採択率に直結します。
全国中小企業団体中央会が「ものづくり補助金総合サイト」データポータルで公表している赤い折れ線グラフが示す第14次ものづくり補助金の採択率は、加点項目が1個では43.3%、そして2個では53.0%であり、加点項目が増えれば、採択率が上がるという実績があります。
次回は、経営革新計画承認により得られるメリットについて、実際にその承認を勝ち取った事業者の声を基にお届けする予定です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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