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売れプロ12期の中小企業診断士、自称「ニコニコみっちゃん経営デザイナー」の石田 充弘(いしだ みつひろ)です。
6回目は、前回に続き「信託」のお話です。今回は、具体的な「信託」の活用法の1つとして、オーナー企業の事業承継対策について取り上げます。
企業オーナーにとって、ご自身の保有する自社株式の承継に関するニーズは、ご自身やご子息等の後継者候補の状況によって様々です。そうした様々なニーズにあわせて、信託はオーダーメイドで商品設計を考えることができます。いくつかのケースを紹介します。
(1)後継者に株式を生前贈与したいが、経営を任せるのはまだ早い<生存贈与型他益信託>
他益信託とは、委託者と受益者が異なる信託です。現経営者が委託者となり、信託銀行等の受託者に自社株式を信託し、意中の後継者を受益者に定めます。
信託期間中は、株式の財産権と経営権を分けて、配当等の財産権を受益者に承継しつつ、経営権は現経営者が保持し続けることができます。
そして信託終了時に、株式を受益者に交付する旨を定め、その時期を「何年後」、または「経営者の死亡時」等と現経営者の意思に沿って柔軟に定めることができます。
(2)相続発生時に確実に後継者に経営権を承継させたい<遺言代用信託>
遺言代用信託は、現経営者が委託者兼第一受益者となる自益信託です。現経営者が生存中は信託銀行等の受託者に管理運用を任せつつ、死亡時には意中の後継者が第二受益者となり、受益権を承継する旨を契約で定めることができます。
つまり、遺言と異なり、現経営者の生存中に信託契約の効力が発生する形で、意中の後継者への将来の承継を確実に見届けることができる点がメリットになります。また、後継者は契約に従い相続発生と同時に受益者となるため、遺産分割協議を経ずに速やかに事業承継を行うことが可能になります。
(3)「次の次」の後継者も定めておきたい<受益者連続型信託>
現経営者が委託者兼第一受益権者となり、次の後継者を第二受益権者、「次の次」の後継者を第三受益権者と予め定めることにより、将来の事業承継を現経営者の意思に沿って円滑に進めることができます。第三受益権者はお孫さん等、信託設定時点では生まれていなくても構いません。
これより、通常の相続によって自社株式が複数の相続人に拡散していくことを防ぐことができます。ただし、信託法により信託期間は最長30年までと定められており、30年を超えて新たに受益権を承継できるのは1度のみとされています。
(4)拡散した一族の保有株式を買い取らずに経営権だけ一元化したい<株式管理承継信託>
現社長が3代目、後継者が4代目等の場合で、過去の相続で株式が一族内で拡散しているようなケースでは、現在はいずれも会社経営に協力的であっても、今後の経営の安定のためには、議決権だけでも集めておきたいということがあります。
こうした場合、買取りをしようとすると、まとまった資金が必要となったり、買取りによって将来の配当受領を取り上げることになったりして、一族の賛同が得られにくいことが考えられます。
そこで、現在の一族の株主を委託者兼受益者として信託を設定してもらいながら、現経営者を議決権行使の指図代理人に定めることで、経営権を集約することができます。
(5)認知症等による経営者の判断能力低下に対応したい<民事信託(家族信託)>
平成19年の信託法改正により、信託銀行等が営利目的で事業として受託者になる「商事信託」以外にも、家族等が非営利目的で受託者になる「民事信託」の幅が大きく広がっています。
具体的には、家族信託として、後継候補者が受託者となり、自社株式を後継候補者に移転しつつ、現経営者が受益者として配当等の経済的利益を享受することで、信託設定時に贈与税が発生しないうえ、議決権行使の指図権を現経営者に残すこともできます。
また、現経営者が健康なうちに、ご自身の意思に基づき受託者に自社株式の管理を託すことができ、判断能力低下時に議決権行使の指図権を予め定めた後継者に移転することができます。
(6)相続発生時の多額の相続税を回避したい<民事信託(自己信託)>
現経営者が自己信託の宣言をすることで、委託者兼受託者となり、後継者を受益者とすることもできます。これにより、経営権を現経営者に残しつつ、配当の経済的利益を後継者に承継することができます。
この場合には、受益者に贈与税が課せられますが、株価が低いタイミングで設定することにより、将来株価が上がり、現経営者の相続発生時に多額の税額を課せられるリスクを回避することができます。
(7)信託活用のメリット
これまで見たように、事業承継に信託を活用するメリットとしては、現経営者の意思に沿って柔軟な条件を付けることができる、後継者の地位を確立できる、経営に空白期間ができない、といった点が挙げられます。
(8)留意点
一方で、事業承継の対策として信託の活用は、比較的新しい方法のため、周囲の理解を得るのが難しい場合があります。また、経営者の意思に沿って設定できる分、特定の相続人にだけ有利な承継となる等、他の相続人の遺留分の侵害にあたると見なされる可能性があります。こうした場合に法的にどのように解釈すべきかは、まだ見解が定まっていないのが現状です。
そのため、ある程度時間を掛けて、設定しようとする信託の内容を周囲にしっかりと説明することが望まれます。また、周囲の理解を得やすくするために、遺留分に配慮しておくことも欠かせません。
また、信託を活用することにより、節税効果が得られる場合もありますが、スキームにより、課税されるケースや、税制特例が適用されないケースもあるため、専門家への確認が欠かせません。
(8)最後に
事業承継対策について、「信託」の仕組みを使って、様々なスキームが考えられることを紹介しました。まさに、委託者の想いに寄り添い、信任を得て財産を託してもらうために最善を尽くして明るい未来をデザインする、という、「信託」の理念が見てとれると思います。
私は、中小企業診断士として、「経営デザインでニコニコ明るい未来を共に創る」の「Will」(何がしたいか)の下、「Should」(何をすべきか)の具体化に沿って、「Can」(何ができるか)をどんどん増やしていこうと思います。
「売れプロ」は、その意味で、自分の「Can」を増やす、これまでの自分をバージョンアップするのにとても有意義で貴重な場所です。圧倒的な実績の裏にあるノウハウを惜しげもなく伝授してくださる青木先生の下、互いに切磋琢磨する素晴らしい同志とともに、しっかり学んでいきたいと思います。
(参照) 信託協会 https://www.shintaku-kyokai.or.jp/
最後までお読みいただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
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