災害と経営 〜地震だけではない、中小企業を取り巻くリスクに備える〜 | 『売れプロ!』ブログ -「売れる」「稼げる」中小企業診断士に-

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 売れプロ12期生で中小企業診断士の原口卓也です。

 5回目となる今回は予定していたテーマを変更しました。それは、1月1日の令和6年能登半島地震、1月2日の羽田空港における日本航空機の炎上事故と、相次いで大きな出来事があったためです。

 まずもって、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。そして、一日も早い復興を願ってやみません。また、被災地の支援へ真っ先に向かおうとされていた海上保安庁隊員のご冥福をお祈りいたします。

 これらの出来事を受けて、診断士の社会的使命として、中小企業におけるリスク対策について記します。売れプロ12期生ブログでは、リスク対策に関する様々な記事が投稿されています。直近では、佐藤先生の「有事の備えとは?」、大沢先生の「中小企業も重要な情報セキュリティ対策」などがございますので、併せてお読みいただくことをオススメいたします。私の記事では、中小企業がリスク対策に取り組むに当たりその一助となる、中小企業庁の「事業継続力強化支援事業」を採り上げてまいります。


【目次】
 1.リスクを定量化する
 2.事業継続力強化支援事業
 3.リスク対策の意義



1.リスクを定量化する

 帝国データバンクによる「令和6年能登半島地震関連調査」では、能登地方に本社を置く企業は計4,075社、それらの売上高は計1兆3,018億円、従業員数は49,728人と公表されました。業種別では建設業が1,453社(35.7%)が最多であったことから、復興活動への影響を危惧します。


 また、全焼した航空機は日本航空の最新機であったこともあり、同社は約150億円の損失を計上する見込みであることを発表しました。

 数字には、誰が見ても、多い少ないや増えた減ったがひと目で分かり、人によって評価がブレない特性があります。帝国データバンクや日本航空が公表した数字から、被害の甚大さを改めて受け止められた方も多いのではないでしょうか。

 リスクを定量化することで、リスク対策に取り組む関係者(社員や取引先など)を巻き込むための推進力なります。


2.事業継続力強化支援事業

(1)概要

 中小企業が自社の災害等のリスクを認識し、防災・減災の対策として取り組むために、必要な項目を盛り込んだもので、将来的に行う災害対策などを記載するものです。そして、その計画を経済産業大臣が「事業継続力強化計画」として認定する制度です。

 事業継続力強化計画と類似のものとして、事業継続計画(BCP)があります。二つとも、災害等による事業への影響を最小限に抑えるため、予め対策をまとめておく計画という点では共通していますが、事業継続力強化計画が防災・減災対策の"第一歩"と位置付けられていることから、計画に盛り込むべき項目が限定されている計画認定後の優遇措置が講じられているといった特長があります。

 事業継続力強化計画は、以下の5つのステップ=項目で構成されます。

 ①事業継続力強化の目的の検討
 ②災害等のリスクの確認・認識
 ③初動対応の検討
 ④ヒト・モノ・カネ・情報への対応
 ⑤平時の推進体制


 5つの項目のうちに、ファーストステップである①事業継続力強化の目的の検討が特に重要です。それは、自社が何のために防災・減災対策に取り組むか次第で、何をリスクと捉え、どのように対応するかが大きく変わり、その計画の有効性を左右するためです。


(2)対象

 制度の対象は、中小企業等経営強化法第2条第1項における定義に該当する企業です。この定義には資本金区分と従業員区分があり、どちらか一方を満たせば定義に該当することになります。例えば、製造業では、資本金が3億円以下、または従業員数が300人以下です。

 本制度の特長として、複数企業で利用できる「連携型」という利用形態があることが挙げられます。面的なつながりがある工業団地等として、また、外注先や得意先共にサプライチェーンとして、防災・減災対策に取り組む際にも活用できます。
 

(3)支援内容

 2016年から2023年までの間、大規模災害が発生していない地域=白地はほぼありません。

 

 

 さらに、2011年から2020年までに、約97%の地域で水害が発生しています。



出典:いずれも「事業継続力強化計画総合パンフレット」(中小企業基盤整備機構)

 このような災害と企業経営が切っても切れない状況を鑑み、独立行政法人中小企業基盤整備機構では、事業継続力強化計画のより一層の普及を図るため、以下三つの支援策を講じています。是非積極的にご活用ください。

①マンツーマン支援
 →無料で専門家を派遣し、事業継続力強化計画の作成を支援します(2回、延べ3-4時間)。

②ポータルサイト、メールマガジン
 →漫画や動画で制度を分かりやすく解説したポータルサイトでは、認定事業者による申請後の取組事例も掲載しています。

③セミナー、シンポジウム
 →知る、作ることを目的とした無料のオンラインセミナーは、毎月第2・4木曜日に定期的に開催されており、参加しやすい環境が整っています。また、制度の普及を図ることを目的にシンポジウムが年一回開催されています。


 上記のような支援策の他、事業継続力強化計画認定のメリットとして、ものづくり補助金などの補助金審査における加点要素「中小企業防災・減災投資促進税制」による特別償却日本政策金融公庫の低利融資(基準金利より0.9%引き下げ)といった優遇措置が受けられます。さらに、経済産業省認定ロゴマークの活用により対外的な信用力向上が期待できます。

 上記の支援策を是非ご活用いただきながら、従業員や取引先、そして地域のために安心・安全な企業として、今後の企業経営において必要不可欠なリスク対策に取り組むことで、社会的使命を果たしてまいりましょう。


3.リスク対策の意義

 リスク対策において、定量化することと共に、リスクの存在を組織内へ包み隠さず、いち早く共有することが重要であると考えます。

 青木先生よりご紹介いただいた『失敗の本質』(野中郁次郎共著、ダイヤモンド社)、それをダイジェストでまとめた『「超」入門 失敗の本質』(鈴木博毅著、ダイヤモンド社)では、太平洋戦争における日本軍敗北の要因の一つとしてリスク対策を採り上げ、その意義を次のように説いています。

 ・"当然に"存在するリスクを無視することは、計画(希望的仮定)を極めて脆弱なものにしてしまう


 ・偶然リスクをかわせたとしても、プロジェクトの脆弱性は変わらず、また、リスクを認めず公表しないことで、メンバーは認知してリスクを避ける行動を取れないので、むしろリスク発生の可能性は高まる
 

 ・リスクは目を背けるもの、隠すものでもなく、組織が存続していく上で、管理されるべきものである
 

 

 次回は、この『「超」入門 失敗の本質』から学んだ組織学についてお届けする予定です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 

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