主体的に動く社員を育成するには | 『売れプロ!』ブログ -「売れる」「稼げる」中小企業診断士に-

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皆様、こんにちは。売れプロ12期生 中小企業診断士の尾崎友和です。

昨今、企業において「自主的な取り組み」や「自律的なキャリア開発」などが掲げられ、社員の主体性が求められるようになってきていると感じています。社員が主体的に動くには何らかのモチベーションが必要かと思います。そこで本日は、モチベーションについて触れてみたいと思います。主体的に動く社員を育成するにはどうすればよいか、モチベーション理論の一つである「ハーズバーグの二要因理論」を踏まえながら考えてみたいと思います。

 

1.ハーズバーグの二要因理論

ハーズバーグの二要因理論とは フレデリック・ハーズバーグ(1923~2000年、アメリカの心理学者)が提唱した、人の仕事に対する欲求を「衛生要因」と「動機付け要因」の2つの要因に整理した理論です。

 

この理論は、約200人のエンジニアと経理担当事務員に対して、「仕事上で幸福を感じたり不満足を感じたりしたときに、どのようなことが起きていたのか」について質問を行い、集めた結果を分析して導き出された理論です。

 

ハーズバーグの分析によると、人の欲求には2種類あり、それぞれ異なる反応を及ぼすことがわかりました。欲求の一つが給与や人間関係などの「衛生要因」、もうひとつは成長実感や達成感などの「動機付け要因」です。

 

まず、「衛生要因」とは、仕事における働きやすさを作る環境要因であり、以下のような事柄が挙げられます。

 

 ・会社の制度

 ・上司との関係

 ・勤務条件

 ・給与

 ・同僚

 

これら「衛生要因」は、「満たされないと不満足になる」項目のため、不満足要因ともいわれます。「衛生要因」が満たされてもやる気になるわけではなく、あくまでも不満足の解消にとどまることに注意が必要です。

 

一方、「動機付け要因」とは、仕事における働きがいを作る意欲要因であり、以下のような事柄が挙げられます。

 

 ・仕事における達成感

 ・承認、評価

 ・仕事内容

 ・昇進、責任(権限委譲)

 ・成長実感

 

「動機付け要因」は、「満たされなくてもただちに不満足にはならないが、満たされるとやる気になる」項目です。人は「成長したい、評価されたい、任されたい」などの気持ちを少なからず持っているため、やる気を引き出すためには「動機付け要因」が重要です。

 

この「動機付け要因」というのは、それぞれが単体で存在しているわけではなく、密接に関連しているそうです。したがって、ハーズバーグは、それらを繋げてサイクルにしていけば、内発的動機を高め続けられると説きました。例えば、以下のようなサイクルです。

 

 ①.ちょうどよいレベルの機会を与える:「機会」

 ②.その機会に対してうまく乗り越えていけるよう支援する:「支援」

 ③.成功したら正当に評価する。その評価を周囲で共有し、承認する:「評価」、「承認」

 ④.周囲の承認と同時に、昇給や昇進など会社として報酬を与える:「報酬」

 ⑤.一つ難関を乗り越えたら、その成長に見合う程度の難易度の機会を再度与える(①に戻る)

 

つまり、「機会」~「支援」~「評価」~「承認」~「報酬」のサイクルです。

 

2.「機会」の与え方と「支援」の仕方で主体的に

 上記のサイクルについて、実務場面で制度化されているのは「評価」~「承認」~「報酬」の部分がメインで、「機会」~「支援」については、自己申告や目標設定という形で部下に任されている企業が多いようです。言ってみれば、「主体性の尊重」と言う名のもと、きちんとした「機会」や「支援」が与えられていないのが実態のようです。そこで、部下にどのように「機会」を与え、どのように「支援」するかについて見てみたいと思います。

 

心理学者であり、経営者でもある大沢武志氏は、マネジメントの根幹は、2つのWと2つのRであると説いています。2つのWとは、「What(何を)」、「Way(どうやって)」、2つのRとは「Reason(理由)」、「Range(範囲)」です。

 

例えば、ハンバーガーの作り方を例にとれば、以下のようになります。

 

 ・ケチャップを均一に塗りなさい(What)

 ・そのために、ケチャップをミートの真ん中に丸く落し回すように引き延ばしなさい(Way)

 ・そうすれば、どこから食べても同じ味になります(Reason)

 ・ピクルスは、自分の工夫で置き方を考えてみてください(Range)

 

特に初心者にとっては、「ケチャップを均一に塗りなさい」と指示(What)を言われても、なかなか具体的にどうすればよいか分からないことが多いと思います。そこで「ミートの真ん中に丸く落して回すように引き延ばしなさい」とやり方(Way)を教えてあげれば、できるようになるわけです。

 

そして、その理由(Reason)として、「どこから食べても同じ味になるから」と伝えてあげれば、工夫を始める素地ができると言います。次にピクルスを置く際に自身に裁量(Range)を与えられると、「どこから食べても同じ味になる」よう、重ねずに丸く並べるようになります。つまり、自分で主体的に動けるようになるのです。

 

その結果、上司からの指示は、「受けること」、「覚えること」ではなく、「考えること」、「工夫すること」に変わります。そうすると、自ら考え、工夫することにより業務が捗って楽しくなっていくのです。

 

まずは、「What(何を)」 、「Way(どうやって)」を明確に伝え、2つのWが身に着いたところで「Reason(理由)」を詳しく伝え、「Range(範囲)」の中で裁量を与え考えさせると、主体的な社員が育つのではないかということです。皆様の日々のマネジメントの参考になれば幸いです。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

【参考図書】

・「心理学的経営」、大沢武志著、PHP研究所

・「無理・無意味から職場を救うマネジメントの基礎理論」、海老原嗣生著、守島基博解説、プレジデント社

 

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