一疋の青猫 -94ページ目

花の散るらむ


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幾度か こころとがめて 訪はざりし 扉(と)の花芙蓉 実となりにけり

岡 橙里




咎めるものは 無けれども

駅へと続く 坂道に ひと夏 咲いた 白き 芙蓉の花

透かす光に 花びらは 心許なく 薄く はかなく



その姿に 惹かれながらも

往来の流れに 立ち止るを ためらい

花期の長い 芙蓉も いつしか 実となり はぜてしまった








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霜を掃き 山茶花を掃く ばかりかな

虚子




まるい樹形を示すように

張り巡らした條々たる枝の 密度を計るように

その 足もとに 散り敷かれた 山茶花の花びら

ツバキ科の花は 散るに潔く

それゆえ 落命 終焉の イメージを 喚起しもするが

山茶花の 赤は 椿の それよりも 明るく

幾分 やさしげに映る




・・・・・・・・・




他人事のようなクリスマスと 迎える新年の間際の隘路

エアポケットのような数日

気の弛みか

喉を痛め 少し熱が出て

猶のこと ボンヤリと 過ごしています




花も散るらむ

夏の花

冬の花




熱を帯びた身体を

花実を落とした その幹へと 寄せるなら

しんと 冷たく 心地よいのではないだろうか・・・

昔から 熱を出すと

そんな 突拍子も無い衝動に 駆られるのは 何ゆえだろう

確かに

何かに 少しだけ 近付いたような気になるのも

それも

やはり 熱のせい 幻 なのでしょうか



・・・




みなさまも おからだ 大切に







「 ぼくのせいですか 」   森田 童子

※ 砂浜に影落として 前髪あげし くちづけの・・・



石の記憶


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戸惑いや後悔を

塗り重ね 継ぎ足されたような 壁を

指で なぞりながら



いつか 歩いたような

まだ ふたりが すぐ そばにいたような

不ぞろいの 石段を

踏みしめながら



長いような

短いような

記憶を 手繰り寄せてみる



剥がれ落ちた 壁の石と落書き

角の磨り減った石段に 黒くにじむオイル



よみがえる記憶は そんなものたちを

ひろい集めて 構成されたもののように 思われる



古いような

新しいような



かなしみのような

なつかしさような



のぼり詰めた石段の上

三角の青い空






「 グレイス・スリックの肖像 」   松任谷 由実

※ 過ぎた時を見せて 深まる夜の静寂へつれてって・・・







一枚の木の葉


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一枚の木の葉など

隈なく枝を伸ばした木々にとって

涙のひとしずくに過ぎぬものだろうか



一枚の木の葉にも

揺れて舞い落ちるほどの刹那

無限の時を振り返る いのちがあるのではないだろうか



同じ時を過ごしながら

その色は 悲しみのようであり 喜びのそれであり



生れしながら 変わらぬ姿もあれば

ちりぢりと 背中を丸め 全てを抱え込む様もあり



いま

ひらりと



また

還りゆく



一枚の

木の葉







「 木の葉のスケッチ 」   大滝 詠一

※ 枝を離れたふたつの葉は 風に散るしかない・・・