一疋の青猫 -51ページ目

ためらいの残色


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空の色は 夏の青さを残して


もう

十月になるというのにね


きっと

海の色は 空の青さを映して


*


小さな砂浜へと続く小径

波の音と海の青を期待しながら

砂まじりのなだらかな坂道を下りてゆく

両側に点在する民宿は暦どおり

既に人影もまばらで

二階の窓には夏を仕舞い込もうと

疲れ気味の夏布団が並んでいる

庭先では高く旋回するトンビよりも呑気に

宿の主人らしき人が屋根を見上げている





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波音が迫り 浜へと抜ける

最後の照葉樹のトンネルに

ヒガンバナが咲いていた

秋には見慣れた花なのに

出会う度にいつも感じる

この花の唐突さと近寄り難さは何ゆえだろう

枝も葉も無い すっと伸びたその立ち姿か

何かに喩えることを拒むような花の形かその色か


辻の地蔵に出会ったように

そのまま通り過ぎることはためらわれ

けれど直視することも無作法に思われて

うつむき加減に息を潜めて

木洩れ陽の緑陰を抜けた





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予想通り

海は青くて

浜辺にはひとりきり

打ち寄せられたボールは

拾っても

放る相手もいない



気配を感じて振り返れば

そこには

風に揺れる草花だけ


なんとなく

はずかしく


砂を払って 坂道を上った





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もう一日 お休みでしょうか?

穏やかな休日を







「 ピラビタール 」   森田童子

※ 悲しい時は ほほをよせて 淋しい時は 胸を合わせて・・・ 











ある風景


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今朝


秋の日を浴びながら

泣いているひとを見ました

無造作に束ねた長い髪を肩に流して

指に絡めたり解いたりしながら

泣いていました

目の前を過ぎる視線を憚ることもなく

泣いていました



いまだ

夏服の

鮮やかな色合いも

サンダルの爪の赤も

秋の日に

少し

褪せているように見えました



私は

それを 美しいと思いました





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どれほどの

深い悲しみか

絶望的な悩みなのか

非情なる裏切りにあったのか

涙の訳を知る由もありませんが

肩を震わせる慟哭に

加担することも負担することもなく



ただ

その姿を

美しいと私は思いました


*
*
*


そう言えば


悲しみにも悩みにも

時には 裏切りにさえ

「美」 は

存するのだと

空っぽになった自分を見ている

もうひとりの自分が呟いて


それに

黙って

肯いたのも



いつかの

秋の日だったかも知れません






「 恋をした 」   Chara

※ 恋をした。そして泣きました・・・






青い船で


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大魚ジェラワットが

列島をすり抜けた朝 

空は塗り直したばかりの壁のように青く

日射しは硝子の欠片でも含んでいるかのように

キラキラとまばゆく研ぎ澄まされた


大魚の尾びれのひと跳ねは

濁り淀んだ空気を一掃してしまい

木々の梢も 建物の角も

きりりと

その輪郭を際立たせて

まるで

なにもかもが新しく生まれたように



*



台風一過

朝の空気と光が 明らかに違いましたね

これも自然の持つ浄化作用でしょうか

私達が 壊して 汚した

水を

空気を

甦らせる

大いなるチカラ



この星は

暗い大海に浮かぶ 一艘の船

その船底を踏み抜かないようにしたいものです





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「地球の客」

谷川俊太郎



躾の悪い子供のように

ろくな挨拶もせず

青空の扉をあけ

大地の座敷に上がりこんだ


私たち草の客

木々の客

鳥たちの客

水の客


したり顔で

出されたご馳走に

舌つづみを打ち

景色を誉めたたえ


いつの間にか

主人になったつもり

文明のなんという無作法


だがもう立ち去るには

遅すぎる

死は育むから

新しいいのちを


私たちの死後の朝

その朝の鳥たちのさえずり

波の響き


遠い歌声

風のそよぎ

聞こえるだろうか

いま





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文明のなんという無作法・・・








「 青い船で 」  松任谷由実

※ 月をよぎる雲の色も 波のしぶきさえも 二度と同じ姿はない 永遠の万華鏡・・・