最後の一花

「 夕 照 」 中原 中也
丘々は、胸に手を当て
退けり。
落陽は、慈愛の色の
金のいろ。
原に草、
鄙唄うたひ
山に樹々、
老いてつましき心ばせ。
かゝる折しも我ありぬ
小児に踏まれし
貝の肉。
かゝるをりしも剛直の、
さあれゆかしきあきらめよ
腕拱(く)みながら歩み去る。

暮れ方の光がいとおしく感じられるのは
冬至を前にした日の短さのせいばかりでは無いだろう
一日が暮れてゆくということは今更ながらに
全てのものには終りがあると告げているようで
傍らにあるもの 当たり前のものに 揺れぬ心も
光に射られては 寂寥と不安と焦燥の入り混じるような

冬の皺よせゐる海よ今少し生きて己れの無惨を見むか
(中城ふみ子)
*
冬の嵐となったこの数日 海のおもては白き波濤
まさに「冬の皺」
ただ 背後に富士の姿が見えるだけで
きっと 中城ふみ子の故郷である 北の海ほどの苛烈さからは遠く

北風の猛威はライトアップされた街路樹ばかりで無く
我が家のベランダの花々も すっかりその花を 蕾を 落としてしまいました
ひとつだけ残った
最後に残った 今年最後の朝顔の蕾
ひとまわり小ぶりに咲きました
「 夜間飛行 」 八神純子
罪と罰

憂愁の旋律 甘き余韻 一条の光
*
*
*
十二月の舗道は 舞い散る木の葉
行き過ぎる人々は 喜びも 悲しみも
吹き寄せられた 落葉の如く
混ぜ合わされた色に埋もらせ
気付かない振りで 足早に駆けてゆくの
*
残りの数をかぞえるだなんて
時にそれは残酷なことで
密やかに指折ればよいのに
暮れの街は きらびやかに ひとつ ふたつと
馴れ馴れしい手で 私の背中を押すの
*
だから そう
しばし この時
甘やかな記憶と ため息のような時間
少し暗くした灯りに 照らされた現在を閉じれば
橋脚に掛かって 動かない小舟
*
お久し振りでございます ペタもお返しできず申し訳ございません
「 罪と罰 」 椎名林檎
※ 静寂を破るドイツ車とパトカー サイレン 爆音 現実界 或る浮遊・・・


