(一之宮氷川神社 神幸祭) 神社の祭祀には、白と黒の鯨幕(くじらまく:「蘇幕」とも書かれます)が用いられます。
名前の由来はそのものズバリ鯨。その背が黒、腹が白だからとも、黒い皮を剥いだ下に白い脂肪があるからとも推測されています。
現在、一般的には弔事に用いられていますが、これは葬儀業者の発案によるものとされ、普及したのは昭和初期以降のこと、戦後とも言われ、歴史的には新しい使われ方です。
日本では、亡くなった方に白装束を着せる習慣が残されているように、古来より弔事には白を用いてきました。江戸時代に入り、西欧の文化や習慣が知られるようになると、弔事に黒も使うことが普及したのです。
鯨幕は本来、弔事・慶事に関係なく使用されるもので、神社の祭祀、皇室での慶事に使われています。ちなみに皇室での弔事には青と白の浅黄(あさぎ:「浅葱」とも)幕が使われます。
古代の日本語で、色名が示されているのは、「明るい」からの「赤」、「暗い」からの「黒」、「シルシ(印)」からの「白」、中間色の「青(アヲ)」の4色です。色名+「い」で形容詞として使われるのは、この4色だけです。
古代から認識されていた「白」と「黒」は究極の組合せ。それは格式が高いものとされてきました。