担当 ほし

 

 

Q1. ヴェネツィアに行く前に持っていたイメージと、行ってみて変化したイメージなどはありますか?

A1. ヴェネツィアに行く前は100年後には沈むかもしれない街とは思っていましたが、実際に行って冠水している状況さらに想定以上のオーバーツーリズムを感じました。

 

Q2. 電気防食とはどのようなものですか。

A2. ヴェネツィアのラグーンとアドリア海の入り口に設置された巨大な可動式水門を海水の腐食から守るためのものです。

 

Q3. 地盤沈下による冠水は観光にどのくらい影響しましたか。

A3. サン・マルコ広場などの低地は冠水の被害に遭いやすく観光客の移動が困難になることや建物の劣化が進む影響があります。

 

Q4. ムラーノガラスはヴェネツィアのこの村でしか作っていないのですか。

A4. ムラーノ島で作られているものだけをムラーノガラスと呼びます。

 

Q5. 5-4-1クルーズ船の問題について景観などはデザイン次第で改善出来る一方で生態系へのダメージなどは解消するのが難しいと思うのですが、どのような対策が現在考えられていますか。

A5. 

 

Q6. 5-1-2のaのところで住民のための場所から観光客のための場所へと書いてあるが、具体的にどのような変化なのか気になった。

A6. ファーストフード店や土産物屋が増えるといった変化があります。

 

Q7. ヴェネツィアは巨額なコストがかかると書いてありましたが、税金以外でどこからまかなわれているのですか?

A7. 観光客から徴収する宿泊税や入島税、また世界遺産であるため、国から資金が出ています。

 

Q8 世界遺産に訪れる人が遺産を自分たちも守っていこうと思うためには何が必要だと考えていますか?

A8.環境を汚さないようにする努力が必要だと考えています。具体的にはその遺産について知ることやポイ捨てしないこと、その遺産周辺の地域の規則を守るなどです。

 

Q11.モーゼに対しての地域別の住民の意見が気になりました。

A11. 住民の意見は分かりませんが、「環境工学者のアンドレア・ダルポアス氏は、「塩性湿地は生物多様性のホットスポット」と述べており、水門が上がるとこの堆積物の流れが遮断され、生態系が損なわれ、潟は死滅してしまう恐れがある」としています。

 

Q12. ヴェネツィアの音楽は建築や記念碑的芸術と同様に芸術的発展に影響を及ぼしましたか。

A13.「サン・マルコ大聖堂の空間構造を利用し、複数の合唱団や楽器群が空間を挟んで交互に演奏・合唱する手法(コーリ・スペッツァーティ)を発展させました。これは、ルネサンスの多声音楽から、ダイナミックなバロック音楽への転換点となりました。建築面ではヴェネツィアの華麗な建築や、光と影のコントラストを捉えた美術作品と音楽の重層的な響きは、都市全体の華やかな祝祭的雰囲気を創り出しました。またアドリアン・ヴィラールトやジョヴァンニ・ガブリエーリらの指導により、ヴェネツィアは音楽的中心地となり、のちにそのスタイルはヨーロッパ全土へ波及しました」。

担当ほし

 

1. ヴェネツィアの歴史

 

1-1 ヴェネツィアの始まり

1-1-1 古代末期ゲルマン民族の大移動に伴う混乱期

a 砂州状の島で外海から守られた浅瀬の海に浮かぶ無数の島に逃げ込んだ人々によって建設が始まった

→ヴェネツィアを中心とする干潟、ラグーンの島々

1-1-2 1100年間ヴェネツィア共和国は存続

←697年に最初のドージェ(総督)が選ばれてから1797年にナポレオン軍の侵入により崩壊するまで

1-1-3特定の個人や家系への権力の集中を極力回避し、徹底した合議制と厳罰主義で、治安や都市構造の維持をはかる独特の共和制度が発達

∵水に囲まれた限られた土地の上で営まれる都市生活を維持するため

1-1-4 その強力な政治制度の持続性は驚嘆に値するが、ヴェネツィアが歴史学や政治学の対象としてさかんに研究されるのもそのため

 

1-2 ヴェネツィアの中世

1-2-1 中世の間、航海貿易で繁栄し東地中海を席巻

a 1453年のコンスタンティノープル陥落を機にオスマン・トルコと対峙することに

b 15世紀末の地理上の大発見以来、物資の流通経路が変化したことで貿易一辺倒だった経済基盤が崩壊

1-2-2 15世紀初頭までにヴェネツィアは本土の諸都市とその領土を支配下に治め、領域国家へとなった

a その本土側に土地を購入し、農園経営を始める動きが16世紀には顕著にみられた

b 貿易商人であったヴェネツィア貴族が資本をシフトして土地所有者となった

c 中世末の経済的繁栄の絶頂から滑り落ちたヴェネツィアは、16世紀には教皇や神聖ローマ皇帝らが結集したカンブレー同盟との戦争(1509-16)で大打撃を被った

d オスマン帝国の驚異にもさらされ、軍事・外交政策に力を入れなければならなかった

e 16世紀のヴェネツィアは、経済は傾き、多くの問題をかかえていた

→結果的に文化的には最も輝きを放つ世紀となった

∵文化度をあげ、都市を立派に整備し、共和国の威信を高めることが得策であると考えられたため

f 今日まで残る魅力的な都市景観が完成されたのもこの時代

 

2. 世界遺産登録の背景

 

2-1 顕著な普遍的価値

2-1-1 ユネスコの世界遺産プロパティは、北東イタリアのヴェネト地方に位置するヴェネツィアとその潟の街を備える

a 118の小さな島々に広がり、ヴェネツィアは10世紀の主要な海洋国家となった

b 街全体が世界遺産

c 最古の建物は、ジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレットなどのような世界で最も偉大な芸術家のいくつかの作品が含まれている建築の傑作

2-1-2 起源と避難所

a 5世紀、ヴェネツィアの集団は蛮族の襲撃から逃れるために、トルチェッロ、イェーゾロ、マラモッコといった砂の島々に避難

b 当初は農民や漁民のための質素な一時的居住地であったが、次第に永続的な定住地へと変化

2-1-2 自然と歴史の結合

a 5万平方kmに及ぶこのラグーンでは、5世紀以降自然環境と人類の歴史が密接に結びついてきた

2-1-3 海洋国家への変貌と勢力拡大

a かつての避難所はやがて強力な海洋国家へと発展

b アラブ、ジェノバ、オスマン帝国といった勢力との通商競争から貿易市場を守る必要性に迫られ、ヴェネツィアはラグーン内での地位を確固たるものに

 

2-2 ヴェネツィアの都市構造と地理的特徴

2-2-1 水際の都市群

a 常に水害の脅威にさらされるラグーンにおいて、波打ち際という極めて特異な環境に中世の都市域が築かれた

b 北のトルチェッロから南のキオッジャまで、ほぼ全ての小島に独自の集落、町、漁村、そしてムラーノのような職人の村(ムラーノガラス)が存在

2-2-2 中世の世界的首都

a ラグーンの中心に位置するヴェネツィア本体は、中世において世界最大級の首都となった

2-2-3 独自の都市システムと運河網

a 多くの小島が統合、組織化された一つの都市システムへと発展した結果、原始的な地形の面影は消失

b その過程でジュデッカ運河、サン・マルコ運河、大運河(カナル・グランデ)などが形成

c 「リオ(Rio)」と呼ばれる無数の小さな運河網が、水上都市の真の動脈として機能

 

2-3 自然と人間の相互作用による景観形成

2-3-1 ダイナミックな形成プロセス

a ヴェネツィアの景観は、長い年月をかけて人間と自然環境の生態系が相互に影響し合ってきた動的なプロセスの結果

2-3-2 高度な技術と創造性

a ラグーン一帯における水利工事(油圧工学)や建築物の構築には、当時の人類による高度な技術力と創造的なスキルが発揮

2-3-3 蓄積された文化遺産と交流の拠点

a ラグーンには数世紀にわたり独自の文化遺産が蓄積されている

b アルティーノ地区やヴェネツィア本土の遺跡からは、ここが重要な通信や貿易の拠点であったことを示す考古学的な発見

 

2-4 ヴェネツィア:不可分な一体性と芸術的影響力

2-4-1 都市とラグーンの一体性

ヴェネツィア市とそのラグーンは切り離すことのできない一端をなしている

2-4-2 独自の芸術的達成

a 活気に満ちた歴史的中心部を持つヴェネツィア市は、それ自体が唯一無二の芸術的成果

2-4-2 建築と記念碑的芸術への影響

建築や記念碑的芸術の発展において、ヴェネツィアが及ぼしてきた影響は極めて大きい

 

3. ヴェネツィア世界遺産登録の判断基準

 

3-1 登録基準(i):唯一無二の芸術的達成としてのヴェネツィア

3-1-1 「水に浮く」都市の造形美

a 118の小島の上に築かれており、その「重さを感じさせない美しさ」は、ラグーンの水面に浮いているかのような印象

b 景観はカナレット、グアルディ、ターナーといった数多くの画家にインスピレーションを与え、多くの名画を生んだ

3-1-2 比類なき建造物群

a たぐいまれな美しさを持つ記念碑的建造物が並ぶ

Ex)サン・マルコ寺院、ドゥカーレ宮殿、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂

3-1-3 世界屈指の傑作の集積地

a ヴェネツィア共和国の黄金時代を象徴する世界でも類を見ないほど高密度に芸術的傑作が集中

Ex)サン・ザニポーロ教会、スクオーラ・ディ・サン・マルコ、フラリ会堂、

 

3-2 登録基準(ii):建築・芸術の発展への影響

3-2-1 地理的・商業的な影響の広がり

ヴェネツィアは、各地の「商館」や交易を通じて、建築や記念碑のモデル

→ダルマチア沿岸、小アジア、エジプト、イオニア海、ペロポネソス半島、クレタ島、キプロス島

3-2-2 芸術による新たな影響力の行使

a 海上権力を失い始めた後、ヴェネツィアは「画家たちの力」によって異なる形の影響力を発揮

b 空間・光・色彩の捉え方を根本から変え、ヨーロッパ全土の絵画や装飾芸術の発展に決定的な足跡を残した

Ex)ベリーニ、ジョルジョーネ、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ、ティエポロなど

 

3-3 登録基準(iii):東西文化の架け橋としての稀な証拠

3-3-1 東西交流の結節点

a ヴェネツィアは、東洋と西洋、そしてイスラム世界とキリスト教世界の架け橋としての役割を果たしてきた歴史を体現

 

3-4 登録基準(iv):ヴェネツィア共和国の栄華を示す建築群

3-4-1 比類なき建築アンサンブル

a サン・マルコ広場や小広場、周辺の建造物(大聖堂、ドゥカーレ宮殿など)は共和国の輝かしい最盛期を象徴

3-4-2 中世建築の完成形

a 特殊な水上環境に適応しながら構築された「中世建築の完全な形態」を提示

→13世紀の「信徒会」や病院、慈善施設、協同組合などの公共建築、各地区の記念碑

 

3-5 登録基準(v):脆弱な半汽水域の生息地と生態系

3-5-1 環境変化への脆弱性

a ヴェネツィアのラグーンは、地中海地域における「半汽水域(湖沼的環境)の生息地」の顕著な例

→不可逆的な自然・気候変動(水位の上下動)によりその存続が危ぶまれている

3-5-2 生態系の一体性

a ラグーンは島々と同じく重要

b 一貫した生態系において華やかな宮殿や教会、杭打ち建物、漁村、田畑なども同様に保護されるべき

 

3-6 登録基準(vi):自然への勝利と世界発見の象徴

3-6-1 過酷な自然との闘い

a ヴェネツィアは敵対的な自然を克服し、人類が勝利を収めた闘いの象徴

3-6-2 人類の探検史との結びつき

a 小島からラグーン、アドリア海、地中海へと視野を広げた歴史は、マルコ・ポーロ(1254-1324)に代表される「世界の発見」と直結

b ヴェネツィアの商人は、アラブ人に続き、ときにはポルトガル人に先んじて、中国、ベトナム、スマトラ、インド、ペルシャなどを探検し、世界の広がりを明らかにする役割を担った

 

4. 整合性 

 

4-1 歴史的・構造的な一貫性

4-1-1 118の島々とラグーンが織りなす都市構造は、中世・ルネサンス期から現在に至るまで、その物理的・機能的な関係を維持

4-1-2 多様な歴史的層形成(積層)がありながら、個々の建造物は独自の建築言語に基づいた高い審美性と技術を保ち、有機的に統合

4-1-3 複雑な空間を維持し続けることが、ヴェネツィアの文化と文明が持つ高度な創造的スキルの証明

 

5. ヴェネツィアのオーバーツーリズム問題

 

5-1 人口減少

5-1-1 2019年ヴェネツィア本島の人口は約5.2万人

→1951年の17.4万人をピークに減少

5-1-2 ヴェネツィア本島の人口減少の要因

a 街の変化

Ex)建物の老朽化や不便性

→住民のための場所から観光客のための場所へと作り替えられた

b 衛生面の問題

c 高潮

d 交通手段が徒歩と水上の移動手段のみ

e 住宅・不動産価格の高騰

 

5-2 観光客の増加

5-2-1 年間訪問者数

a 2007年は2,160万人だったが、2016年は2,400万人

b 1日あたりの平均は約6.6万人

→毎日住民の数を超える観光客が流入

5-2-2 ヴェネツィア本島では、統計が確認できた2007年の実宿泊客数(宿泊施設を利用した実際の人数)は217万人、延べ宿泊客数(各日の宿泊者数を加算した人数)は588万人であったが、2017年には前者が316万人、後者が786万人と増加

 

5-3 「宿泊をしない短時間滞在者、日帰り観光客」

5-3-1 年間日帰り観光客数

a 2007年の統計に基づくと約1,521万人、年間訪問者の約7割が日帰り観光客

5-3-2 日帰り観光客が都市の持続可能性を脅かす批判の対象

→「混雑」に留まらず、都市のアイデンティティや生態系、住民生活の根幹を揺るがす

5-3-3 観光形態の変質:旅行ガイドブック確認型集団的観光

→特定の有名スポットだけに短時間で殺到する観光スタイルが物理的な限界を引き起こす

a サン・マルコ広場などの狭いエリアに許容人数を遥かに超える団体客が流入し、街全体が大混雑

→物理的要因

b 観光客の集中による弊害

→市内外に散在する美術館や博物館、伝統的な名所旧跡等には目もくれず、文化的な分散が起こらない

∵観光客の関心がSNSやガイドブックの推奨箇所に限定されているため

5-3-4 経済的・社会的な不均衡

a「負のサイクル」が発生

→観光客数は膨大だが、地域経済への還元が極めて低いのが現状

5-3-5 低消費・高コスト

a 日帰り観光客は限られた時間の観光のため島内での宿泊・飲食消費が少なく経済効果が低い

b ゴミ処理費用、名所旧跡や街のインフラの修復、セキュリティ費用などの行政支出(税金投入)のみを増大させている

5-3-6 産業の劣化

a 伝統的な工芸品や地元の食文化が、粗悪な輸入雑貨やファーストフード店に取って代わられ、都市の文化的な質が低下

5-3-7 日帰り観光客に対する対策として入島税導入

a 2024年からハイシーズン(4月〜7月)の対象日に14歳以上の日帰り観光客に対して入島税を徴収

b 時間帯は8:30〜16:00、4日前までの登録で1日5ユーロ、3日前から当日までが1日10ユーロ

 

5-4 クルーズ船問題と環境への脅威

5-4-1 巨大なクルーズ船は、日帰り観光の象徴として住民の激しい反発を起こしている

a 2013年年間寄港数548隻182万人、2015年521隻158万人、2017年466隻143万人と減少傾向ではあるが、日帰り観光客数増加の一因

b 宿泊は船内のため経済的効果がほとんどない

5-4-2 景観と安全の毀損

a 中世の街並みを遮る「高層マンション」のような船体は景観を損なう

b 2019年の衝突事故のように物理的な危険も孕んでいる

→大運河で操舵不能になったクルーズ船が岸壁に接触し、さらに観光船に衝突

5-4-3 生態系へのダメージ

a 巨大船が引き起こす海水流の変化が、干潟の繊細な生態系を破壊

 

5-5 住民生活の空洞化

5-5-1 インフレと不便さにより、住民が街を捨てざるを得ない状況に追い込まれている

5-5-2 生活コストの高騰

a 観光客向けの価格設定により食品や日常生活品が高騰し、不動産価格や地価も上昇

5-5-3 インフラの占有

a 水上バス(ヴァポレット (Vaporetto))などの公共交通機関が観光客で溢れ、住民の移動が困難

b 日常生活用品店が減少し、観光特化型の街へ変貌

 

5-6 背景

5-6-1 高コストな「ヴェネツィア価格」

a 日帰り客の増加背景は島特有の物価の高さ

5-6-2 維持費の特殊性

a 本土とは比較にならないコストがかかる

Ex)海上都市ゆえの上水道の引き込み、人力・水路による物資輸送、歴史的建造物の維持、「高潮(アクア・アルタ)」対策費など

5-6-3 本土への流出

a 物価が本土の1.5〜2倍に達するため、「観光は島内、宿泊・飲食は安価な本土で」という観光客の行動論理が、日帰り化をさらに促進させている

 

6. ヴェネツィアの高潮対策:モーゼ計画

 

6-1 計画の背景

6-1-1 地盤沈下

a 過去100年間で地盤が約25cm低下。

∵自然な圧密沈下(年0.4mm)に加え、地下水くみ上げや地球温暖化による海面上昇

b 高潮(「アックア・アルタ(イタリア語で「高い水」の意)」)で地盤高(80〜100cm)を超える潮位が頻発

∵アフリカからの季節風の吹き寄せが重なったため

→2011〜2016年だけで38回発生し、低地では排水不能による滞水が常態化

 

6-2 目的:「島内の親水性・景観確保」「海上交通の維持」「湾内環境の保全」

6-2-1 構造と建設経緯

a フラップ式ゲート(「MOSE(モーゼ)」)

→3箇所の開口部に計78個の可動式ゲート

b 平常時は海底の基礎ケーソン内に沈んでいて航路を妨げない

6-2-2 設計思想:耐用年数100年

a 地球温暖化を考慮し、ゲート天端高さに70〜80cmの余裕を持たす

b 2003年着工、2018年12月に完成

6-2-3 監視体制

a 高潮予測の5日前から監視を開始し、36時間前から体制を強化

b 潮位110cmを管理基準とするが、それでも全島12%の浸水は防げず一部地区での浸水を容認

c 24時間体制で風・雨量・潮位を計測し、フラップの角度を空気量で調整(常に45度を保持)して制御

d ハイテク制御:各扉体に7個の傾斜計や流量計など、多数のセンサーを配備

6-2-4 メンテナンスサイクル

a 5年ごとに簡易検査・補修

b 15年ごとに歴史的な造船所「アルセナール地区」で本格的なドック補修を実施

c 塗装だけではなく電気防食を採用

∵腐食防止のため

6-2-5 施設内部の構造

a 海底の基礎ケーソン内には空気供給やヒンジ点検のためのメンテナンス用トンネルが2本通っている

∵人間が内部で作業できるようにするため

 

6-3 コスト

6-3-1 総事業費約55億ユーロ日本円で約6,600億円

→世界最大規模の水利工学プロジェクト

6-3-2 維持費は年間約119億円

6-3-3 一回の稼働にかかるコスト

a 一回あたり20万ユーロ、日本円で約3,200万円

b 2020年10月3日の最初の稼働以降2023年11月までに計60回稼働

 

7. 実際に訪れてみて感じたこと

 

7-1 オーバーツーリズム

7-1-1 有名な場所付近の道は人混み

→道の幅は狭い場所が多く、警察官が整備、右側通行に規制するなど雑踏事故対策されていた

a 有名な場所から外れると人は少なくなる

7-1-2 日帰り観光客が多い

a 私自身も日帰りで2日間通えるほど、本島付近(マルゲラ)からのアクセスも良く、宿泊施設がヴェネツィアに比べて低価格で多くあった

→マルゲラは電車またはバスを利用しそれぞれ一本でヴェネツィアに行くことが可能

b ヴェネツィアは交通手段が船のみで、道も石畳や階段が多く大きな荷物があると移動が不便

 

7-2 地盤沈下

7-2-1訪れた際前日の雨の影響で冠水していた

→雨が降るだけで冠水するほど昔に比べて地盤沈下が進んでいることがわかる

a 地盤の弱さが塔の傾きや沈下の進行を進めていた

 

8.考察

 

8-1 登録によるブランドの固定化と観光形態の変質

8-1-1 世界遺産登録(1987年)は、ヴェネツィアに「人類共通の至宝」という絶対的なブランドを付与

→皮肉にも観光の「質の低下」招いている

a 世界遺産という看板が「一度は見なければならない場所」としてリスト化され、文化背景を深く知ろうとしない短時間滞在の「日帰り客」を爆発的に増やした

b SNSやガイドブックが推奨する「映えるスポット(サン・マルコ広場等)」に観光客が一点集中し、街本来の多層的な歴史が消費されない対象になった

 

8-2 持続可能な管理に向けた「経済的・技術的挑戦」

8-2-1 ヴェネツィアの維持には、他の都市とは比較にならない巨額のコストがかかる

a 入場料の導入や大型クルーズ船の規制など、世界でも先駆的なオーバーツーリズム対策を打ち出さざるおえなくなった

b モーゼ計画のような巨大な技術的介入は、遺産を救う一方で、ラグーンの生態系への未知の影響という新たなリスクを生んでいる

c 観光収益をいかにしてこれら「目に見えないインフラ(維持管理費)」へ適正に還元するかが、持続可能性の焦点

 

8-3 観光客の「意識変革」と体験の再定義

8-3-1 有名な場所から外れると人が少ない

a 世界遺産登録は「一点豪華な観光」を推奨していたが、本来の価値は「118の島々とラグーン全体」

b 観光客の行動を「有名スポットのスタンプラリー」から、職人の村(ムラーノ等)や周辺ラグーンの自然を巡る「分散型・スローツーリズム」へといかにシフトさせることが重要

c 訪れる側も「消費する主体」から「遺産を共に守るパートナー」へと意識を改めることが求められる

担当 みさ

 

1 NHK全国学校音楽コンクールの中止

 

1-1 NHK全国学校音楽コンクール(Nコン)の対応

1-1-1 第87回NHK全国学校音楽コンクールの中止

a 2020年5月18日、新型コロナウイルスの影響により、第87回NHK全国学校音楽コンクール(以降Nコン)を中止することを発表した

b これまでに、Nコンの中止は1942年に戦時体制下のために中止されたこと以外なかった

 

1-2 主な理由

1-2-1 NHKの公開資料には、「学校再開ガイドライン」と「新しい生活様式」を心掛けても、コンクールでの集団による合唱は感染拡大のきっかけであると判断されたため

1-2-2 学校生活ガイドラインとは、2020年3月24日に文部科学省から出された、「新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン」のことで、以下の3点を主軸に定められたもの

a 感染源を絶つこと

b 感染経路を絶つこと

c 抵抗力を高めること 

1-2-3 新しい生活様式とは、2020年5月4日に新型コロナウイルス感染症専門家会議から提言されたものを踏まえて、それぞれの日常生活の中で取り組んで欲しいものを提示したもので、以下の4点を主軸に提言されている

a 一人ひとりの基本的感染対策

b 日常生活を営む上での基本的生活様式

c 日常生活の各場面別の生活様式

d 働き方の新しいスタイル

1-2-4 コンクールでの集団による合唱は、十分な間隔をあけたり近距離での発声を避けたりすることに限界があり、感染拡大のきっかけに繋がりかねないとされた

 

1-3 その後の対応

1-3-1 2020年度の課題曲はすでに発表されていたため、同じものを2021年度の課題曲として使用されることになった

1-3-2 代替企画として、学校ごとに課題曲を歌う動画や写真をHP上で募集、公開した「みんなのハモり場かたり場」を実施した

1-3-3 そのほか、小・中・高の最終学年によるリモート合唱企画「Nコン2020スペシャルメドレー」を実施した

a 2020年11月23日に公開生放送として、特集された「Nコン2020みんなのコンサート」内でも紹介された

→ 「Nコン2020みんなのコンサート」は「歌でつながる」をテーマにおくるコンサート番組

→ 感染予防につとめながら真摯に合唱に取り組んできた子どもたちの歌声を紹介

→ 同年の中学校の部課題曲制作のLittle Glee Monster が課題曲を生演奏した

1-3-4 2021年には、感染対策をとった上でコンクールを実施した

Ex)舞台上の歌唱人数の制限(25人まで)、距離の確保、不織布マスクの着用など

a 感染状況から、事前に収録された演奏を会場に流す「音源審査」も取り入れられた

b 全国コンクールは、東京の府中の森芸術劇場で、感染対策徹底のため生放送ではなく、収録で実施された

→ 同年12月25日と12月26日に放送された「Nコン2021 みんなの〝足跡〟」でも演奏が紹介された

1-3-5 2022年も感染対策を徹底しながら、実施され3年ぶりに生放送で、NHKホールで実施された

1-3-6 2023年には、4年ぶりに課題曲の全員合唱が復活、2024年には、舞台上の歌唱人数を2019年と同様に戻した

1-3-7 参加校の減少について

a 2019年度までの参加校は小・中・高の3部門合わせて概ね2000校であった

b 2021年以降、参加校は2000校を超えておらず、完全に戻ったとは言えない

 

2 全日本合唱コンクール全国大会の中止

 

2-1 全日本合唱連盟の対応

2-1-1 第73回全日本合唱コンクール全国大会の中止

a 全日本合唱コンクールは、Nコンとはコンクール実施方法が異なる

→ 全日本合唱連盟は全国大会の中止のみを決定し、県大会や支部大会は、各地域の状況に合わせて各府県合唱連盟や支部で判断することとなった

 

2-2 主な理由

2-2-1 NHKとは異なり、3密(密閉、密集、密接)を避けることができないことに加えて、部活動や一般団体における合唱練習に再開には時間がかかることを理由としている

a 全国大会を実施するに場合には、全国から移動するリスクがあることも理由に含まれている

 

2-3 その後の対応

 

2-3-1 2020年6月2日にオンライン合唱の紹介ウェブサイトを開設した

a 合唱活動に制限がかけられている状況下で、新しい合唱活動の模索をする人を紹介するサイト

b オンラインで合唱をするためのガイドライン集を公開した

Ex)合唱グループ「あされん」のメンバーによるリモート合唱動画の作り方紹介、作曲家の森山至貴がリモート合唱を実施する時の備忘録など

c 様々な団体による声の募集(=歌唱動画や録音)をまとめた

Ex)東京混声合唱団による「Call us」、朝日新聞社による「みんなで「栄冠は君に輝く」」など

d すでに完成された合唱団によるリモート合唱をオンライン合唱博物館としてまとめた(YouTubeのリンクを添付)

Ex)第1回テレフェス作品「群青」、札幌第一高等学校合唱部「いのちの歌 Remote Chorus」など

e 著名な作曲家や声楽家、指揮者によるオンラインの合唱講座を実施

Ex)声楽家、合唱指導者の佐藤拓による発声・声楽オンラインレッスン、相澤直人、佐藤拓、谷郁らによるコーラス・カンパニーオンラインセミナーなど

2-3-2 合唱活動における飛沫実証実験の実施

a 全日本合唱連盟と東京都合唱連盟は、合唱活動における飛沫実証実験を新日本空調株式会社の協力のもと8月23日(日)に実施した(後述)

2-3-3 合唱活動における感染症拡大防止のガイドライン策定

a 2020年6月29日に第1版を掲載、それを同年9月8日に第1.1版として更新した

b 11月26日に、同ガイドラインの第2版を策定した

→ 汎用版を作成し、合唱練習時、合唱公演時に容易に確認できるようにされたものを掲載した

c 2021年7月13日に同ガイドラインの第3版を全国の主要ホール、都道府県教育委員会などに送付した

→ 2022年1月24日には、第3.1版を更新し、変異株に対する対応を踏まえて追加修正を行った

d 2023年3月10日には、第4版として接触感染防止策の一部を削除した

e 利用者等の入場時等の連絡先把握の項目を削除した

f 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の文言が削除された

2-3-4 政府への「要望書」提出

a 11月12日に開催された、政府の第15回新型コロナウイルス感染症対策分科会」資料7「今後のイベント開催制限のあり方について」の「Ⅲ エビデンス等を踏まえた個別イベントの開催のあり方について」において、大声を出すことによる感染リスクとして「合唱」だけが特記されていることへの要望

→ 様々な文化芸術がある中で、複数の人間が発声するという観点で、合唱だけが単に「大声を出す」行為として表現されたのかという疑問

b 2021年1月22日に発表された、「要望書」に関する内閣官房・文化庁との協議内容骨子では、「合唱だけが危険な行為であるというメッセージを発信したものではない」という回答を得た

c 2022年2月4日開催の新型コロナウイルス感染症対策分科会(第 12 回)において、新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言として「オミクロン株の特徴を踏まえた感染防止策について」の中で、提言及び事務連絡と文科大臣コメントは、合唱と管楽器演奏が「感染症対策を講じてもなお感染リスクが高い」活動と断定していることに対しての要望

→ 全日本合唱連盟は、演奏行為における飛沫飛散の実証実験を行った上で、ガイドラインに反映させているにも関わらず、合唱と管楽器演奏が「感染症対策を講じてもなお感染リスクが高い」活動と断定していることへの疑問

d 2022年2月18日に発表された、「要望書」に関する文部科学省・文化庁との協議内容骨子では、また、各学校において、これまでも、十分な距離をとり、方法等を工夫するなどより感染リスクを低減し実施している活動について、一律に控えることを求めるものではありませんという回答を得た

 

2-4 2021年度全日本合唱コンクールについて

2-4-1 2021年度の全日本合唱コンクールは、同年度に限りの特例が採用された

2-4-2 府県大会・支部大会の審査方法

a 府県大会・支部大会が通常の形で開始できない場合には、事前収録された音声・動画による審査で、上部大会へ代表を推薦することができた

2-4-3 出演人数について

a 府県大会・支部大会では、主催者が各大会開催ホールでの「出演上限人数」を事前に設定

→ ホールの制約や、連盟ガイドラインに基づいて各大会ごとに算出

b 各団体の出演希望人数が「出演上限人数」より多く、人数制限がかる団体には以下の特例が適用される

c 出演希望人数を「登録数」として申請

d 「登録数」の範囲内で、曲間(課題曲と自由曲の間、複数の自由曲の間)での出演者の入れ替えを可とする

→ 原則として、「出演上限人数」で演奏することが必須となる

→ 演奏時間規定にかかる曲間の出演者の入れ替えは演奏時間に含まれる

e 全国大会の人数増員については、「登録数」を参加規定第2条2項の「最大申し込み人数」とみなす

2-4-4 来場できない団体の特別救済措置

a 行政から県境を跨ぐ移動の制限を求められた場合、全国大会において録音による参加が認められた

2-4-5 マスクの着用と距離

a 大会時のマスクの着用と距離については、全日本合唱連盟が策定した「合唱活動における新型コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン第3版」に基づいて、各府県連・支部が判断して大会運営の方針を決める

b 全国大会にあたっては、マスク着用の有無にかかわらず、音楽表現によって評価するよう審査員に周知した

2-4-6 2023年3月10日には、政府によって出された「3月13日以降のマスクの着用の考え方の見直し等」に合わせた当面の合唱活動に関する指針を提示した

a 合唱練習時には、「合唱活動ガイドライン」を参照にディスタンスの確保や、マスクの着用も各合唱団・団員で判断するようになった

b 公演時には、必要に応じて「合唱活動ガイドライン」を参照にホール・劇場と連携をはかり、各合唱団の判断で公演を開催するようになった

2-4-7 2023年5月21日には、「合唱活動における新型コロナウイルス感染症拡大防止のガイドライン」は廃止された

 

3 全日本合唱連盟と東京都合唱連盟による飛沫実証実験

 

3-1 2020年8月7日より、全日本合唱連盟と東京都合唱連盟は、合唱活動による飛沫実証実験を新日本空調株式会社の協力と横浜市立大学附属病院感染制御部長加藤英明のもとで実施した

→ 東京都合唱連盟の加盟団体より20名を歌い手とし、新日本空調株式会社クリーンルームで実験をした

3-1-1 参加団体の内訳:

a ジュニア:コール・ジューン・ジュニア

b 高校生:豊島岡女子高等学校、早稲田大学高等学院、豊昭学園

c 大学生:早稲田大学グリークラブ

d 一般A:北区民混声合唱団

e 一般B:あい混声合唱団

f シニア:世田谷区民合唱団

 

3-2 合唱活動における飛沫実証実験の詳細

3-2-1 歌唱曲の選定と歌唱部分

a 一般的な合唱曲の代表として「大地讃頌」を用いた

→ 音量による差異の確認のために、ppからffまでの全てを含むため

→ クリーンルームの持続時間と照らし合わせ、曲の最終部14小節から歌唱した

3-2-2 歌唱と会話の比較

a 同一の詩を朗読することで、歌唱と会話の比較を行った

3-2-3 子音と母音の比較

a 子音での飛沫量を確認するために、同一部分を母音唱で歌唱した

3-2-4 日本語以外の言語との比較

a 日本語以外の言語と比較するために、日本で多く歌われている「第九」のドイツ語で歌唱した(練習番号Mをくりかえす)

3-2-5 実験目的

a 新型コロナウイルス感染症対策について、歌唱を行った際に発生する飛沫について微粒子可視化システムなどを用いて検証する

→ クリーンルームにて、清浄な状態を維持した上で、静穏な状態で、目の保護具を着用し、暗譜で歌唱した

 

3-3 合唱活動における飛沫実証実験の結果

→ 飛沫量は歌唱中の飛沫の累計値、飛距離は歌唱中で最も飛距離の長いものとする

3-3-1 飛沫感染の対策について

a 女性よりも、男性の方が前方に遠方に飛ぶ傾向があった

b 前方1メートル飛ぶもので、5マイクロメートル以上のもの観測されなかった

c 母音唱では、可視化できるものは観測されなかった

d 子音によって、飛沫の発生には差が出ることが観測された

e 朗読では、歌唱と同程度の飛沫が観測された

f ドイツ語の歌唱では、より飛沫が遠方に飛ぶことが観測された

3-3-2 エアロゾル感染の対策について

a飛沫より小さく、1マイクロメートルより小さいもので、空中をある程度の時間浮遊するものをエアロゾルと呼ぶ

b 飛沫と比較すると、口元でもかなりの数(1000個以上)が観測された

c 前方1メートルの距離でも、数個が観測された

d 女性の方が男性と比較して、0.5マイクロメートル以下の粒子量が多い

3-3-3 マスクを着用した歌唱について

a 通常のマスク(不織布、布、ポリエステルのいずれも)は可視化される飛沫が顕著に減少した

b 下部の開放が広いマスクは、下方から飛沫が飛散する様子が観測された

 

4 大学合唱団オンライン合唱祭

 

4-1 開催の背景

4-1-1 大学合唱団の廃部

a コロナ禍による団員の減少により、大学合唱団は廃部を余儀なくされた

Ex)名古屋工業大学合唱団(2024年度末廃部)、中央大学グリークラブ(2023年5月廃部)

b 廃部だけでなく、休止という扱いの大学合唱団も複数生まれた

Ex)甲南大学グリークラブ(2021年休部、2022年に混声合唱団として復活)、法政大学アリオンコール(2022年休止、2024年の東京六大学合唱連盟定期演奏会にてインターカレッジサークルとして復活)

4-1-2 開催目的

a コロナ禍という苦境を乗り越えた大学合唱団の底力を見せつける

b 各団体の演奏をお互いに聞き合うことを通して交流を深め合う

c 大学合唱団が10年後、20年後と存続し、より発展していくための力をつける

d 合唱に触れる機会を設けることで新たに合唱を始めるきっかけを作る

 

4-2 参加規定

4-2-1 参加できるのは大学生を中心とした合唱団

a 大学からの公認や外部指導者の有無は問わない

4-2-2 参加合唱団の責任となるもの

a 撮影、編集、動画のアップロードおよび公開(公開に必要となるYouTubeチャンネルの用意)

b 著作権などの権利処理

4-2-3 そのほかの注意点

a 演奏時間は9分以内

b 動画の概要欄には出展作品であることを記載する

 

4-3 合唱祭実施の流れ

4-3-1 仮エントリーの受付

a 合唱団名、担当者名、活動人数、ホームページ用画像などを記入したもので仮エントリーをする

4-3-2 本エントリーの受付

a 仮エントリー時の情報に加えて、団体紹介や曲紹介、合唱祭参加にあたってのコメントを記入する

b YouTubeで限定公開の設定をした動画のURL、楽曲の曲名、著作権者名、指揮者・伴奏者名などを提出する(複数楽曲の場合は、再生リストを作成した上で、そのURLを提出する)

4-3-3 専用サイトでの動画公開

a 提出された作品URLをGoogleサイトに集約し公開

b Googleフォームを用いて視聴者による投票を実施する

c 参加合唱団による相互の試聴と相互の投票

 

4-4 第一回大学合唱団オンライン合唱祭

4-4-1 概要

a 参加団体数

→26の合唱団が参加した

b 全体講評は合唱指揮者の山脇卓也

4-4-2 受賞団体

a 合唱祭グランプリ:総合点1位団体

→ 上智大学混声合唱団アマデウスコール

b 東北大学賞:視聴者投票1位団体

→ 上智大学混声合唱団アマデウスコール

c フェスティバル賞:参加団体相互投票1位団体

→ 上智大学混声合唱団アマデウスコール

d 特別賞:出展作品において再生回数が最も多い団体

→ 北海道大学合唱団

e 特別賞:視聴者からのコメントを最も多く集めた団体

→ 東北大学男声合唱団

 

4-5 第二回大学合唱団オンライン合唱祭

4-5-1 概要

a 参加団体数

→ 21の合唱団が参加した

b 全体講評は作曲家の信長貴富

4-5−1 受賞団体

a 合唱祭グランプリ:総合点1位団体

→ 早稲田大学コール・フリューゲル

b 東北大学賞:視聴者投票1位団体

→ 早稲田大学コール・フリューゲル

c フェスティバル賞:参加団体相互投票1位団体

→ 東北大学混声合唱団

d 講師特別賞:講評の信長貴富が推薦した団体

→ 早稲田大学女声合唱団、佐賀大学混声合唱団コーロ・カンフォーラ

e カワイ賞:チームワークを発揮した演奏映像を出展し、かつキラリと光る個性や将来性を感じさせる合唱団を、カワイ出版・講師・実行委員会により選出したもの

→ 福島大学混声合唱団、群馬大学混声合唱団、東京大学音楽部合唱団コールアカデミー、三重大学合唱団

4-5-3 第二回より、協賛にカワイ出版が加わった

 

4-6 第三回大学合唱団オンライン合唱祭

4-6-1 概要

a 参加団体数

→ 23の合唱団が参加した

b 全体講評は作曲家の上田真樹

4-6-2 受賞団体

a 2026年3月29日までの実施のため、現時点では未定

4-6-3 第三回より、実施の後援に全日本合唱連盟が加わった

 

担当:かゆ

 

Q&A

 

Q1. 3-4 原材料の高騰で紹介されていた食材の加工国などは日本のマクドナルド限定の話ですか。たとえばアメリカでは他の国で加工がおこなわれていますか

A1.原産国や加工国の情報は出ていなく、公式公開情報としては確認できませんでした。アメリカのマクドナルド公式のビックマックのサイトを見ると、「材料として何が含まれているか」は掲載されていましたが、「材料の原産国」は公開されていません。ここから考えられることは日本では食品表示法に基づき、外食産業でも原産国表示が任意で行われていますが、米国では義務化されておらず、マクドナルドUSAも詳細な原産国一覧は公開していないということです。

 

Q2. 3-5-1の小麦の工業用途とはどのようなものですか。

A2. 小麦は糊化温度が低く、冷却時の年度が高く、加熱温度、時間に対する比較的均一な粘土を保持するという特徴から水産錬製品、繊維用糊として用いられます。水産錬製品は魚の切り身などによってで作られる練り物であり、工業用途はロゴを印刷してイベント会場などで用いるスタッフパス、ゲストパス、入場パス、ワッペンシール、名札シールなどの製造に用いられます。

 

Q3. 3-6-3の付加価値メニューとはどのようなものですか。

A3. 付加価値メニューとは過去の発表で説明した通り、食材やサービスの質、SNS向けの「映えるメニュー」など、食事に付加価値を与えるメニューのことを指します。例を挙げると、マクドナルドのサムライマックです。サムライマックは厚みのあるビーフパティ、和風ソース、食べ応え重視が特徴です。他の低価格路線とは異なり、ボリュームや味の個性を重視した付加価値型商品ということが分かります。

 

Q4. 3-5でほとんどの食材が輸入主体であることで為替相場の変動に影響を受け入れ高騰の要因となりやすいと考察されていますが、これに対して対策を行っている企業はありますか?

A4.はい。例えば、マクドナルドなどの規模の大きい企業は大量調達ができることで調達単価の安定性を高めています。それによって大量仕入れにより為替変動によるコスト変動リスクを小さくしています。供給元を多くすることで為替変動が大きい場合でも、比較的に安い国の調達を増やすことでコストをコントロールし、リスクを分散し、為替変動に対する短期的影響を抑えるということです。

他にも、モスバーガーは国産野菜・国産素材を使用する商品が多く、為替変動による輸入原料コストの影響を減らす一助となるとも考えられます。

 

担当:いあ

 

Q.1 今後ディズニーがリメイク作品を生み出していくにあたって、具体的にどういった観点が重視されていくと考えられていますか。

A.1 まず第一に、多様性と包摂性(ダイバーシティ&インクルージョン)の深化がこれまで以上に重要視されると考えられます。近年の『美女と野獣』(2017)や『アラジン』(2019)では、女性の自立や人種的多様性への配慮が明確に示されましたが、今後はさらにその枠組みが広がり、ジェンダーや人種だけでなく、障がい、宗教、性的指向、さらには社会的格差などを含めた「多様な生き方の尊重」がテーマとして描かれる可能性があります。ディズニーは世界的ブランドであるがゆえに、作品を通じて国際社会が共有する価値観を提示する文化的責任を担っており、その意味で「誰もが共感できる物語」を構築する姿勢が一層求められるでしょう。

第二に、グローバル化への対応と地域文化の尊重という観点も欠かせません。これまでのリメイク作品では、アジア・中東・アフリカなど多様な文化圏を舞台とする物語を、ハリウッド的視点から再解釈する傾向が見られました。しかし今後は、より現地の文化的リアリティを反映した制作体制が重視されると考えられます。具体的には、現地出身の俳優・脚本家・監督の起用や、文化監修を徹底することによって、「西洋中心的な表現」から「多文化共創的な表現」への転換が期待されます。

そして第三に、テクノロジーを活用した新しい物語表現の追求が進むでしょう。AIやCG、VRといった最新技術の発展は、映画のリアリティや没入感を飛躍的に高めています。ディズニーはもともと技術革新を物語表現に結びつけてきた企業であり、今後のリメイクでは単なる「過去の名作の再現」ではなく、「観客が物語世界に参加できる体験型リメイク」など、新しい鑑賞体験の創出が試みられる可能性があります。

 

Q.2 今後まだまだ多様性に対する考え方や社会情勢は大きく変化していくと思いますが、すでにリメイクされた作品がまたその時代の変化とともにリメイクされる可能性はあるのでしょうか。

A.2 今後、社会における多様性への理解や価値観はさらに変化していくと考えられます。そのため、すでにリメイクされたディズニー作品が、再び新しい時代の価値観に合わせてリメイクされる可能性は十分にあるといえます。

ディズニー作品は、単に物語を映像化するだけでなく、「その時代における理想的な価値観」を反映する文化的メッセージの役割を担ってきました。たとえば、『美女と野獣』(1991)は「内面の美」という普遍的テーマを描いた作品でしたが、2017年の実写版では「知的で自立した女性像」や「LGBTQ+の存在への言及」など、現代的な視点が新たに加えられています。つまり、同じ作品であっても、その時代の社会的背景や倫理観に応じて、登場人物の描かれ方や物語の解釈は変化してきたのです。

このように、ディズニーは時代ごとの変化を積極的に取り入れる企業であり、「リメイク」は過去を再現する手段ではなく、「時代を語り直すための装置」として機能しています。したがって、今後、ジェンダー観、人種、宗教、環境問題、テクノロジーと人間の関係など、新しい社会的テーマが浮上するたびに、それらを反映した“次世代リメイク”が制作される可能性は高いでしょう。

言い換えれば、ディズニーのリメイクは一度完結するものではなく、「時代が変わるたびに新しい問いを投げかける文化的プロジェクト」として続いていくと考えられます。リメイクの再リメイクが実現することは、過去の名作が時代を超えて生き続けると同時に、社会がどのように変化してきたかを映し出す“文化的記録”となるのです。

 

Q.3 ディズニーの実写版(リメイク)で失敗したケースはありますか。

映画オリジナル版と、ミュージカル版、映画リメイク版の関係はどのようになっていますか。

A.3 ディズニーの実写版(リメイク)作品の中には、必ずしも成功したとは言えない例も存在します。代表的なものとして、『ムーラン』(2020)、『ダンボ』(2019)、『ピノキオ』(2022)などが挙げられます。これらの作品は高い制作費と技術力を投入しながらも、批評的・商業的に期待された成果を十分に上げることができませんでした。

まず、『ムーラン』(2020)は、アニメ版の人気を受けて制作された大規模リメイクであったが、政治的・文化的な側面から多くの批判を受けた。ロケ地の一部が新疆ウイグル自治区であったことが人権問題と関連づけられ、国際的なボイコット運動が起こるなど、作品外での論争が注目を集めた。また、中国文化を重視したはずの内容が、現地では「表面的な西洋的解釈にとどまっている」と受け止められ、文化的リアリティの欠如が指摘された。結果的に、映画は興行面・評価面の双方で振るわず、ディズニーのグローバル戦略の難しさを象徴する例となりました。

次に、『ダンボ』(2019)はティム・バートン監督によるリメイクとして期待されたが、物語の焦点が人間ドラマに移りすぎたことで、観客が最も感情移入すべき「ダンボ」そのものの描写が弱まり、オリジナル作品の持つ純粋な感動が損なわれたと評価されました。また、『ピノキオ』(2022)も、トム・ハンクス主演、ロバート・ゼメキス監督という豪華な制作陣にもかかわらず、アニメ版をほぼそのまま再現した内容に新鮮さがなく、批評家からは「技術的には精巧だが、物語に魂が感じられない」と指摘されました。

これらの例から浮かび上がるのは、ディズニーがリメイクを行う際に直面する「ノスタルジーと現代性のジレンマ」であります。すなわち、原作への忠実さを重視しすぎると新しい価値を提示できず、逆に現代的価値観を強調しすぎると、長年のファンからの共感を失う危険があるという点です。また、技術的進化に重点を置いた結果、物語の感情的深みが薄れ、「視覚的には美しいが心に残らない」作品になってしまうことも課題として挙げられます。

このように、ディズニーのリメイクにおける失敗例は、単なる制作上の問題ではなく、時代の価値観をどのように再構築するかという文化的挑戦の難しさを示していると考えられます。今後ディズニーがリメイクを制作していくうえでは、映像技術や社会的メッセージの更新だけでなく、オリジナルが持っていた「普遍的な感情」と「物語の核心」をどのように保ちながら再構築できるかが、最も重要な課題となると考えられます。

担当:いあ

 

1. ディズニーとその他のリメイク作品の違い

 

1-1   ブランド戦略・企業的背景の違い

1-1-1ディズニーのリメイク:IP戦略とメディア横断型展開を軸にした総合ブランド戦略

1-1-2 IP(知的財産)戦略

a ディズニーは自社のクラシックアニメを再ブランド化することで、既存IPの価値を現代に再生

1-1-3 メディア横断型展開

a 映画上映

b キャラクターグッズ(ベルのドレス、ぬいぐるみなど)

c テーマパークのショー・アトラクション

d サウンドトラック・音楽配信

e SNSや公式アプリでの情報発信やファンコミュニティの活用

1-1-4 目的は単なる収益化ではなく、ブランド再生・拡張a クラシックアニメIPの再生、ブランド拡張

b グローバルでの文化的影響力を強化

c 長期的なファン層の獲得と、メディアミックスによる収益の最大化

1-1-5 ディズニーのリメイクは 「映画という単体商品」ではなく「IP全体を活用した総合戦略」 の一部として位置づけられる

1-1-6 その他のリメイク:映画単体の興行・映像刷新が中心

1-1-7 企業的戦略の中心

a 作品単体の興行収益や技術的刷新が主目的

b ブランド拡張やメディア横断型展開は限定的

c 映画の完成度、スターキャスト、演出の現代化が中心

1-1-8具体例①:『チャーリーズ・エンジェル』(2019/エリザベス・バンクス)

a 『チャーリーズ・エンジェル』(2019)のオリジナル版

→テレビドラマ(1976年–1981年)

b 女性版として設定やアクションを刷新

c映画公開に伴うグッズ・テーマパーク展開・SNSキャンペーンは限定的

1-1-9 具体例②:『オーシャンズ11』(2001/スティーブン・ソダーバーグ)

a 『オーシャンズ11』(2001)のオリジナル版

→映画(1960/ルイス・マイルストン)

b 観客ターゲットは映画ファン中心

c 社会的・文化的影響も映画内部で完結

d IP活用の多角展開やグッズ展開はほとんどなし

1-1-9 その他のリメイクの特徴

a 映画単体のリメイクとして完成度を重視

b ブランド価値拡張やメディア横断戦略は副次的で限定的

1-1-10 その他のリメイクは「映画作品そのものの魅力」で勝負する戦略であり、IP全体を活用した長期的・多角的戦略はほぼ行われない

 

1-2 リメイクの目的・意図の違い

1-2-1 ディズニーのリメイク:時代の価値観を反映した再語り

a ディズニーのリメイクは社会的・文化的メッセージを伴った「現代の価値観に合わせた再解釈」

←ディズニーが「グローバルブランド」として常に時代に寄り添い、価値観を更新し続けることを使命としているため

1-2-2 社会的意図の明確化

a ディズニーはリメイクを通じて、「現代社会にふさわしい理想像」を提示

b 現代のジェンダー平等やリーダーシップ像を反映

Ex)『美女と野獣』(2017)

→ベルを「読書好きで自立した知的女性」として描き直し、1990年代の“ロマンティックな恋愛”中心から、“自分の人生を選ぶ女性像”へとアップデート

Ex)『アラジン』(2019)

→ジャスミンが“政治的リーダーとしての主体性”を持つようになり、「王子との結婚」よりも「自らの意志で国を導く」ことを選ぶ

1-2-3 グローバルメッセージとしての普遍性

a ディズニーは世界市場を意識

b インクルージョン(多様性の尊重)や自己表現の自由といった普遍的価値を作品に織り込む傾向が強い

Ex)『リトル・マーメイド』(2023)

→黒人俳優ハリー・ベイリーをアリエルに起用し、
「多様な美の基準」を提示する試み

1-2-4 「ブランド継承」としての再解釈

a ディズニーは過去作を自社の“文化資産”として再生させる戦略

b 単なる懐古ではなく、「現代の親子が共に楽しみ、共感できるように」リブランディング

c リメイクには“企業的使命”と“文化的再教育”の側面が共存

1-2-5 その他のリメイク:「娯楽刷新・現代化」が中心

a 多くの場合「ヒット作の再利用」や「新世代への訴求」を目的

b 社会的メッセージよりも、エンタメ性・視覚的インパクト・市場拡大が重視

1-2-6 娯楽性のアップデート

a 視覚表現・テンポ感・音楽などの“表層的な現代化”が中心

b 深い社会批評や文化的意図は薄い

1-2-7 具体例①:『ロミオとジュリエット』(1996/バズ・ラーマン監督)

a 『ロミオとジュリエット』のオリジナル版

→シェイクスピアの戯曲で初演はおおむね1595年前後

b 舞台を現代のアメリカ都市に移し、銃を「剣」として扱うなどスタイリッシュな演出で若者にアピール

c 「若者に古典を楽しませる」ことが目的

1-2-8 話題性としての「リメイク」

a 「多様性」よりも「話題性」を狙ったリブートとしての性格が強い

1-2-9『ゴーストバスターズ』(2016/ポール・フェイグ)a 『ゴーストバスターズ』のオリジナル版

→映画(1984/アイヴァン・ライトマン)

b オール女性キャストでジェンダーを刷新

c 社会的メッセージが明確でなく、「政治的メッセージなのか、単なる話題作りなのか」が曖昧になり、批評的には賛否

d 批評的意図よりも、「コメディとアクションの楽しさ」に重点が置かれた

1-2-10 文化的メッセージの一貫性が弱い

a 監督や制作会社ごとの意図に依存

b ブランドとしての一貫した「価値観提示」は存在しない

→作品ごとにメッセージ性にバラつきが出やすく、時代的・社会的テーマが明確でない

1-2-11 「見た目や構成を現代的に刷新」することで新しい観客を獲得する狙い

a 社会的価値観や文化的批評の更新までは踏み込まない“娯楽志向型リメイク”

 

1-3 文化的・象徴的立場の違い

1-3-1 ディズニーのリメイク:アメリカ文化の象徴としての役割

a ディズニーはアメリカ文化そのものを象徴する「文化ブランド」として世界的影響力を持つ

b ディズニーのリメイク作品は、時代の価値観を世界に提示する文化的メッセージの発信手段

←「映画の更新」にとどまらない

1-3-2 文化資本としての性格

a ディズニー作品は世代や国境を超えて共有される文化的資本

←「子ども時代の記憶」や「夢」「愛」「正義」など普遍的テーマを通じて

b リメイクによって、その資本を現代的価値観に再翻訳

1-3-3 社会的・文化的課題への対応

a 現代社会で重視される「多様性」「ジェンダー平等」「インクルージョン」といった価値を物語やキャラクターに反映

b 映画を通して時代の倫理的・社会的変化を世界に発信する装置となる

Ex)『アラジン』(2019)

→キャストを中東・南アジア系俳優に変更し、ハリウッドにおける多文化共生と表象の公平性を示す

→ジャスミンの「王位継承権」などの設定変更を通じて、女性の自立とリーダーシップを描く

Ex)『美女と野獣』(2017)
→ル・フウをゲイキャラクターとして描くなど、LGBTQ+の可視化を試みた

1-3-4 ディズニーのリメイクは「娯楽+社会的メッセージの発信装置」という二重構造を持つ

1-3-5 その他のリメイク:映画内部の更新・ファン層中心の再生産

a 映画ファンや特定ジャンルの愛好者がターゲット

b その文化的影響は基本的に「映画内部」で完結

1-3-6 目的は技術的・表現的アップデート

a 現代的映像技術や演出で、過去作品を新しい形で楽しませる

b ノスタルジーと娯楽性の再生が中心

←社会的課題や価値観の刷新よりも

1-3-7 文化的象徴性の限定性

a 作品自体が社会的・政治的象徴として機能することは少ない

b ファン文化(リメイク元へのリスペクトや考察)に留まる

1-3-8 具体例①:『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017/アンディ・ムスキエティ)

a 『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のオリジナル版

→テレビミニシリーズ版(1990)

b 映像技術・演出の向上により恐怖演出を刷新

c 物語は原作に忠実

d 社会的メッセージ性よりもホラー体験のアップデートに重点

1-3-9 具体例②:『ジュラシック・ワールド』(2015〜/コリン・トレボロウ)

a 『ジュラシック・ワールド』のオリジナル版

→映画(1993/スティーブン・スピルバーグ)

b 恐竜のCG技術やアクション性を強化し、シリーズのブランド価値を継続

c 科学技術への批判や倫理のテーマは描かれる

d しかし社会的価値観の改革や文化的象徴性は副次的

1-3-10 これらのリメイクは「映画文化の内部更新」に留まり、社会的メッセージの発信力は限定的

 

2. ディズニーリメイクのこれから

 

2-1 社会的視点からの考察・展望:多様性とインクルージョンの深化

2-1-1 多様性とインクルージョンの深化

a 現代社会では「多様性を認めること」が大事な価値

b いろんな違いを尊重し合う社会を作ろうという流れ

←人種や性別だけでなく、LGBTQ+、宗教、文化的背景など

2-1-2 ディズニーは“夢”や“理想”を描く企業

a 社会の価値観の変化を作品の中に反映させてきた

2-1-3 具体例①『リトル・マーメイド(2023)』

a 主人公アリエルに黒人女優のハリー・ベイリーを起用

b 「誰でもプリンセスになれる」「外見に関係なく夢を追える」というメッセージ

2-1-4 具体例②『美女と野獣(2017)』

a リメイク版ではベルをより知的で自立した女性として描く

b 原作では“恋愛中心”の物語

c リメイクでは“自分の意思で行動する女性”としての側面が強調

2-1-5 具体例③『アラジン(2019)』

a ジャスミンが“王女として国を導く”存在に変化

b 女性のリーダーシップを象徴するキャラクターになった

2-1-6 ディズニーはリメイクを通じて現代社会が理想とする人物像や価値観を反映

2-1-7 今後の展望

a 考え方・生き方・価値観の多様性がより重視されていくと考えられる

←「見た目の多様性」だけでなく

Ex)「どう生きたいか」「どんな幸せを選ぶか」といった、個人の生き方の違いを認めるようなストーリー

b “多様な人が共に生きる社会”という理想を映す文化的メディアへと進化していくという見方ができる

 

2-2 社会的視点からの考察・展望:観客参加型・共感型の映画制作へ

2-2-1 観客参加型・共感型の映画制作へ

a 昔の映画は「作り手が作って、観客が見る」という一方向の関係

b 現在はSNSの普及で、観客が感想や意見をすぐに世界中に発信

c 観客と一緒に作品を作っていくような時代になってきた

←映画会社も観客の声を無視できないため

d ディズニーも、こうした社会の変化に合わせて方針を変化

2-2-2 具体例①:『美女と野獣(2017)』

a 初めてゲイのキャラクターを描いた

b 賛否があったが、その反応を「社会との対話」として受け止めた

c 多様性を尊重する姿勢を示した

2-2-3 具体例②:『リトル・マーメイド(2023)』

a SNSでキャスティングに関する議論が大きく広がった

b ディズニーは「なぜ多様な表現が必要なのか」をメッセージとして発信

c 議論に対して一方的に否定しなかった

2-2-4 ディズニーは社会の反応を積極的に受け取り、作品に反映

a リメイク映画は企業が一方的に「これが正しい」と伝えるものではない

b 観客とのコミュニケーションを通じて“時代の価値観”を形にしていく場

 

2-3 文化的視点からの考察・展望;“懐かしさ”と“再解釈”の共存

2-3-1 ディズニーのリメイク

a 「懐かしさ」と「再解釈」を両立させている

←「過去の名作をもう一度見せる」だけではない

b 観客はアニメ版を通じてその作品に思い出や感情を持っている

c この“懐かしさ”がリメイクを見る動機の一つとなる

d 同時に現代の観客は、過去の価値観をそのまま受け入れない批判的視点も持つ

e ただ昔のものを再現するだけでは、現代の観客には“古い価値観”に見えてしまう

→ディズニーは、「オリジナルの魅力を尊重しつつ、現代社会の価値観に合わせて再構築する」手法

→同じ物語を新しい時代の文脈に“翻訳し直す”ことで、社会の変化を映し出す

2-3-2 具体例①『美女と野獣(2017)』

a リメイク版ではガストンの仲間・ル・フウが“同性に恋心を抱くキャラクター”として描かれる

b オリジナル版では全く触れられなかった設定

c 現代社会で進む性的多様性の尊重を反映

d 「ディズニー初のゲイキャラクター」として注目

e LGBTQ+への理解を広めるきっかけ

f 現代の“自分らしさを大切にする文化”を反映

g 「他人と違うことを誇りに思う」というメッセージ

2-3-3 具体例②『アラジン(2019)』

a ジーニーの描写と人間味の強調

b リメイク版ではジーニーは単なる“魔法の精”ではなく、感情や友情を持つ存在として描かれる

c 最後には人間になるという展開

→「自由とは何か」「自分の人生を自分で選ぶ」というテーマにつながる

d 現代社会で重視される“自己決定”や“他者との共感”の価値を象徴

e ジーニーは“自由を求める人間の姿”のメタファーとして機能

2-3-4 ディズニーリメイクは「古い物語を現代の価値観で語り直す文化的な営み」

→同じ物語でも「時代が違えば見え方が変わる」という文化の動きを確認できる

2-3-5 ディズニーリメイクは、時代の社会的価値観を映す鏡として機能

a 1990年代のオリジナル=家族・愛・夢の普遍的テーマ

b 2010年代のリメイク=多様性・主体性・自分らしさ

2-3-6 ディズニーリメイクを見ることで、「時代がどんな価値を重んじていたか」を知ることができる

a ディズニーは、作品を通じて社会の“理想像”を提示する文化的記録媒体として進化していくと考えられる

 

2-4 文化的視点からの考察・展望;グローバル化とローカル文化の融合

2-4-1 ディズニー映画

a 世界中で上映されるグローバルな文化商品

→異なる文化圏の観客が“自分ごと”として共感できるようにする必要がある

b 過去のディズニー作品には「西洋中心的視点」から他文化を描く傾向があった

2-4-2『アラジン(1992)』

a 「中東=砂漠・異国・暴力的」といったステレオタイプが問題視

→“オリエンタリズム”批判

2-4-3 具体例①『アラジン(2019)』

a 主演に中東・南アジア系の俳優を起用

Ex)メナ・マスード、ナオミ・スコット

b 音楽にはアラビア音楽のリズムを取り入れつつ、現代的なポップ要素を融合

c 衣装・建築・風習も、中東文化をリスペクトしたデザインに変更

2-4-4 リメイクによって“リアルで尊重された文化”として描き直している

a アメリカが作る「他者の物語」から、“多文化が協力して創る物語”へと変化

→ディズニーが文化の支配者から、文化の共創者へと転換した象徴的な作品

2-4-5 具体例②『美女と野獣(2017)』

a 原作がフランスの物語であることを意識し、衣装・建築・音楽にフランス文化の要素を再現

b セクシュアリティの多様性を世界的な文脈で提示

Ex)ル・フウがゲイとして描かれたこと

e フランス文化の伝統を尊重しながら、現代の多様性を組み込む

→“ローカル文化の継承”と“グローバル価値の共有”を両立させた作品

2-4-6 これからのディズニーは、「多文化が共に新しい物語を作る場」へと変化

←「アメリカが世界に文化を発信する企業」から

2-4-7 グローバル化とは

a 異なる文化が交わり、互いを尊重して新しい形を生み出すこと

b 文化を均一にすることではない

c その意味で、ディズニーリメイクは現代社会の“文化的多様性の実験場”になりつつある

←単なる娯楽ではなく

 

3. まとめ

 

3-1 ディズニーリメイクの特徴

3-1-1 IP戦略とメディア横断型展開を軸にした総合ブランド戦略

3-1-2 時代の価値観を反映した再語り

3-1-3 アメリカ文化の象徴としての役割

 

3-2 ディズニーリメイクのこれから

3-2-1 多様性とインクルージョンの深化

a “多様な人が共に生きる社会”という理想を映す文化的メディアへと進化していくという見方ができる

3-2-2 観客参加型・共感型の映画制作へ

a 観客とのコミュニケーションを通じて“時代の価値観”を形にしていく場となる

3-2-3 “懐かしさ”と“再解釈”の共存

a ディズニーは、作品を通じて社会の“理想像”を提示する文化的記録媒体として進化していくと考えられる

3-2-4 グローバル化とローカル文化の融合

a ディズニーリメイクは現代社会の“文化的多様性の実験場”になっていくと考えられる

担当:いあ

 

Q.1 アニメ版にはなかった新しい衣装やキャラクターデザインのグッズの再販が可能とありましたが、実写版の映画に関してグッズが販売されているイメージが正直あまりないです。実際にどのようなものが新しいグッズとして販売されているのでしょうか。

A.1 実写版の人がモチーフになったグッズは多くありませんが、実写版のロゴがデザインされたクリアファイルやマグカップ、タオルなどが販売されています。また、ステッカーや付箋などは、実写版のアラジンやジャスミンなどが印刷されたデザインのものが販売されています。

さらに、実写版ならではの“役者が着ているもの”“撮影・映画内で使われている質感”を再現した衣装・アクセサリーが出ています。例えば、『美女と野獣』の仮装コスチュームでは「ダンスシーンのベル」ドレスを再現されており、実際に着てなりきることができます。

 

Q.2 マーベルやピクサー、スター・ウォーズなどでアニメからアニメへのリメイクやアニメから実写へのリメイクはありますか。

A.2 マーベルでは、過去のアニメシリーズをリバイバルする例があります。たとえば1992~1997年に放送された『X‑Men: The Animated Series』は、2023年に『X‑Men ’97』として続編・リメイクされ、アニメの世界観やキャラクターを現代的に更新しています。ただし、マーベル作品においてアニメ映画を丸ごと実写映画にリメイクする例は現状ほとんどありません。

ピクサーでは、アニメ映画から実写へのリメイクは原則として行われていません。ピクサーの制作陣は、作品のキャラクターや世界観がアニメーション特有の表現に依存していることから、「実写化は適さない」と明言しており、アニメからアニメのリメイクも限定的です。ピクサーは主にオリジナル作品や続編の形でアニメーションを展開しています。

スター・ウォーズの場合は少し事情が異なります。2008年の『クローン・ウォーズ』や2014~2018年の『反乱者たち』などのアニメシリーズで登場したキャラクターや設定が、後の実写ドラマシリーズ(『マンダロリアン』『アソーカ』など)に導入される例が増えています。アソーカ・タノやサビーヌ・レン、ヘラ・シンドゥーラなどは、アニメで人気を得たキャラクターがそのまま実写に登場するケースです。ただし、スター・ウォーズでも「アニメ映画を丸ごと実写映画にリメイクした」例は少なく、基本的にはアニメで築かれた世界観やキャラクターを実写で拡張・立体化する形が中心です。

総じて、これらのブランドでは「アニメ→アニメのリメイク」は存在しますが、アニメ→実写のリメイクはディズニーの実写版アラジンや美女と野獣のように大規模に行われることは少なく、実写化はあくまでキャラクターや世界観の拡張やシリーズ化のための戦略として行われています。

 

Q.3 映画オリジナル版と、ミュージカル版、映画リメイク版の関係はどのようになっていますか。

A.3 『アラジン』を例に挙げて回答します。まず、オリジナルのアニメ映画(1992年)は、原作「アラビアンナイト」をベースにした軽快な冒険物語として制作されました。ジャスミンは王女として登場しますが、やや受動的で、物語の主体はアラジンに置かれています。ジーニーのコミカルな描写や魔法の冒険など、娯楽性や音楽性が重視されており、1990年代当時のアメリカでは、女性像は比較的受動的で、異文化描写も欧米視点による誇張やステレオタイプが目立ちました。映画は主に家族向け娯楽と関連商品の収益化を目的としていました。

2014年に初演されたミュージカル版は、オリジナルのストーリーを基盤にしつつ、舞台演出向けにキャラクターや物語を拡張しました。ジャスミンの自立心や政治的意識が強調され、アラジンの心理描写も深められています。魔法の絨毯やジーニーの魔法など、舞台技術を駆使した演出により、観客は物語により没入できるようになりました。社会的背景としては、2010年代に高まった多様性や主体性への意識が反映され、女性キャラクターの主体性や観客参加型の演出が導入されています。

そして、2019年の実写映画リメイク版は、オリジナル映画とミュージカル版の要素を融合させつつ、現代的な社会意識を反映しています。ジャスミンは単なる恋愛の対象ではなく、国の未来を自らの意思で切り開こうとする主体的なキャラクターとして描かれ、ル・フウの性的指向がほのめかされるなど、多様性表現も導入されています。実写化により、衣装や舞台美術の質感、VFXによる魔法表現がリアルに再現され、観客に臨場感を提供しています。背景には、SNS時代の観客が声を発信し、多様性や文化的インクルージョンへの配慮が求められる社会的状況や、グローバル市場に向けたブランド戦略の意図も存在します。

このミュージカル版の影響は、2019年の実写映画リメイク版にも色濃く反映されています。

まず、キャラクター描写の面では、ミュージカル版で強調されたジャスミンの主体性や政治的意識が、実写版でも取り入れられています。ジャスミンは単に恋愛の対象として描かれるのではなく、自らの意思で国の未来を切り開こうとする主体的なキャラクターとして描写され、物語の中心的存在としての役割が強化されました。また、アラジンの内面の葛藤や成長もミュージカル版で丁寧に描かれた要素が反映され、実写版では王子としての立場や自分の正体への迷いなどがより明確に描かれています。

さらに、音楽や演出面でもミュージカル版の影響が見られます。舞台用に追加された楽曲やアレンジの一部が実写版に取り入れられ、物語の感情表現やキャラクターの内面描写を補強しています。加えて、舞台での魔法の表現や絨毯の演出などが実写映画ではVFXやCG技術を用いて映像化され、観客により立体的でリアルな体験を提供しています。

担当:いあ

 

1. ディズニーにおける映画『アラジン』と映画『美女と野獣』

1-1    オリジナル版

←アニメーション版

→両作品1990年代に制作

1-1-1  映画『アラジン』

a 公開:1992年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ

d 製作費:約2,800万ドル(約28億円)

e 世界興行収入:約5億4,050万ドル

1-1-2 映画『美女と野獣』

a 公開:1991年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ゲーリー・トゥルースデイル、カーク・ワイ

d 製作費:約2,000万ドル(約20億円)

e 世界興行収入:約4億2,000万ドル

1-2 リメイク版

←実写版

→両作品2010年代に制作

1-2-1 映画『アラジン』

a 公開:2019年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ガイ・リッチー

d 製作費:約1億8,300万ドル(約183億円)

e 世界興行収入:約10億5,069万ドル

1-2-2 映画『美女と野獣』

a 公開:2017年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ビル・コンドン

d 製作費:約1億6,000万ドル(約160億円)

e 世界興行収入:約12億6,000万ドル

←大ヒットを記録し、ディズニーの実写リメイク作品の中でも高い収益性

 

2. ディズニーでアニメーションから実写化した背景

2-1 背景

2-1-1 経済的理由:確実なヒットの見込み

2-1-2 技術的理由:VFXとCGの進化

2-1-3 文化的・社会的理由:多様性・インクルージョンの反映

2-1-4 マーケティング戦略・ブランド再活性化

2-2 経済的理由:確実なヒットの見込み

2-2-1 ①ブランド力の活用とリスクの低減

a ディズニーにとって、アニメ版はすでに“世界的に認知されたブランド資産”

2-2-2 すでに人気と信頼を得ている作品を実写化するメリット

←投資リスクの低減効果

a 興行収入の見通しを立てやすい

b 広告宣伝のコストが比較的少なくて済む

c ファン層の支持を確実に得られる

2-2-3 ディズニーにおける2000年代後半以降の「ブランド再活性化戦略」

←過去の名作を再び現在の市場価値に変える方法として「実写化」を活用

a 2010年の『アリス・イン・ワンダーランド』(ティム・バートン監督)が世界興行収入10億ドル超を記録

←実写・リメイク版

→この作品以降、実写化がビジネスモデルとして確立

b 『アリス・イン・ワンダーランド』のオリジナル版

c アニメーション

d 公開:1865年

2-2-4 ②興行的成功の実績

a アニメ版をベースにした実写映画は高い収益を上げる

b ディズニーにとって確実に利益を生む“安全投資”

2-2-5 「過去の名作の実写化」=新しい作品群を支える資金源としても機能

a マーベルやスター・ウォーズ、ピクサーといった他ブランドの新作開発にも再投資

b マーベルやスター・ウォーズ、ピクサー:ディズニー傘下(=ディズニーが所有している)有名ブランド/スタジオ

2-2-5 ③関連商品の二次収益(メディア・ミックス)

2-2-6 ディズニーの収益は映画チケットだけでなく、二次・三次的ビジネスに広がる

a 玩具・ぬいぐるみ・コスチュームなどのキャラクター商品

b サウンドトラックや主題歌

Ex)『美女と野獣』のセリーヌ・ディオン版、『アラジン』の「A Whole New World」リメイク

c 東京ディズニーリゾートなどのテーマパークでのショーやイベント

d Disney+での配信による長期的収益

e 舞台化(ブロードウェイ・ミュージカル)

2-2-7 実写化は「懐かしさによる再ブーム」と「新しい商品展開」を同時に生み出す

a アニメ版にはなかった新しい衣装やキャラクターデザインを導入することで、グッズの再販が可能

b 極めて効率的な商業戦略

2-2-8 ④世代を超えたマーケティング

a アニメ版を子ども時代に観た世代が、現在は親や社会人

←ノスタルジー効果

b この効果を利用して、親世代が自分の子どもと一緒に観る“家族向けイベント映画”としてマーケティング

c 「親子二世代での観客層拡大」が実現

d チケット販売・関連グッズ消費が増加

2-3 技術的理由:VFXとCGの進化

2-3-1 ①1990年代当時の限界

a 実写とコンピューター技術を組み合わせる手法(VFX:視覚効果)はまだ発展途上

←『美女と野獣』(1991)や『アラジン』(1992)の制作当時

b 1991年の『ターミネーター2』や1993年の『ジュラシック・パーク』でようやく本格的なCG表現が登場

c 1990年代前半では、人間と完全なCGキャラクターを自然に同一画面に登場させることはほぼ不可能

→『アラジン』の「ジーニー」や「魔法の絨毯」、『美女と野獣』の「野獣」や「喋る家具たち」をリアルに表現することは技術的にできなかった

2-3-2 ②2010年代のVFXとCG技術の進化

a ディズニーはピクサーやマーベル、ルーカスフィルムなど最新CG技術を持つスタジオを傘下に収める

←2000年代後半から2010年代

2-3-3 ディズニーは世界最高レベルの映像制作環境を手に入れた

a フォトリアルCG(実写のように見えるCG)

←現実の質感や光の反射、動物の毛並みなどを本物のように再現できる技術

b 『美女と野獣』(2017)の「野獣」の顔の筋肉や表情

→実写俳優の動きをモーションキャプチャで取り込み、CGでリアルな毛並みや光沢を再現

c 実写とCGの融合

←背景や小道具の多くがCGで作られていても、違和感なく実写映像に溶け込ませることが可能

←照明やカメラワークを工夫することで

Ex)『アラジン』(2019)の「魔法の絨毯」「ジーニー」「洞窟」「アグラバーの街並み」などがCG合成によって作られている

d キャラクターの感情表現の向上

←CGによる表情の細やかな動きにより、アニメ以上に「生きているようなリアリティ」を演出可能に

←(eye trackingやface rigging技術)

e eye tracking技術:人の「視線の動き」や「注視している場所」を検出・記録する技術

f face rigging技術:キャラクターの顔を動かすための“骨組み”を作る技術

Ex)「ジーニー」(ウィル・スミス)の俳優本人の表情をベースにCG化

→アニメのコミカルさと実写の人間味を融合

2-3-4 ③“アニメではできなかったリアルな体験”の創出

a アニメでは不可能だった「リアルな質感と臨場感」を提供可能に

→実写化は単なる「リメイク」ではなく、「技術によって体験の質を再構築する“再創造”」でもある

2-3-5 リアルな質感と臨場感の具体例

a 魔法

←アニメ版:カラフルな2Dエフェクト

→リメイク版:光の反射・煙・粒子まで再現されたリアルな魔法

b キャラクター

←アニメ版:デフォルメされた表情

→リメイク版:実写俳優+CGでリアルな感情や存在感

c 空間

←アニメ版:平面的な背景

→リメイク版:カメラが360度動く立体的な世界

d 音楽シーン

←アニメ版:絵本のような美しさ

→リメイク版:ミュージカル映画のようなスケール感

2-3-6 ④ディズニーにとっての意義

a ディズニーは「魔法を現実に見せる」というブランド理念を持つ

b 観客は「本当に魔法の世界にいる」ような感覚を味わえる

←最新VFXやCGを駆使することで

c ディズニーの“夢と魔法の王国”という企業イメージを強化することにもつながる

2-4 文化的・社会的理由:多様性・インクルージョンの反映

2-4-1 ①背景:1990年代ディズニーアニメへの批判

a 1990年代はディズニー・ルネサンスと呼ばれる黄金期

b 同時に作品中の文化的ステレオタイプやジェンダー観へ批判

2-4-2 ②実写版による「現代的アップデート」

a 実写化によって現代的な価値観に沿うように物語やキャラクターを再構築

←ディズニーは上記のような批判を踏まえて

2-4-3 ③グローバル化と文化的感受性

a 世界中で市場を拡大する中で、「文化的多様性」を尊重する姿勢が欠かせなくなった

←アメリカだけでなく、中東・アジア・ヨーロッパなど多文化市場に向けた発信を行うため

2-4-3 グローバル時代のリメイク戦略

a 文化的誤解を避ける描写

b 登場人物の背景に多様な文化的ルーツを持たせる

2-4-4 ④ディズニーの社会的メッセージ

a 実写化作品は、「ディズニー自身の価値観の進化」を示す試み

2-4-5 過去の“夢とロマンスの物語”を、“多様性・自立・平等を肯定する物語”へとアップデートする

a 若い世代(Z世代など)の価値観に共感されるブランドイメージを強化

b 社会的に責任ある企業としての立場を確立

2-5 マーケティング戦略・ブランド再活性化

2-5-1 ①新旧ファンを同時に取り込む「二層マーケティング」

a 実写化によって、ディズニーは2つの世代を同時に狙うマーケティング効果を得る

b 実写化は「親がかつて観た名作を、今度は子どもと一緒に楽しむ」という世代を超えたブランド体験を生み出す仕掛け

2-5-2 かつてのアニメ世代(30〜40代)

a アプローチ:子どもの頃に観た名作を「実写で再体験」できるノスタルジー要素

b 効果:家族連れで映画館へ(=親子消費)

2-5-3 新しい世代(Z世代・子ども)

a アプローチ:現代的な価値観・映像技術・音楽を通して「初めてのアラジン/美女と野獣」を楽しむ

b 効果:若年層へのブランド継承

2-5-4 ②ブランド再活性化

a ディズニーは90年以上の歴史を持つ老舗ブランド

b 「古い企業」ではなく“常に進化するブランド”としての印象を保つことが重要

c 実写リメイクは、そのための「ブランド再活性化」戦略の一環

2-5-5 目的

a 過去の資産(人気キャラクター・名曲・物語)を“現代仕様”で再解釈

b 時代の変化に合わせた価値観(多様性・自立・共生)を取り込み、ブランドを時代とともに成長させる

c 「ディズニー=常に新しい魔法を生み出す存在」という企業イメージを強化

2-5-6 結果

a “過去のアニメ版人気”と“新しい実写の魅力”の相乗効果による大成功

Ex)『美女と野獣』(2017)は全世界で12億ドル超の興行収入を記録

2-5-7 ③マルチメディア展開による“シナジー効果”

a シナジー効果:2つ以上のものを組み合わせたときに、単独よりも大きな効果が生まれること

b ディズニーの強みは総合エンターテインメント企業としての広がり

2-5-8 他事業と連動した収益源

a 音楽(サウンドトラック・ライブ)

b テーマパーク・ミュージカル

c 商品・ファッション

2-5-9 ④リメイクの“低リスク・高リターン”構造

a 既存の物語・音楽・キャラクターを再利用できるため、脚本開発リスクが低い

b すでに世界的知名度があるため、宣伝コストを抑えても観客動員が期待できる

c 成功すれば、次作への需要を喚起

2-5-10 ⑤「体験型エンターテインメント」への進化

a 21世紀のディズニーは、「映画を観るだけでなく“世界観を体験する”」ことを重視

b 実写化作品は、映像のリアルさによって観客が“作品世界に入り込んだ感覚”を得やすい

c テーマパーク・配信・グッズと連動して、「ディズニー体験」を拡張する役割を果たす

 

3. リメイク版制作時のキャラクターの内面描写とリアリズム志向による対応

3-1 アラジン(『アラジン』)の内面描写

3-1-1 オリジナル版

a 「陽気で勇敢な青年」というイメージが中心

3-1-2 リメイク版

a “貧困から抜け出したいが、自分を偽りたくない”という道徳的ジレンマを描く

→現代の若者が感じる「自分らしさ」と「成功」の間の葛藤に通じる

b ジャスミンとの関係性でも、「王女の自由を尊重したい」という思いが強調

←キャラクターの心理的深みが増加

3-2 ジャスミン(『アラジン』)の内面描写

3-2-1 オリジナル版

a 「反抗的で自由を求める王女」という側面が中心

3-2-2 リメイク版

a 政治的な意思とリーダーとしての自覚も描写

Ex)国の政策や女性の権利について語る場面が追加

→現代社会の「女性のエンパワーメント」への意識の反映

3-3 ベル(『美女と野獣』)の内面描写

3-3-1 オリジナル版

a 知的で好奇心旺盛

3-3-2 リメイク版

a 学問への情熱や家族への思いなど心理描写が強化

b 村の人々との関わりを通して、孤独感や理解されない悩みも描かれる

3-4 野獣(『美女と野獣』)の内面描写

3-4-1 オリジナル版

a 怒りっぽく誇り高い王子

3-4-2 リメイク版

a キャラクターの成長や変化がよりリアルに描かれる

b 過去の傲慢さを悔い、愛を学ぶ人間的成長が描かれる

→「人は変われる」というテーマがリアルな心理過程として表現

3-5 『アラジン』におけるエアリズム

3-5-1 魔法の絨毯に乗るシーン

aアラジンとジャスミンの表情が細かく変化

b 驚き、喜び、緊張

3-5-2 ジャスミンの独白シーン

a 国を良くしたいという内面の葛藤が視覚的・台詞で表現

3-6 『美女と野獣』におけるエアリズム

3-6-1 野獣がベルに本を手渡すシーン

a 指先の微妙な震えや視線の動きで内面の緊張を表現

3-6-2 ダンスシーン

a 衣装の布の重みや光の反射をリアルに描き、感情の説得力を増幅

 

4.キャラクターの内面描写とリアリズム志向の背景

4-1 勧善懲悪から心理的リアリズムへ

4-1-1 1990年代までのディズニー作品

a 明快な価値観と物語構造

Ex)善(正義・勇気・愛)と悪(欲望・傲慢・支配)
という二項対立的構造で物語が展開

b 観客はその単純明快さに安心感やカタルシスを感じる

c カタルシス:心の中に溜まっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されること

4-1-2 21世紀からの社会の価値観が多様化・複雑化

a 観客の関心も、心理的リアリズム(現実味のある心の描写)へと移行

Ex)「正しいか間違っているか」から、なぜそのように行動したのか、どのような背景があるのか

4-1-3 SNSが普及した現在

a 人々は他者の感情や意見を直接目にする

b 「善悪では割り切れない人間の多面性」への理解や共感が深まる

4-2 SNS時代における「共感」と「自己投影」

4-2-1 Z世代やミレニアル世代は自分を重ね合わせる(自己投影)傾向が強い

a SNS上での「共感」や「同調」が社会的価値を持つようになったため

b キャラクターにも「現実の自分と通じるリアリティ」を求める

4-2-2 重要視されるようになったこと

a 感情表現の細やかさ

b 矛盾や迷いを含んだ人間らしさ

c 社会問題やジェンダー意識との関わり

4-3 社会的リアリズムとの接続

4-3-1 社会的エアリズムを重視

a 社会的リアリズム:現実社会の状況や問題を反映すること

b 現代社会の価値観に即したリアルさを与える

→現代社会を生きる人間と地続きの存在として観客に受け止められるようになる

 

5. リメイク版制作時のSNS時代の価値観による対応

5-1 『アラジン』(2019)のジャスミン

5-1-1 社会的責任やリーダーシップを担う女性像に変化

5-1-2 ジャスミンのソロ曲「Speechless」

a “私は沈黙しない(I won’t be silenced)”という歌詞

b SNS時代の「声を上げる勇気」「自己表現の自由」を象徴

c SNS世代の女性たちが感じる「黙って従うのではなく、自分の考えを社会に示すべきだ」という意識と強く共鳴

5-2 『美女と野獣』(2017)のベル

5-2-1 村社会の常識にとらわれない自立した女性に変化

5-2-2 社会の偏見に抗いながら「自分の生き方を選ぶ」ことの意義を体現

→SNS時代の「自己表現」や「個の尊重」という価値観を象徴するキャラクター変化

 

6. SNS時代の価値観の背景

6-1 21世紀のTwitter(現X)やInstagram、TikTokなどのSNSの普及

6-1-1 個人が自分の意見・感情・価値観を誰でも世界に向けて発信できる時代

6-1-2 若年層の間での高まり

a 「#MeToo」や「#BlackLivesMatter」などの社会運動への共感

b ジェンダー平等、文化的多様性、人権意識などへの関心

→“自分の声で社会を変える”という意識が広く共有

6-2 映画や物語にも「自分の意見を持ち、行動するキャラクター」が求められる

←自分の信念で社会に関わる人物像が現代の観客に共感

担当:いあ

 

Q.1 ル・フウがゲイキャラクターとして描かれたときの、反応はどのようなものでしたか。

A.1 実写版『美女と野獣』(2017年)の「ル・フウ」がゲイキャラクターとして描かれることについては、アメリカと日本でかなり異なる反応が起きました。

まず、アメリカの反応について、若い世代やLGBTQ+コミュニティからは、「初めてディズニー・メジャー作品で明確ではないにせよゲイのキャラクターを配置した意義がある」と評価されることが多くありました。少しの描写(ル・フウが別の男性と踊るシーンなど)を“ステップ”または“象徴的なジェスチャー”と捉える声がありました。映画批評家の中にも、「これは完全なカミングアウト・ストーリーではないが、マイノリティ表現として進歩だ」と見られる声がありました。このような肯定的な意見がある一方で、保守派や宗教団体からは、「子ども映画に不適切」などの批判があり、一部の国(または地域)では上映が規制されたり、ピーク時に宣伝でその描写を隠そうとする動きもありました。また、LGBTQ+支持者の中でも「表現が曖昧で物足りない」「キャラクターのセリフや動きだけでゲイとするのは不十分」という声が出ました。ジョシュ・ギャッド(ル・フウ役)自身も後に「ル・フウを“完全なゲイキャラクター”として描くには描写が足りなかった」と後悔を示した発言があります。

一方で日本の反応は、「ディズニーに初めてLGBT要素が入った」ということで注目は集まったが、反発は比較的少なく、議論も“どこまで描写されているか”“それが子ども向け映画にふさわしいか”という観点が中心となりました。映画レビューや映画ファンからは、「ル・フウがゲイと断定するような明確な描写はない」「その扱いは抑制的で象徴的なものだ」という見方が多くありました。また、「単なる映画の娯楽」「キャラクターとしての面白さを損なわない範囲での表現」という意見もありました。特に、ディズニー作品に慣れている観客からは、“いつものコミカルあるいはサイドキャラクター”として受け止められていることが多かったです。一部メディアあるいは保守派の立場からは、「子どもにふさわしくない」「宣伝になるのでは」という懸念が示されましたが、日本ではそれが社会的な大問題になるほど広がりませんでした。また、描写の少なさを指摘する声があり、「もう少し明確にしてほしかった」「ほのめかしだけでは物足りない」という意見もありました。

 

Q.2 時代の風潮によりリメイク映画に影響がある事が分かりましたが、原作のキャラやストーリーをどこまで保ち、どこから変えていくのか基準はあるのでしょうか。

A.2 ディズニーは作品を映像化する際、時代や社会の価値観に合わせて大胆に再構築を行います。その中で、何を残し、何を変えるかには一定の方針が存在しています。

まず、ディズニーが最も重視しているのは「物語の核」を保つことです。たとえば、アラジンが貧しい青年から王女と出会い、成長していく過程や、魔法のランプとジーニーの存在、そして「自由」や「身分を超えた愛」といった普遍的なテーマは、どの時代の観客にも共感を呼ぶ要素として残されています。これらは、物語の象徴であり、ディズニーらしい夢と希望の物語の根幹を支える部分です。

一方で、時代の変化とともに、文化的・社会的に問題視される要素は積極的に修正されています。1992年版アニメでは、アラビア文化のステレオタイプな描写や、女性を受け身的に描く傾向が批判されました。2019年の実写版では、こうした課題を踏まえ、ジャスミンを政治的にも自立した女性として描き直し、多文化的でリスペクトを意識した衣装や舞台設定が採用されました。つまり、ディズニーは原作をそのまま再現するのではなく、「現代社会にふさわしい価値観」に沿って物語を再構築しています。

また、ディズニーは単に文化的正確さを追求するのではなく、誰もが共感できる「象徴的な世界観」を作ることを目指しています。実写版の監督ガイ・リッチーも「特定の文化を再現することよりも、世界中の観客が楽しめるファンタジー世界を描くことを重視した」と語っているように、ディズニーは現実と空想の中間にある“文化的にリスペクトのあるファンタジー”を目指しています。

このように、ディズニーにとって原作の扱い方には明確な基準があります。それは、物語の核となるテーマや感情の流れを守りながら、社会的・文化的な背景を時代に合わせて更新することです。原作を尊重しつつも、単なる再現ではなく、現代の観客に向けた「新しいアラジン」を提示することにこそ、ディズニーのリメイク作品が持つ意義と魅力があると言えます。

 

Q.3 『アラジン』・『美女と野獣』のオリジナル版とリメイク版のそれぞれの製作費を教えてください。

A.3 オリジナル版『アラジン』の製作費は約2,800万ドル、日本円で約28億円となり、世界興行収入は約5億4,050万ドルとなりました。リメイク版『アラジン』は、製作費約1億8,300万ドル、日本円で約183億円となり、世界興行収入は約10億5,069万ドルで、大ヒットを記録し、ディズニーの実写リメイク作品の中でも高い収益性を示しました。

一方、オリジナル版『美女や野獣』は、製作費約2,000万ドル、日本円で約20億円となり、世界興行収入は約4億2,000万ドルとなりました。リメイク版『美女と野獣』は、製作費約1億6,000万ドル、日本円で約160億円となり、世界興行収入は約12億6,000万ドルとなっています。これらの作品は、ディズニーのアニメーション映画から実写リメイクへの成功した移行を示す例となっており、製作費と興行収入のバランスも非常に良好と考えられています。

 質問にあった、アニメーションから実写へ変更になった理由・背景については、次回の発表で回答させていただきます。

担当:いあ

 

1. ディズニーにおける映画『アラジン』と映画『美女と野獣』

1-1    オリジナル版

←アニメーション版

→オリジナル版は両作品1990年代に制作

1-1-1  映画『アラジン』

a 公開:1992年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ

1-1-2 映画『美女と野獣』

a 公開:1991年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ゲーリー・トゥルースデイル、カーク・ワイ

1-2    リメイク版

←実写版

→リメイク版は両作品2010年代に制作

1-2-1 映画『アラジン』

a 公開:2019年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ガイ・リッチー

1-2-2 映画『美女と野獣』

a 公開:2017年

b 製作国:アメリカ

c 監督:ビル・コンドン

 

2. リメイク版制作時のフェミニズムの再興と女性の社会進出による影響

←(第三波〜第四波フェミニズム)

2-1 『美女と野獣』(2017)のベルの人物像

←オリジナル版(1991)では、ベルは知的で読書家だったが、村人には「変わり者」と扱われ、やや受動的

2-1-1 知的で好奇心旺盛な女性

a 村で唯一の読書好きな女性として描かれる

b 知識や教養を重視する姿勢が強調

c 読書を通して自分の世界を広げようとする

d 「自分の住む世界に閉じ込められたくない」「もっと広い世界を見たい」という探究心・向上心

2-1-2 発明家としての描写

a ベルが発明家として描かれている

Ex)洗濯機のような道具を作る

←オリジナル版(1991)ではベルの父モーリスが発明家として描かれている

b 単なる読書好きにとどまらず、「手を動かす」「考える」実践的知性も持つ

2-1-3 主体性と自立性

a 村人からの圧力(ガストンの求婚や村の価値観)に屈せず、自分の意志で選択し、行動する女性像

b 父を助けるために自らビーストの城に向かい、囚われの身となることを選ぶという自主的な判断

2-1-4 対等な関係から始まる恋愛

a 野獣との関係は、対話と共通の価値観(読書や孤独)を通じた相互理解から育まれる

b ベルは野獣を変える存在ではなく、お互いに成長する関係として描かれている

2-2 『アラジン』(2019)のジャスミンの人物像

←オリジナル版(1992)では、ジャスミンは「自由に恋愛や結婚を選びたい」という主張が中心

2-2-1 王位継承者としてのリーダーシップと政治的意識

a 政治的発言をする場面もあり、「この国の未来を決める立場になりたい」と明言

←オリジナル版(1992)では、「王女としての地位」に違和感を抱いている程度

b 父や周囲の「女性は王になれない」という固定観念に対して、毅然とした態度で反発し、「民の声を聞けるリーダーになりたい」と語る姿

c 黙らず、自らの声で不正に立ち向かう

←ジャファーから「王女は口を閉じていろ」と軽視された場面

2-2-2 自立心と主体性の強調の強調

a 自由を求めるだけでなく、自ら行動を起こし、現実を変えようとする

Ex)民の暮らしに関心を持ち、市場に出て直接人々と接する

Ex)国の外交や貧困についても強い関心を持っており、「見世物」や「嫁入り」の対象として扱われることに強く反発

Ex)恋愛においても、「自分の価値は誰と結婚するかでは決まらない」という自覚を持っている

2-2-3 「Speechless」の歌が象徴する女性のエンパワーメント

←「女性は黙って従うもの」という社会的抑圧への強い抵抗を表現した楽曲

a リメイク版のために新たに追加されたもの

b ジャスミンの心情と社会的抑圧への抵抗を象徴

Ex)I won’t be silenced, you can’t keep me quiet.

(私は沈黙しない。あなたたちは私を黙らせられない。)

c 女性が「声を奪われること」への抵抗を表す

d 彼女がこの歌を歌った直後に権力者に反論

e 自ら国王になる決意を示すという重要な転換点となる

f 物語終盤、衛兵に捕らえられそうになる場面:「Speechless」を歌い、自らの声で周囲の意識を変え、行動を起こす展開は、女性の自己主張とリーダーシップの象徴

2-2-4 恋愛と自己実現のバランス

a ジャスミンにとって恋愛は「目的」ではなく、「対等な関係」の中で生まれるものとして描かれる

b 女性の夢や目標が恋愛によって損なわれない姿勢を反映

←最終的に王国を統治するのはジャスミンで、アラジンはそれを支える存在

 

3. フェミニズムの再興と女性の社会進出の背景

3-1 SNSの普及

←TwitterやInstagram、Facebook

3-1-1 SNSの普及以前

a 性差別や性暴力は、被害者が声を上げにくい

b 「恥ずかしい」「周囲から非難されるかも」という不安

c 権力関係(加害者が職場の上司や有名人など)によって沈黙を強いられる

3-1-2 SNSにより性差別・性暴力に対する声が世界的に可視化

←個人の体験が、社会全体で共有・議論されるべき課題であると認識されるようになったことを指す

a 個人が直接、自分の体験や意見を匿名・実名で発信可能に

b 共感した人が「いいね」や「シェア」で拡散

c 同じ経験を持つ人の声が集まり、社会的な問題として認識

d テレビや新聞よりも早く社会的議論を巻き起こすケースが増加

e 女性の権利が「個人の問題」から「社会の問題」へと変化

f 「守られる存在」ではなく、「リーダーシップを発揮する主体」としての女性像が社会的に求められる

3-1-3 例:「#MeToo運動」(2017)

a ハリウッド女優のアリッサ・ミラノが性的嫌がらせや性的虐待を受けた女性たちにその実態を告発することを求めたもの

b 世界中の女性が性被害を告発するムーブメントへと発展

3-2 グローバル化と社会の変化

3-2-1 グローバル化で社会発展に女性の力が不可欠になった

a 経済・政治の国際化の中で、女性が教育やキャリアを通して社会参加することが可能

b 国連や国際機関も 「女性のエンパワーメント」=社会発展の鍵と位置づけ

3-3 映画・メディアの影響

3-3-1 大衆文化が「自立した女性像」を提示

a ハリウッドやディズニーをはじめとする大衆文化

b 時代の変化を反映して「自立した女性ヒロイン像」を描く

c これにより、若い世代に「女性もリーダーになれる」というモデルが提示

3-4 #MeToo運動以降の社会的圧力

3-4-1 #MeToo 運動を契機に、リーダーシップを持つ女性像が求められる

a企業や政治の場で、女性の権利やリーダーシップを軽視すると批判

b 教育やリーダー育成の場で「女性の自立支援」が優先的に語られる

 

4. リメイク版制作時のLGBTQ+の可視化とインクルーシブ表現による影響

4-1 『美女と野獣』(2017)のル・フウ

4-1-1 ル・フウ

a ガストン(悪役キャラクター)を崇拝し、ご機嫌を取っているお調子者の子分

b 時には、ガストンの突発的な怒りを鎮める役割を果たす

4-1-2 ディズニー初の公式なゲイ・キャラクター

←オリジナル版では、ル・フウはガストンの腰巾着のような描かれ方

a ガストンに対して憧れや好意を抱いているような言動

b 「ディズニー映画初のゲイ・モーメント」と話題

←クライマックスのダンスシーンの男性同士で踊る瞬間

c ガストンに片想いする描写

d ゲイのカップルがハッピーエンドを迎えたことがわかる描写

e 性の多様性を“さりげなく”表現

4-1-2 「ディズニー作品における初のゲイ・キャラクターを描きたかった」と語る

←ビル・コンドン監督

4-2キャスティングの再構築

←中東・南アジア・アフリカ系の多様な人種背景が共存するキャスティング

4-2-1 アラジン

a 俳優:メナ・マスード

b 出身・背景:エジプト系カナダ人

c 中東のルーツを持つ俳優

d 文化的リアリティを確保

4-2-2 ジャスミン

a 俳優:ナオミ・スコット

b 出身・背景:イギリス出身・母がインド系

c 南アジア的要素を取り入れ

d より多文化的なプリンセス像

4-2-3 ジーニー

a 俳優:ウィル・スミス

b 出身・背景:アフリカ系アメリカ人

c 白人ではないスターを配置

d 多様性の象徴としての存在感を発揮

 

5. LGBTQ+の可視化とインクルーシブ表現の背景

5-1 LGBTQ+運動

5-1-1 LGBTQ+とは

a  L:Lesbian(レズビアン/女性同性愛者)

b  G:Gay(ゲイ/男性同性愛者)

c  B:Bisexual(バイセクシュアル/両性愛者)

d  T:Transgender(トランスジェンダー/性自認が出生時の性と異なる人)

e  Q:Queer(既存の性の枠にとらわれない人)または Questioning(自分の性を模索中の人)

f  +:上記以外の性的多様性(アセクシュアル、パンセクシュアルなど)を包括する記号

5-1-2 LGBTQ+運動とは

a 性的少数者の人々が、差別や偏見のない社会を目指して行ってきた社会運動

5-1-3 LGBTQ+運動の目的

a 性的指向や性自認を理由とした差別・暴力の撤廃

b 同性婚やパートナーシップ制度の法的承認

c 教育・職場・メディアなどでの多様性の理解促進

d 自己表現の自由(カミングアウト・プライドイベントなど)の保障

5-2 LGBTQ+運動の歴史的背景

5-2-1 1969年:ストーンウォールの反乱

a アメリカ・ニューヨーク

b ゲイバー「ストーンウォール・イン」に対する警察の不当な弾圧に抗議したことがきっかけ

→世界的なLGBTQ+解放運動が始まる

c この出来事を記念し、「プライド・パレード」が毎年開催されるようになる

5-2-2 1970〜90年代:法制度と社会運動の拡大

a 各国で同性間性行為の非犯罪化、雇用差別の禁止などが進む

b イギリス

c 1967年に同性愛行為がイングランドとウェールズで非犯罪化

d オランダ

e 1970年代にヨーロッパでいち早く同性愛者の権利を保障

f 1980〜90年代に教育現場・職場での差別禁止を法制化

g スウェーデン

h  1972年に世界で初めてトランスジェンダーの性別変更を法的に認める

i カナダ

j 1980〜90年代に人権憲章に基づく差別禁止法が整備

5-2-3 2000年代以降:法的承認とメディアでの可視化

a 同性婚が認められる国が増加

b オランダが2001年に世界初の同性婚合法化国家となる

c 映画・ドラマ・アニメなどで多様な性の描写が増える

Ex)『グリー』(2009〜2015)

d 高校の合唱部を舞台

e ゲイ・レズビアン・トランスジェンダーの登場人物を積極的に描く作品

f 若者文化の中でLGBTQ+を肯定的に扱う代表作

Es)『美少女戦士セーラームーン』(1990年代)

g ウラヌスとネプチューンが女性同士のパートナーとして描かれる

5-2-4 2010年代:SNSによる可視化の拡大

a #LoveIsLove や #PrideMonth などのハッシュタグ運動が広がる

←SNSを通して当事者が声を上げやすくなったため

b #LoveIsLove:「誰が誰を愛そうと、その愛に価値や正当性の違いはない」 という考え

c #PrideMonth:LGBTQ+コミュニティの権利や文化を称え、性的指向や性自認の多様性を祝う月間(毎年6月)

←「プライド・パレード」

d #MeToo運動とも重なり、性に関する社会構造の見直しが進む

5-3 多様性と人種的包摂への転換

5-3-1 ハリウッドにおける変化

a 2010年代後半にハリウッドで「#OscarsSoWhite」運動

←アカデミー賞が白人ばかりだという批判

b キャスティングや物語の多様性を重視する方向へ転換

5-3-2 ホワイトウォッシングとは

a 映画やドラマで、本来非白人であるキャラクターや役割に白人俳優を起用すること

Ex)アジア系、アフリカ系、中東系の役を白人が演じる

b 問題点

c 非白人俳優の出演機会を奪う

d 文化的背景や多様性を正確に描かない

e 観客に「白人中心」の価値観を刷り込む

5-4 「#OscarsSoWhite」運動の歴史的背景

5-4-1 1920〜50年代:初期ハリウッド

a 黒人・アジア人俳優は主に脇役やステレオタイプ的役に限定

b 黒人は「召使い」「娼婦」「悪役」に限定されることが多かった

5-4-2 1960〜80年代:抗議運動の萌芽

a 黒人・アジア系俳優の権利向上が徐々に叫ばれる

←公民権運動の影響

b 商業的理由で「有名な白人スターを起用する」慣行は依然として継続

5-4-3 1990年代:国際市場の拡大と再批判

a 「白人中心のキャスティング」への批判が国際的に高まる

←ディズニー・アニメーションや大作映画がグローバル市場で成功するにつれて

b 『アラジン』(1992)や『ムーラン』(1998)のキャスティングは、白人声優・俳優中心であった

c 文化表象の誤り(オリエンタリズム)も指摘されはじめる

5-4-4 2000年代〜2010年代:#OscarsSoWhite運動

a ハリウッド大手スタジオに「キャスティングの多様化」が求められる

b 『ブラックパンサー』(2018)や『クレイジー・リッチ!』(2018)など、非白人中心作品が高評価

 

6. リメイク版制作時の文化的表象への批判による影響

6-1 『アラジン』への影響

6-1-1 オリジナル版

a アグラバーは“アラブ風”だが不明確

b 東洋を神秘・危険として描く

c 「アラビアン・ナイト」

←物語の冒頭、船で海を渡る商人が2人の子どもに語り出す際に流れる

b 「"Where they cut off your ear if they don't like your face."」

(奴らはお前の顔が気に入らなければ耳を切り落とす)

←「アラビアン・ナイト」内の歌詞

→差別的表現と批判を受け、1994年に変更

6-1-2 リメイク版

a アグラバーの世界観は、中東だけでなく、インド・東南アジア・アフリカ要素も取り入れた多文化的で抽象的な空間に再構築

b "Where you wander among every culture and tongue; It's chaotic, but hey, it's home."
(いろんな文化と言語が行き交う場所。混沌としているけど、ここが自分の故郷だ)

←オリジナル版で批判された歌詞

6-2 『美女と野獣』への影響

6-2-1 オリジナル版

a 村人たちは「単純で愚かな田舎者」というステレオタイプ

6-2-2 リメイク版

a 村人たちにも個性や役割が与えられる

b 能動的な表現が増加

Ex)パン屋や鍛冶屋など、職業ごとの描写が丁寧になり、町全体が生き生きとしたコミュニティとして表現

Ex)子どもや女性キャラクターも町の中で積極的に行動し、物語に関わる場面が増加

 

7. 文化的表象への批判の背景

7-1 背景

7-1-1 エドワード・サイードの『オリエンタリズム』以降、西洋による“東洋”の描き方(誇張・異)が批判対象となる

a エドワード・サイードの『オリエンタリズム』:1987年に発表された、中東・アジアなどの「東洋(オリエント)」をどのように作り上げ、表象してきたかを批判的に分析した書籍

b サイードの指摘は、映画や広告など大衆文化における異文化表象の問題意識を広めた

7-1-2 1990年代のディズニー作品は「文化的ステレオタイプ」が多く、映画研究者や批評家、教育現場で再評価の声が強まる

←サイードの批判以降

a 21世紀のディズニー実写リメイクや新作アニメで、文化的多様性やステレオタイプ回避を意識する契機となった

 

7. まとめと次回

7-1 まとめ

7-1-1 リメイクされた社会背景

a SNSにより性差別・性暴力に対する声が世界的に可視化されたこと

b グローバル化で社会発展に女性の力が不可欠になったこと

c LGBTQ+運動の高まり

d #OscarsSoWhite運動による多様性と人種的包摂への転換

e エドワード・サイードの『オリエンタリズム』による、映画研究者や批評家、教育現場で再評価

7-2 次回について

7-2-1 キャラクターの内面描写とリアリズム志向

7-2-2 SNS時代の価値観

a 自己表現

b 社会参