本番直前!スペシャルインタビュー!【脚本・演出:亀尾佳宏】 | 雲南市創作市民演劇

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本番直前!スペシャルインタビュー!【脚本・演出:亀尾佳宏】

 

 

正直に言えば、永井隆博士のことは平成16年に三刀屋高校に赴任するまで知りませんでした。 “永井隆平和賞”や“永井隆記念館”などを通じてお名前を知ったところが始まりです。
それからだんだんと今の雲南市三刀屋町でお生まれになったこと、長崎で被爆されたこと、平和に対して強い想いを持って執筆活動をなさっていたことなどを知り、いつか永井博士のお芝居を作りたいと思っていました。それが実現したのが雲南市創作市民演劇2014『Takashi』です。
 


今でも『Takashi』のことはよく思い返します。
それまで私は「お芝居というのは楽しく作るもの」という想いでやってきましたが、博士の人生や体験、残された言葉の重みを考えてみた時に、決して楽しいだけで書けるものではないと強く感じました。今という時代に博士の言葉とどう向き合えばお芝居に出来るのかずいぶん考えましたし、当時のメンバーと稽古場で話をしたのも覚えています。
その時によく話題に出たんですが、この2014年というのは当時の政権が“集団的自衛権”を閣議決定し、自衛隊を戦地に派遣することを認めた年なんですね。私にとっても衝撃的で、これまでどこか遠くにあると思っていた戦争が、一歩自分に近づいてきた感覚になりました。皆で改めて憲法や平和というものを考え、向き合い、話し合ったことで生まれたのが2014年の『Takashi』だったと思います。
 


 7年の月日が流れて2021年、改めて永井博士の物語を書くことが決まったときに感じたのは、前作では永井博士の家族にあまり触れていなかったということでした。2014年は先ほども述べた通り平和というものを中心に、国と国とのことに重きを置いていましたが、2021年は人と人とのつながりや自分と最も近い隣人である家族への愛を書こうと思いタイトルも『永井隆物語』としました。

その2021年の『永井隆物語』は新型コロナウイルスの影響で残念ながら無観客公演に。
2020年の『花みちみちて街』の公演中止から2年連続でコロナによる影響が出てしまいました。これまでやってきたことがこんなにも簡単になくなってしまうんだと感じましたし、もうお芝居は出来ないのではないかと思ったこともあります。
あれからさらに3年が経ち、こうやってまた雲南市創作市民演劇として活動が出来るようになり、新しいメンバーも集まってくれるようになりました。それはとても嬉しいことですが、これまで市民劇に参加してくれていた方や、以前舞台を見に来てくれていた方などの“途切れてしまった繋がり”はこれからまた結びなおしていく段階だと思っています。2024年の『永井隆物語』はまだ完成まで至ってはいませんが、そういった人と人との繋がりというのをより意識した作品になっていると思います。



今思えばコロナも悪い面ばかりではありませんでした。オンライン配信といった新しい楽しみ方や表現方法も普及したと思いますし、それによって新しく繋がった人も多いと思います。
ですが演劇はやはり生ものです。舞台上で演じるキャスト、全体を支えるスタッフ、そしてお客さん、皆が繋がることで生まれる面白さがあります。劇場まで足をお運びいただき、その面白さを感じていただけたら幸いです。