本番直前、スペシャルインタビューの第2弾は『花みちみちて街』の脚本演出を担当する亀尾佳宏さん。
2012年から11年、市民劇の移り変わりも含めてお聞かせいただきました。

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市民劇に携わりはじめた時は翌年もあるのかどうか分からなかったのですが、「続くといいな」とは思っていました。
そんな「続くといいな」が「続いて当たり前」のようになり、10年以上になりました。毎年参加してくださる方と、新しく参加してくださる方が合わさりながらこの雲南市創作市民演劇が続いてきたのは嬉しく感じます。
ただ、その間に起きたコロナウイルス感染症。この影響というのは予想しなかったことばかりでした。2020年、今回の演目である『花みちみちて街』び中止が2月に決定したときには「こんなことってあるんだ…。」と、どこか信じられない思いでいたのを覚えています。何があっても舞台の幕は開けるものだと思いながらずっとやってきた中で、こんなにあっさり幕が開かないことがあるんだと。
正直なところ、その時には”もうお芝居は出来ないかもしれない”と思いました。
続いてきたことが終わると、もう一度再開しようとするのはかなり大変なことです。
これまでのように、みんなが集まって一緒にお芝居を作ることはもう出来ないかもしれない。出来るようになったとしても長い長い年月がかかるかもしれないと思うと、恐怖でしたね。
翌年の2021年。少し状況が変わってきたなと感じましたが、『永井隆物語』は本番当日の朝に無観客公演とすることが決定しました。その時にも、ここまでやって幕を開けられないのかと悔しい思いでした。
それでもなんとか雲南市創作市民演劇を続けようといろんな人が努力してくださった結果、昨年は客席を半分にした形ではありましたがお客さんの前で公演が出来ました。これは本当に嬉しかったです。少しずつではありますが、これまでの日常が戻ってきているなと感じました。
今回は社会の風潮も元に戻りつつあることで「お芝居するよ」「観に来てくださいね」と人目をはばからずに言える。これも非常に嬉しいです。コロナ禍を経て本当にそのありがたみが分かるようになりました。

今回は2020年に一度公演しようとして中止になった『花みちみちて街』です。
ただ、同じものではありません。コロナの3年を経て、参加者も変わりました。たくさんの方から桜の思い出もお寄せいただきました。
思い出からは、この木次の桜が愛されてきたのだというのが強く伝わってきます。その人にしか分からない生の想いを直接感じ、脚本にしていくことで、3年前にはなかった場面がたくさん出来上がりました。
思い出募集といえば。
思い出を読ませていただいた時に驚いたのが、戦後間もないころに”青年団による演劇”があったということです。木次町の頃から町民劇があったのは知っていましたが、その頃にもこの街には演劇があったということには驚きました。
この思い出は今回の演劇を作るうえで大きなモチベーションのようなものになりました。

2020年に出発した『花みちみちて街』
3年の時間をいただき、雲南市の”桜”と”木次線”という大きな財産の両方を感じていただける舞台になったのではないかと思います。
前回の『鉄人56号』を観た方もまた違う形で楽しんでいただける舞台になっていると思いますので、ぜひ楽しみにお越しいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。