今インドの若者に大人気のモバイルゲーム、"Player Unknowns Battle Grounds"(通称「PUBG」パブジー)。
実際の軍隊の戦闘員、あるいはテロリストの一員になったかの様なリアルな設定とグラフィック。オンラインでチームになった相手と音声会話しながら「敵はあそこだ!打て打て!殺せ!」と、うちのアパートでも若者が昼夜熱中する声が聞こえて、胸が痛くなる。
夫の甥っ子・姪っ子たちも、こんなに流行っているものだから、「上達」することを目指して、何の疑問もなく1日数時間はプレーしてるらしい。ゲームの最初は飛行機から目的の戦闘地へとスカイダイビングする。眼下には毎回異なる未知の国の大地が広がっているという、ワクワクな設定。
ゲームのルールは、単純でヒドい笑。
パラシュートで落下した先の、戦闘で人々が避難した後の民家に次々と侵入して、そこに落ちている武器を拾い集めながら、とにかく出会う戦闘員を片っ端から銃撃戦で殺害して行くという、いわゆるバトルロワイヤル。
最後に生き残った者が勝ち。
より多くを強奪して、ほとんど皆殺しにした者が「勝者・英雄」と讃えられる。
この「#1」のポジションを奪うために、ちびっ子から若者の多くがこのゲームにハマり、大事な時間と、共感することのできる大切な心を犠牲にしてる。
まるで軍の特殊部隊のシミュレーション。
私情を殺した職業軍人のような世界が、ゲームとしてインドの隅々まで広まっている。一般人は銃を持たないインドでも、絶対に何らかの冷血な犯罪を誘発しそうで恐ろしい。
一般的に軍人が英雄として讃えられるインドでは、入隊を夢見たり憧れ続ける人も
が多いのも、この爆発的人気の原因かもしれない。
https://newsphere.jp/national/20190410-1/
↑日本でもこんな記事が。書かれているように、本当に「依存性」が高いと思う。と言うのも、うちの夫も今月初め頃からまんまとハマって、ちょっと困った事になってた。
夫は攻撃性の高い性格でもないし、普段は人を気遣う優しさやマメさがあり、いつも笑顔で冗談言って人を楽しませるタイプ。だから一緒にいると気楽で楽しい。
でもこのゲームにハマって以来、1日2、3時間はそういう彼が見られない。
夜帰宅してご飯食べて、私がお皿を洗って戻って来たら、もういない。
ゲームの中に吸い込まれてる!!笑
何が嫌って、その場にいるのに魂が抜き取られたみたいに、ゲーム以外のことは聞こえなくなってるのが一番イヤだし、怖いわ。
一般的な日本人なら、もっと色んなゲームや娯楽が選び放題だし、耐性もついてるから、こんなに熱中したりしないだろうな(ゲーム依存症は例外)。そんなに楽しみのない暮らしをして来たのかい?
最初は私も(ん?何か、大人しくなって楽だな)って、自分の事する時間にさせてもらってたけど、先週から仕事もなくなって昼間も暇なので、夜も夫がもぬけの殻じゃ余計につまらない。
何度か激怒もしてみた。
寂しいことも訴えてみた。いつもの心優しい夫は何処へ行ったのと。でも今の所「ゴメンゴメン、あと1ゲームでやめるから」と、結局私は起きていられず寝落ち。夫はここ毎晩午前2時まで寝られない。
何かねー。色々思っちゃったりするけど。
昔はこういう時、「自分を責める」ことってありがちだった。私と一緒にいてもつまんないの?とか、私はどうでもいいのとか。でもそういうはもう抜きにして。
「飢え」みたいのを感じなくもない。
隅々までネットとスマホが行き渡り始めたばかりのインド。エンターティンメントのなかった大国に、とんでもない流れが来てるなーと。
私がインドに来た3年前は、大人も子供もまだこんなの↑に夢中だったのに。
身内だけとの固い絆や、お寺や神事や数あるお祭りが人々の心を繋いで来たような場所だ。そんな所に、不特定多数の赤の他人とオンラインで声を掛け合いながら、同じ参加者をゲーム上とは言えどんどん殺戮してナンバー・ワンになるとか、
元々ある心の隙間に、悪い虫が憑いてる図、そのもの。。。
リアルな描写の豊富な場面に吸い込まれるんだろうねーご愁傷様。
ネパールはこのゲームを禁止したとか。
自制の力が育まれていない場合には、国が規制することで依存症の二次災害である「犯罪」を抑制することにつながると思う。
市場規模の大きいインドでは、どんな苦情や自殺者が出ても政府は二の足を踏んでいるように見える。今のところ規制は「1日4時間までプレーできる」というもの。命やモラルより経済効果か。。。神々の国だったはずのインドも、踵を返したように超巨大経済至上主義に転落してる気がする。
ウチも夫に4時間もこれされたら、家事も用事も終わりません。
流行りじゃなくて、恒久の教え
お金では買えない価値や文化
誰とも比較できない自分の尊厳
楽することと、幸せは別のもの
薄っぺらい経済バブルの対極にあるものが、身に積まされて分かるのって、やはりバブルを越えてからなのか。。。でも私はインドに期待したい。日本や先進諸国が歩んだ道とは別の道を行ってほしい。
5千年前にヴェーダの叡智がこの地に降りて、俗世的であり超人的な濃いキャラ過ぎるヒンドゥーの神々が伸び伸びと息づいて、仏教が生まれ世界中に広がって。この地ならではの良さをもっと広めれば、先進国にも経済至上主義にも迎合しなくていいんじゃない?
だってお金が儲かったって、今はまだ貧困層に還元するシステムが足りてなくて、寄付や良心頼みだし。大富豪と貧困層の格差がヒドすぎるよ。
私としては、夫に何を「禁止」することも疲れるから、もうやめる。
禁止の方はインド政府にお任せして、私は私の好きなこと楽しい事をさせてもらえばいいや。夫に遠慮も、もうしません。