宮脇 流の「昭和を話そう」 ( BOSSのブログ) -22ページ目

宮脇 流の「昭和を話そう」 ( BOSSのブログ)

70年代や、あの時代に輝いていたアレやコレや。
クリエイティブディレクターが語る、「思い出のエッセイ」です。

針葉樹

カラオケに行くと、ある後輩から必ず歌って欲しいと言われる曲がある。それが写真のレコジャケ、野口五郎の「針葉樹」なのだ。子供の頃に兄が買ったそのレコードを一緒に聴いていた、兄弟の深い思い出なのだと言う。理由はわかる。わかるけれど、この曲を歌うのはツライ。野口五郎の曲の中でも、暗くて寂しくて、そのうえ難しい。「私鉄沿線」の大ヒットで歌謡界でも不動の地位を築き上げていた野口五郎の1976年、21枚目のシングルがこの曲である。ただし、素人が歌うなら「私鉄沿線」や「甘い生活」の方がイメージも湧くのだけれど、「針葉樹」はタイトルからしてまずピンと来ない。そもそも針葉樹って松とか杉とかの葉が針のように尖った樹木の総称であって、ポップスにつながるような言葉だと思えないのは私だけだろうか。♪ 冬が来てもあなたよ枯れるな 木枯らしに耐える針葉樹のりりしさのように・・ ♪という歌詞も、なんか寒過ぎる。野口五郎の出身は岐阜県。杉の木が多いことでも有名な県、ということで針葉樹なのか・・。そのあたりのことは定かではないけれど、花粉症の私にはいろんな意味で「針葉樹」はちょっとツライのである。後輩よ、そろそろカラオケは勘弁してくれないかなあ。

人気ブログランキングへ
ひみつのアッコちゃん

先日、実写版の映画「ひみつのアッコちゃん」をTVで観た。主役の加賀美あつ子を演じたのは、今や大人気の綾瀬はるか。多少ムリはあるものの、みごとチャーミングに演出されていた。こんなにもファンタジックに描かれたら、原作の赤塚不二夫も草葉の陰できっとテレ笑いが続いただろう。原作のマンガは、1962年「りぼん」に連載というから、もう50年以上も昔。写真のコミックスを読み返してみると、少女マンガとギャグマンガの中間的なスタイルで、赤塚マンガとしてはかなり精彩に欠ける。それが、69年「魔法使いサリー」の後番組としてTVアニメ化されたのをキッカケに人気が爆発。その後、88年と98年にもリメイクされてアニメ化。そのつど、提供スポンサーのおもちゃのコンパクトは売れまくったらしい。♪そいつの前では女の子 ツーンとおすましそれはなぁに? それは鏡 鏡の中からツン、ツン、ツン・・♪主題歌はすぐに口をついて出るし、「テクマクマヤコン・・」の呪文も忘れていない。けれど、「おそ松くん」や「もーれつア太郎」、「天才バカボン」と並ぶ赤塚作品として受け入れることは、私には出来ない。原作には、「テクマクマヤコン」の呪文も登場しない。つまり、原作よりアニメや映画の方が完成度が高いのだ。赤塚マンガを離れても、半世紀もの間 衰えない人気は何だろう? それこそが、赤塚不二夫が描きたかったいちばんの「ひみつ」なのかもしれないなあ。

人気ブログランキングへ
きまぐれロボット

私がはまったのは中学時代。1972年の文庫、写真の「きまぐれロボット」という1冊からだった。その後、「ボッコちゃん」「マイ国家」「妄想銀行」「おのぞみの結末」・・という具合に。星新一の世界は、活字が苦手だった当時の私でもなぜかスンナリ入っていけた。難しいSF大作というのではなく、それでいて単なるコメディでもなく、必ず作品の中に毒がある。その猛毒に、きっと当たったのだろう。あの頃はマンガでも、藤子不二雄の「笑うセールスマン」や、ジョージ秋山の「ざんこくベィビー」などちょっとブラックな笑いが台頭していた。世の中が経済成長に直進していた時代だからこそ、「ちょっとまてよ!」と水を差すシニカルさを若者は望んだのかもしれない。71年の「ボッコちゃん」に収録された中に「おーい、でてこい」という話があった。経済成長中心の世の中で、ふと見つけた巨大な穴に人々はゴミや産業廃棄物を次々と放り込む。数年後、最初に入れたゴミが天からポトリと落ちてくるというオチなのだが、その恐怖がようやくわかる気がする。毎年増え続ける天災を思うと、このストーリーがつい頭をよぎる。ツケは必ず回ってくる。天から回ってくる。そのヒントが書いていないか、もう一度、星新一を読み返してみることにしよう。秋の夜は長くて、そして深いのだから。

人気ブログランキングへ