
映画「あしたのジョー」が公開されている。やまぴーのジョーもよく似ているし、バンタム級まで絞った肉体はさすがだ。けれど私にとっての「ジョー」はこの声、この人。あおい輝彦しかいない。「なあ、おっつぁんよぉ・・・へっへっへっ」というセリフ回しは、世の中を斜めに見た矢吹丈の姿勢そのものだった。あおい輝彦は、ジャニーズ事務所の初代アイドル。伝説のアイドルグループ「ジャニーズ」のボーカルで、ソロになってからも71年に「二人の世界」、76年に「あなただけを」、そして77年に写真のレコジャケ「Hi-Hi-Hi」を大ヒットさせている。甘い声と静かな目、それでいて派手なコスチュームというアンバランスが、歌手あおい輝彦の存在感だった。弟分グループとして登場した「フォーリーブス」が動なら、「ジャニーズ」は静の魅力。70年代、高度成長のきらびやかな時代にあって、なぜか静かな、どこか物憂げな香りをあおい輝彦は漂わせていた。それだけに、矢吹丈がはまったのだろう。内なる声、あの声をもう一度、聴きたくなる。
