人生は一度きりではないかもしれないと悟った父は
ど根性で人一倍リハビリをし半身不随を治し
近所の老人クラブに入会して碁を打ったり卓球をしたり
昔の父なら近所の老人さんたちと仲良くするなど
想像もできません
帰省の際に老人会をのぞきにいきましたが
脳梗塞をしたとは思えないほど 卓球が上手で機敏でした
負けず嫌いだったので 一生懸命努力したのだと思います
父は特に碁が得意で、十手先が読めるらしく
老人会でランクが首位なんだと ご近所の方が教えてくださりました
わたしと娘パトリシアが帰国すると
父は必ず新幹線のホームで待っていて歓迎してくれました
娘はいつも喜んで おじいちゃん!と 父の腕の中へ走っていきました
わたしの娘にも卓球を教えてくれたり
とても可愛がってくれました
昔のことが嘘のように
父とわたしがすっかり仲良くなり
電話も頻繁にかけ楽しく会話できるようになったころ
お医者さんから父に脳梗塞再発の可能性を
示唆されました
もし再発した際には
寝た切りになる可能性もあると・・
初めて脳梗塞で倒れて入院した2年前
同じ病室で脳梗塞で倒れたひとを何人もみた父は
自分の近い未来に起こるべく事態を把握したようでした
そして
自分がもしまた脳梗塞で倒れたら
寝たきりになってお前に迷惑をかけたくない
と言うようになりました
「何言ってるのお父さん?
リハビリがんばってこんなに元気になったじゃない
再発なんてしないよ」
とわたしは父を励ましていましたが
父は自分の手の甲をかざし
「ごらん。血管が浮き上がってるだろう?
少しでも酒を飲めば破裂しそうだよ
長年の飲酒で血管がぼろぼろなんだ」
と
わたしにその血管を見せてくれました
そして「俺は長くない」
とか
「おじいちゃんと会えるのはこれで最後になるかもよ」
とわたしの娘に言い出すし
勘の鈍いわたしは
大げさだなぁと呆れていて
父が何を言っているのか
全く理解していませんでした
そんなある日
わたしが帰省していた12月でした
父とお昼ご飯を食べ明日また会おうねと約束したのに
翌日父から連絡がありませんでした
電話をかけても応答がありませんでした
父は常に時間に正確です
ましてや私と娘が帰国してるので
いつも待ちきれずに早く会いにきます
どうしたんだろう・・まだ寝てるのかな・・
そう思いつつ
わたしに会いにきてくれてた姉と二人スーパーで買い物していた時です
胸騒ぎがして
「ね、お姉ちゃん
お父さんが 明日からおじいちゃんは遠くに行くからもう会えないとか
変なこと言ってたんだけど・・
電話にもでないし具合悪いのかもしれない
気になるから一緒に見に行ってくれる?」
と頼みました
二人で運転して父の家に向かいながら
胸がどきどきしてきました
姉もわたしも無言でした
父の住むアパートに着いて急いで中に入ると
父がベッドで眠っていました
こんな時間まで 不眠症の父が眠っている?
不審に思い父を起こそうとしましたが目を覚ましません
わたしの胸は爆発しそうでした
「お姉ちゃん、お父さん起きない どうしよう」
わたしはうろたえて泣きだしました
姉は110番で救急車を呼んでいました
救急隊の方が到着し父を病院まで運び
胃洗浄をしてくれました
睡眠薬の大量摂取でした
わたしを泣かすな 白いカモメよ~♪