出会いはいつも八月 ガブリエル・ガルシア=マルケス/旦敬介訳
「ガルシア=マルケスの死後に出版された」ということは
避けて通れない。
まずは、『百年の孤独』『族長の秋』ぐらいしか読んでいなかったので、
「これがガルシア=マルケス?」ということだ。
これは「ガルシア=マルケスは読んだことがある」という大多数の人も
同じでは?
「マジックリアリズム」という世界的偉業を作った作品群とは
ずいぶん違う。
1980年以降のものを読んでいないので、
その流れの中にあるのか、それから外れる異質なものなのか、
判断できないのだが。
そして、「『百年の孤独』の著者が書いた」という属性を外してみると
「細部の詰めに引っかかりながらも、まあ読み通せる」というものだろう。
もう一点、重要なのは、
作家が認知症になりながら、曲がりなりにも“完成?”させたということ。
全体の整合性を検討することが難しくなりながら
(なので、死後も出版されなかった)
それでも細部の表現に手を入れ続けたもの、という
“作家の業”を感じさせるものなのだ。
いくつものバージョンや断片があるものを
最終的に一冊の本として完成させ、
こうやって発行されたのは
何人かの努力と決断によるものだ。
これも本書の“価値”と言っていいだろう。