神と黒蟹県 絲山秋子
最後の5分の1で、急に小説世界が変わる。
2年ちょっとで雑誌掲載した連作短篇なんだけど、
こういう最後を当初から意図していたのかな?
当初から「読者を驚かせてやれ」と意図していたわけではなく
「筆がすべった」のではないかと思うが、どうだろう。
どちらにしても、こういう展開に驚かされることが
小説の醍醐味だ。
最初の5分の4は、
「神」も出てくるけど、ほとんど“登場人物の1人”でしかない。
地方都市に生きる人たちが淡々と描かれていて
それはそれで悪くない、と思っていたんだけどさ。
そうなんだけど、本書の一番の楽しみポイントは固有名詞だと思う。
人名の三ヶ日凡(みっかびなみ)、燕木浜一(つばのぎはまいち)、漆大治郎(うるしだいじろう)
地名の窯熊市、狐町、苗島と笛島、丸太鼓交差点、
そのほかケミ鯛、のんこり市など。
読んでいるだけで、気持ちがほっこりする。