高Ca血症って、実は「だるい、疲れた」の正体かも?
「カルシウムは骨を強くするんでしょ?じゃあ、たくさんあるといいんじゃないの?」
そう思っている方がいたら、それは大きな誤解です。血液中のカルシウムが多すぎる状態を「高Ca血症(高カルシウム血症)」といい、実は、日々の体の不調の裏に隠れていることがあるんです。
特に、透析を受けている方にとっては、ご自身の健康を守る上で、この高Ca血症について正しく知っておくことがとても大切です。
この記事では、専門的な話を噛み砕いて、誰にでもわかるように高Ca血症のキホンをお伝えします。
「Caは高いといい」は間違い!その3つのデメリット
カルシウムは、骨や歯を作るだけでなく、神経や筋肉を動かす大切なミネラル。しかし、体の中のバランスが崩れて多すぎると、体は悲鳴を上げてしまいます。
デメリット①:気づきにくい体の不調
高Ca血症の症状は、とても分かりにくいところから始まります。
「最近、なんだか食欲がないな…」
「やたらとだるくて、集中力が続かない…」
そんな、風邪や寝不足かな?と見過ごしてしまいそうな症状が、実は高Ca血症のサインかもしれません。
さらに、カルシウム濃度が極端に高くなると、ぼんやりしたり、言動が混乱したりと、まるで認知症のような症状が出ることもあるんです。
デメリット②:命に関わる心臓と血管のリスク
血液中の過剰なカルシウムは、血管の壁にこびりついてしまいます。これは**「血管の石灰化」**と呼ばれ、血管が硬くなり、動脈硬化を急速に進めてしまいます。
その結果、心筋梗塞や脳卒中など、命に関わる病気のリスクを高めてしまうのです。
デメリット③:骨がもろくなる?!
「カルシウムが多いのに骨がもろくなるって、どういうこと?」と不思議に思いますよね。
高Ca血症の主な原因の一つは、副甲状腺という臓器の働きが過剰になること。
この臓器は、骨を溶かして血液中にカルシウムを無理やり引き出すことで、カルシウム濃度を上げてしまいます。
つまり、体内のカルシウムを増やすために、大切な骨をどんどん犠牲にしている状態。結果的に、骨はスカスカになってしまい、ちょっとしたことで骨折しやすくなってしまうのです。
あなたは大丈夫?原因は「一般」と「透析」で違う
高Ca血症は誰にでも起こりえますが、その背景にある原因は、透析を受けている方とそうでない方とで大きく異なります。
【透析を受けていない方の場合】
主に、副甲状腺の病気や、がん細胞が作り出す物質が原因で起こることがほとんどです。
【透析を受けている方の場合】
腎臓の働きが低下しているため、体内のカルシウムとリンのバランスが非常に不安定です。
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副甲状腺の異常: リンが体内に溜まりやすくなると、そのバランスを保とうとして副甲状腺が働きすぎ、高Ca血症を引き起こします。
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薬の影響: リンの吸着剤や、骨の健康のために使われる活性型ビタミンD製剤が、高Ca血症の原因になることがあります。
予防と治療:自分の数値をチェック!
高Ca血症は、放置すると命に関わることがあります。治療も予防も、まずは自分の体の状態を知ることから始まります。
【治療法】
医師の判断のもと、主に次のような治療が行われます。
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点滴: 体内の水分を増やし、尿から過剰なカルシウムを排出します。
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お薬: 骨からカルシウムが溶け出すのを抑える薬や、副甲状腺の働きを抑える薬を使います。
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手術: 原因が副甲状腺の病気だった場合、手術で治療することもあります。
【透析患者さんの予防策】
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血液検査の数値を把握する: 透析のたびに行われる血液検査の結果を、医師や看護師さんと一緒に確認しましょう。特に「カルシウム」「リン」「PTH(副甲状腺ホルモン)」の3つの数値は、とても重要です。
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お薬を正しく飲む: 自己判断で薬の量を増やしたり減らしたりせず、医師の指示通りに服用しましょう。
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食事に気をつける: リンやカルシウムを摂りすぎないように、食事内容に気を配ることも予防につながります。
まとめ
高Ca血症は、体の中のカルシウムが多すぎる状態。
放置すると、だるさや疲労感から始まり、血管をボロボロにし、命に関わる病気の原因にもなります。
「カルシウムは良いもの」というイメージを一度リセットして、自分の血液検査の数値をしっかり把握することが大切です。
気になる症状がある方は、まずは主治医や医療スタッフに相談してみてくださいね。