その愛は、獣と化すか?~ドラマ「君が獣になる前に」を観て、募る疑問と深い余韻~
先日、Amazon Prime Videoで配信されているドラマ**「君が獣になる前に」**を一気見しました。正直な感想は「面白かった、けど…」という、期待とモヤモヤが同居する複雑なものでした。今回は、この心揺さぶられる作品の魅力と、私が観ていて特に感じた疑問点を交えながら、まだ観ていない方へ向けてご紹介したいと思います。
「君が獣になる前に」ってどんな話?
このドラマは、ある恐ろしい事件から幕を開けます。
主人公は、静かに死と向き合う仕事に就く葬儀屋の神崎一(かんざきはじめ)。
そしてヒロインは、彼の幼なじみであり、多くの人々を魅了する人気芸能人・希堂琴音(きどうことね)です。
物語は、2025年10月31日の渋谷ハロウィーンで発生した、日本中を震撼させる大規模な毒ガステロ事件を中心に展開します。
この事件によって、愛する琴音を失った神崎は深い絶望に打ちひしがれます。しかし、彼はある日、突如としてタイムリープ能力に目覚めるんです。神崎は、テロによって命を落とした琴音を救うため、そして彼女がなぜ事件に関わったのか、その真実を突き止めるために、過去と現在を行き来しながら奔走します。
彼は、琴音が**「獣」**になってしまった原因を探り、その運命を変えようと必死にあがくんです。
タイムリープが織りなす「if」の世界
このドラマの最大の魅力は、やはりタイムリープを繰り返しながら、未来を変えようと奮闘する神崎の姿でしょう。
過去に戻って琴音との関係や事件のピースを探り、未来を変えようと試みるたびに、新たな事実が判明したり、予想もしない展開になったりするんです。
まさに「もしあの時、違う行動をしていたら?」という「if」の世界が展開され、観ているこちらも神崎と一緒に、彼の迷いや苦悩を追体験できます。タイムリープのたびに少しずつ状況が変わり、謎が深まっていく展開は、まさに中毒性がありました。
引き込まれる登場人物たちの「闇」
琴音がなぜ毒ガステロという凶行に走ったのか、その真相を探る過程で、神崎は彼女の知られざる過去や、周囲の人々の思惑に触れていきます。
登場人物たちは皆、心に何かしらの**「闇」**を抱えていて、その複雑な人間関係が物語に深みを与えています。
特に、琴音を演じる北乃きいさんの演技は圧巻でした。彼女が見せる純粋さの裏に潜む狂気や葛藤は、本当に引き込まれます。
琴音というキャラクターが、なぜ「獣」と呼ばれる存在になってしまったのか。その背景が丁寧に描かれていくことで、観る側の感情を強く揺さぶられます。
私が感じた「モヤモヤ」と、それでも観る価値
しかし、正直なところ、いくつか疑問点も残りました。
特に私が最後まで納得できなかったのは、なぜ琴音が毒ガステロという形で、あそこまで大勢の人々を巻き込む必要があったのかという点です。
もちろん、彼女が抱える壮絶な過去や、それに起因する目的は理解できる部分もありましたし、そうせざるを得なかった彼女なりの理由も描かれていました。
それでも、多くの無関係な人々を犠牲にするという手段を選んだ理由に、私は最後まで十分な納得感を得られませんでした。「もっと別の方法はなかったのか?」と、何度も頭をよぎりましたね。
また、タイムリープを繰り返した結果、最終的に「神崎にとってどうなれば最良の結末だったのか」という、物語の着地点が少し曖昧に感じられたのも事実です。
結局、神崎は何を成し遂げたかったのか、そしてその目的は果たされたのかが、もう少し明確に提示されていれば、よりスッキリと物語を終えられたのに、と感じました。
あなたなら、未来を変えられる?
それでも、「君が獣になる前に」は、観る人を引き込む力を持った作品です。ハラハラする展開、謎が謎を呼ぶストーリー、そして登場人物たちの心理描写は、十分に楽しめます。
「なぜ?」という疑問が残るからこそ、観終わった後もあれこれと考察したくなる、そんな魅力があるのかもしれません。
もしあなたが、予測不能な展開のサスペンスが好きなら、そして、登場人物たちの葛藤に深く入り込みたいと思うなら、ぜひ一度観てみてください。この物語の「獣」は何だったのか、そしてあなたなら、その未来をどう変えますか?
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