その頃になると
順調に回復してきて

眼科に行って
口腔外科に行って
床屋で丸坊主に刈り上げて
売店でコーヒーやお菓子を買って
本屋でジャンプの立ち読みなど

室外に出ることも多くなりました

2回目の血液検査があり、
数値も正常だということなので
投薬治療や障害手帳は
まだ少し先の話になるかなと
主治医に言われました。

私としては
今のまま元気が続けば
それが一番いいと思っているので
まだ先といわれて少し安心しました

ただし、
いずれはやってくるんです
ウイルスの数値があがり、
免疫力の数値が下がり、
障害者と呼ばれるようになり、
少なからず生活に不自由する日が
主治医の話を思い出しながら
ノートに書いていると
徐々に気持ちが落ち着きました

焦っても泣いても
結果は変わらないわけですから
どう受け止めるかが肝心なのだと
意外と冷静になっていましたね


主治医から最初に言われたことは、
免疫力が徐々に低下すること
私はまだ感染初期であったこと
血液検査の結果が正常値であったこと
投薬を続ければ健康を保てること
ただ、まだ投薬の段階ではないこと
すぐ死ぬわけではないこと
などなど…

ノートをまとめていた頃に
看護師さんが病室に来られました


「今晩の担当です」とあいさつが
あいかわらずの笑顔でした

気持ちは落ち着いていましたが、
私は笑顔で答えられていたのでしょうか
主治医が告知をするとき
私から目をそらさずに、
言葉をひとつひとつ丁寧に選び、
私の表情や動作をすべて把握し、
どう受け止めるか観察し、
それでいて優しい表情をしていました

わたしは
そういえば外来の受診をして
肝炎やHIVの検査も
同時にしようと提案されたことを
ようやく思い出しながら聞いていました


HIVの告知を受けている最中、
主治医の話が右から左へと
音にしか感じられず
説明してくれている内容を
何もノートに書けませんでした

先生が部屋を出ていくと
私はベットに横たわりながら
ゆっくりと落ちて行く点滴を眺め
気づけば夕方になっていました