2022年10月現在はフナ類の中の一型にとどまっているキンブナ。

 

その主な分布域は関東地方だが、私自身はまだ一度もこの関東キンブナを釣ったことがなかった。

 

そこで、2022年秋の本州遠征時に立ち寄った北関東の、利根川水系の上流域で10月初旬に釣獲を試みた。

 

初日に訪れた川は、前日の雨の影響で少し増水していたこともあって、流れが意外に速かった。

 

そこで、流れの緩いスポットを狙いながら、およそ2キロ釣り上がったが、ムツ、タモロコギンブナっ子、オイカワは釣れたもののキンブナだけは釣れなかった。

 

翌日は、前日の川の本流にあたる川の、上流部を釣り上がってみた。

 

そして人生三尾目のギバチが釣れたりした後に、さらに遡ると、これまでで一番いい雰囲気の、釣れるとしたらここだろうというプールに出くわした。

 

釣れるまで粘ってみるつもりで流し始める。使ったのは、ひなた九尺に唐辛子ウキのフカセ仕掛けで、ハリは秋田狐2.5号、エサはキヂ片で底に着いた状態で流れるようにした。

 

だが、カワムツなどの細長系が数尾来た後はアタリもなくなってしまった。移動しようかと思っていたその矢先、対岸のボサの中にヒブナを発見!

 

キンブナのヒブナであればと願い、釣り続けたがアタらないので、キヂを両端がハリから垂れる長さにしてみたが、それでもヒブナは喰ってこなかった。

 

あきらめかけながら惰性で流していたところ、手前のボサの近くを流れ、自分の少し下流へ行ったウキが視界の隅で激しく消し込んだようだった。

 

慌ててアワセたところ、思わぬ強い引き。ヒブナがついに喰ったのかと思って抜き上げると、飛び出てきたのは緋色ではなく茶色の、顔の丸いフナだった。

 

キンブナだとわかり、「おおー、釣れたー!」と思わず叫んでいた。

 

初めて釣った関東キンブナ、全長約11センチのメスで、背鰭分岐軟条数は12。2022年10月、北関東の利根川水系にて。

 

初関東キンブナの別影、左右反転。

 

初関東キンブナの俯瞰

 

初関東キンブナの腹側

 

初関東キンブナの丸みを帯びた頭部

 

初関東キンブナの左第一鰓弓。鰓把は短く突起がほとんどなく、31本で、26から42本というキンブナの範囲内にあり、背鰭分岐軟条数12(基準は11-14)と合わせて、確かにこの個体がキンブナであることを示していた。

 

関東キンブナのハビタット

 

初関東キンブナへと導いてくれたヒブナ

 

当初は少なくとも三尾は釣って背鰭分岐軟条数や鰓把数などの平均を出すつもりだったが、その後も釣り続けたものの他には釣れなかったので、この「金」ブナはまさに値千金の一尾となった。

 

キンブナ型のフナ類は関東の他に東北地方の太平洋側にも分布するとされているが、日本海側の秋田県内のある池で、透明鱗個体を含むキンブナ型と思われるフナ類を釣ったことがあった。

 

2017年5月に秋田県内の池で釣れたキンブナ型と思われたフナ類

 

これらの個体が本当にキンブナ型だったのかを確かめるために、2022年9月にこの池を再訪し、三個体を釣って解剖してみた。

 

#1:全長約11センチ、メス、背鰭分岐軟条数14、鰓把数44

#2:全長約10センチ、メス、背鰭分岐軟条数14、鰓把数48

#3:全長約11センチ、メス、背鰭分岐軟条数13、鰓把数43

 

そうしたところ、背鰭分岐軟条数はいずれもキンブナ型に当てはまったものの、鰓把数はいずれもキンブナ型には当てはまらなかった。また、鰓把数に関しては、#2についてはナガブナ型の45から57の範囲内に収まったが、他の二個体は下回った。

 

というわけで、この秋田のキンブナ様(よう)フナ類に関しては、現時点では何型であるのかは不明。

 

一方、北海道の石狩川水系某水域から過去に釣った三個体は、キンブナ型に当てはまった。

 

石狩川水系の某水域から8月初旬に釣った金色が強く背中の頭部近くが角ばっている一個体。全長約13.5センチのメスで、背鰭分岐軟条数14、鰓把は関東キンブナとは違って長いものの、数は37本であるので、キンブナ型に当てはまった。

上の個体と同所的に9月中旬に釣った二個体。凄グル使用。

上:全長15センチ弱、メス、背鰭分岐軟条数14、鰓把数38

下:全長約13センチ、オス、背鰭分岐軟条数14、鰓把数36

 

これらの北海道産キンブナ型フナ類の起源は不明だが、関東産のキンブナに比べて頭部が大きく(頭長比0.382対0.269)、頭の後方の脊梁が角張っている点が特徴。体色の金色はとても強く、むしろ錦鯉に見られる金色に近い印象を受けた。また、釣った14個体でざっとだが、15センチを超える個体はいなかった。

 

余談だが、北海道産のキンブナを見た後に、本家本元の関東キンブナの口の小さな上品な丸顔を見ると、思わず「由緒正しさ」を感じてしまった(笑)。