10月の中旬に、奈良県は大和郡山市を訪ねた。狙いはタウナギだった。
ここは金魚の養殖が盛んで、養殖池の周りの用水路にも逃げたと思われる金魚が泳いでいる。またドジョウやエビ、ザリガニ、タモロコなどもいて、タウナギの餌には事欠かない。
現地に着いてみて気付いたのは、道が狭いこと。なのではるか遠くに駐車して30分ほども歩いて戻る羽目になった。
この辺りはタウナギの宝庫と言われているが、水路はコンクリート三面護岸でびっしり固められており、隠れる所がないのでなかなかタウナギは見つからない。
だがある溜池からの水の落ち口には泥が溜まっており、その段差にはいくつか穴が開いていた。
タウナギは視力よりも振動とおそらく匂いで餌を感知するので、22ポンドの色付き四つ編みPEラインをがまかつの管付チヌ5号に直接結んだ。それをホームセンターで見つけた、鎌の交換用の33センチの木製の柄に巻きつけたものをタックルとして使った。エサにはザリガニの剥き身を使った。
ロッドではなく鎌の柄を使ったのは、穴に引っ込まれた時に綱引き状態になるので、しなりやドラグがない方がいいからだった。
まずは端の穴の前でエサを揺らしてみるが、何も出てこなかった。そこで、水の落ち口の升の部分で探ってみるが、ここは穴がどこにもないようで、タウナギはどこからも現れず、代わりに狭い所に二頭もいる成体のミドリガメにエサを取られそうになった。
升を諦め、さっきの穴の反対側の端の穴の前で揺らしてみた。
すると、ヌッと言った感じで、二つの顔が同時に現れた。二つともタウナギだった!
そのうちの一尾の方がよりエサに執着心があったので、徐々に穴からエサを遠ざけてその一尾を誘い出した。
体が半分ほど出たところで、エサを揺らすと、パクッと食いついた。アワセる!
だがハリはすっぽ抜け、タウナギは穴に引っ込んでしまった。
もう一度同じことを繰り返し、今度はエサが口の中に咥え込まれたことを確認してビシッとアワセた。
次の瞬間にはそのタウナギは空中でグネングネンと舞っていた。半分穴から体を出させたのが幸いして、穴には一切引き込まれることはなく綱引きにならずに済んだ。
初めて釣ったタウナギ、約60センチ。上に見えているのは竿として使った鎌の柄。長物系は「つの字」で撮影するようにしているが、そのためには、アメリカウナギと同様に、氷を使った冷温麻酔をする必要があった。
初タウナギの頭部。鰓裂どころか鰓孔すらなかった(実際には鰓孔は腹面に一つあるとのこと)。写真に見えているシワは、吸い込んだ空気を貯めておくために頭部を膨張させるためのもの。
初タウナギの顔。小さいながらも眼はちゃんとある。
初タウナギの俯瞰
初タウナギの腹側
タウナギのハビタット。三面コンクリート護岸の水路でも、底に泥が溜まると、その段差に穴を掘って隠れることができる。
魚らしくない外来魚タウナギだが、ヌメリはちゃんとあった。だが魚臭さはなく、代わりに少し粘りがあるように感じられた。ヌメリの多さはそれほどでもなく、例えばライギョと比べるとライギョの方が多いなと感じる程度だった。
柳川などで目撃例があるタウナギだが、北部九州で見かけることは稀で、私自身一度もない。いつかは釣ってみたいと思っていたので、念願がようやく叶えられてはるばる奈良まで赴いた甲斐があった。
穴の奥行きが短いため体の一部を出して寝ている大きなタウナギ。大和郡山にて。