2006 年3月に初ブルトラウトを釣った後で、しばらく追いかけたドリーバーデンだったが、釣れないので後回しにしていた。そしてコカニーバーボットと済んだので、いよいよ本格的に探すことにした。

私がカナダで利用しているロードマップにバックロードマップブックがある。本社が現在住んでいる所のすぐ近くにあり、小さな出版社だが、車道の他にトレールやスノーモービルルートなども網羅しているのに加えて、地図上の川や湖に棲む魚の種類まで調べてあって重宝している。

その南西ブリティッシュコロンビア州版をある日眺めていて、バンクーバーの北のジョージア海峡に注ぎ込むクリークの上流にある湖に、魚マークがあることに気付いた。調べてみるとこれらの湖にはカットスロートトラウトとドリーバーデンがいることがわかった。

7月中旬に現地へ。車道から湖へは2時間半の登山となった。ウェイダーとフローター一式を背中に背負っての登山だったが、ほとんどなだらかなトレールだったのでそれほど息は上がらなかった。

残り 1/3 くらいの所にさしかかった時、50 メートルほど先に黒い大きな物を発見。アメリカクロクマ (black bear) だった。草の実でも食べていたのだろう。まだこちらに気づいていない間に写真を撮った。

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そしてこちらに気づいたので、2本のロッドをお互いに叩いて音を出したら向こうにあわてて逃げて行った。追いついた頃には山の斜面を必死に登っていた。臆病な性格のようだ。そこからはあちこちに熊の糞が落ちていた。そしてようやく目的の湖に着いた。湖というより沢池と言った方がいいサイズだった。

薮をかき分け岸辺に降り立つと、あちこちにクマの糞があった。まさにベアーカントリーに来てしまったようだった。

弁当を半分食べた後でウェイダーを履き、ライトスピニングタックルをセットした。ラインは4ポンドで、エコギアグラスミノーピンクグローのキャロライナリグを使った。さすが人のめったに来ない場所だけあって 10 尾ほど次々にヒットしたが、すべてカッティ (カットスロートトラウト) だった。

そこでグラスミノーの代わりにバークレーガルプのレッドウィグラーをハリの長さだけつけ、対岸へ移動し、大きな岩の上に立って最深部付近めがけてキャストした。そのままラインを張ったまま沈ませながら、少しずつリトリーブしてカケアガリの底付近を曳いた。

カッティがいくつか釣れた後、少し左に移動した後の1投目だったと思う。リトリーブし始めてすぐにヒットし、特に変わったファイトもなく、難なく寄せてゴボウ抜きにしようとした時、体側にカッティとは違うパーマークがあるのに気づいた。慌ててネットで受けてよく見ると朱色の斑点にひれの端の白い縁取り。ドリーだった!「やった」と思わず叫んでいた。

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初めて釣ったドリーバーデン、21 センチ


釣り始めて2時間かけてようやくゲットした一尾だったが、苦労して登って来た甲斐があった。これでだめならフローターを出すしかないと思っていたところだった。撮影後ただちにベアーカントリーから逃げ帰ったのは言うまでもない。

サケ目サケ科イワナ属。名前の由来は、19 世紀に発表されたディケンズの「バーナビー・ラッジ」という歴史小説に出て来る少女の名ドリー・バーデン。この女の子が着ている服が赤玉模様だったので、朱色の斑点をまとう本種の名前になった。したがって Dolly Varden と D と V を大文字で表記するのが正しい。北海道のオショロコマとは同種である。ブルトラウトによく似るが、ドリーバーデンの方が頭部や口が小さい。カナダではブリティッシュコロンビア州北部の太平洋側および州の南西端付近、それにユーコン準州の一部に分布している。最大全長 127 センチ。降海型のものは餌を求めて淡水域と海水域を行ったり来たりする。無脊椎動物および脊椎動物食性。海から淡水に入って来たものはシーラン (sea-run) と呼ばれ、銀化しているのが特徴である。河川に長くいるものは体色が濃く、斑点類もはっきりとしている。シーランの方が大型化する。

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2007 年8月にブリティッシュコロンビア州北部のナスリバー支流で釣ったドリーバーデン。シーランと思われる。ちなみにこれを撮影したスポットはグリズリーの餌場だと後で知った。ドリーのいる所クマありだ。



ドリーバーデンのハビタット。ブリティッシュコロンビア州北部。