「独裁者ヒトラーは、膨大な映像が残る一方で、自らを神格化するために私的な姿をほとんど撮影させなかった。謎多きヒトラーの素顔をあぶり出す唯一の鍵は、愛人エヴァ・ブラウンが撮影した4時間の16ミリフィルム。ヒトラーが信頼する人物との私的な交流が捉えられている。フィルムの登場人物を特定するためにナチ関連映像120時間分をAIに読み込ませた。アーカイブ映像とAIの組み合わせで、埋もれていた真実を探る試み。」
ブロ友さんのご紹介で特集を知り、配信期限が31日までだったので慌ててみてみた。
とても詳しくレポを書いてくださり、これは見なきゃ💞と。ありがとうございます!↓
先日、プライムビデオの配信で映画館での上映を見損ねていた「関心領域」を見たばかり。
アウシュヴィッツ強制収容所の隣で、平和に、まるで桃源郷のように暮らす所長一家の暮らしぶりが淡々と描かれていく。あまりにもおだやかに自然と子ども達とがふつうに平和に生きていて、そして昼夜を問わずアウシュヴィッツでは炉の火が灯り煙突からはユダヤ人の遺体を焼く大量の煙が放出される。
バタフライエフェクトの番組の中で見たヒトラーは、昼夜問わずドイツ国民の為に尽くすと宣言していたにもかかわらず、権力の座についてから4470日のうち、1044日をミュンヘン近郊の山間にあったベルクホールと呼ばれた別荘で愛人エヴァと穏やかに日々を過ごしていたのだった。まるであの関心領域の中の世界のように。
「ヒトラーは居心地のよさと共に一種の家族生活を楽しんでいた。常に女性達がそこにいた。
ヒトラーはいつも午後二時頃にようやく起き出して食事をとった。
午後は大抵散歩に出かけ、その後テラスで集まりがあり、7時にダイニングで夕食。
そして映画鑑賞が続いた。」バタフライエフェクトより
水着でピンポンをする女性達。明るい日差しの緑豊かな平原で散歩するヒトラー。わきあいあいとテラスに集まる人々。座り心地のよさそうなソファに身をゆだねて映画をみるヒトラー。
なんでもないような、日々の暮らしがそこにあった。
もうまるで、「関心領域」の世界。本当にこんな風に暮らして生きていて、そして同時に強制収容所やガス室の計画をも進行させていく。
AIにヒトラーや側近たちを顔認識で学習させ、誰が何処にいるのか、などを割り出していく研究者たちの様子は、清水玲子先生の「秘密」を思い出したりして。まるでそこに出てくる「科学警察研究所 法医第九研究室」だな~とちょっと浮き立つ。(※舞台は2060年の近未来、亡くなった人の脳の記憶を映像化して犯人を捜すミステリー。)
ヒトラーの横にいつもいた恰幅のよい人懐っこい笑顔の中年男性モレルは医師であり、ヒトラーに薬を処方する役目を負い、暗殺事件後のヒトラーはそれまでよりもさらに強い薬物を欲しがり、薬物依存が進み、医師自身も薬物を自分に打つようになっていく。くったくのない笑顔の裏は、緊張にはりつめた現実。
薬物依存者の、もうまともではない人の判断からあのような出来事が引き起こされて行ったのか。
愛人エヴァ・ブラウン・・聞いたことのある面々と初めて知る人達。あの時、ドイツで、生きていた人達。確実に世界を大きく変え、膨大な数の人々が儚く消える、その作戦を計画し実行した人たちの生活の様子が切り取られつきつけられる。
ヒトラーに気に入られた彫刻家アルノ・ブレーカーも初めて知った。
ヒトラーってこういうのが好きだったんだな~・・。
これはキュビスムや抽象絵画を退廃芸術とみなしたわけだ。
読唇術で会話を読み取ったら、かなりヒトラーに対して強気なアルノ・ブレーカー!
総統の片腕として、彼は世界首都ゲルマニア計画なるものの彫刻部門を受け持った人であり、彼の独特な創作様式はナチス体制の美学を反映したものだった、とウィキペディアから。
ヒトラーが好んで側に置いた側近(イケメン)とアルノ・ブレーカーの作り上げる堂々とした人間の彫刻には類似点が。こういう、非の打ち所がない美丈夫がヒトラーの理想とする人間。
戦後も長生きして回想録まで。(アルノ・ブレーカー1900年7月19日 - 1991年2月13日。なんと91歳まで長生き)
その後の彼の様子がわかる。
「戦後、連合国により多くの作品が破壊された。また、芸術でナチズムに加担した道義的責任は免れず、彫刻家としてのオフィシャルな活動は、生涯大幅に制限された。」そうだ。
こちらもいつか読んでみたい本。
バタフライエフェクトの中で、軍服に身を包んだアルノ・ブレーカーが、ドイツ占領下のパリの美術館でヒトラーを案内する映像が出てくるのだが、回想録ではかなり詳しく語られているようだ。
「軍事政権の現状を詳しくは知らされずに食うためにやっていた」芸術家の言い分も知っておきたい気がする。
アルノ・ブレーカーの作品の写真集。
顔認証AIで迫る、ヒトラーの隠された素顔
NHK+配信期限 :3/31(月) 午後10:44 まで
再放送 4月3日(木)