診察室の奥には開けっ放しのドアがあって

看護師さんが行き来する

それで

ずっと「すき」と言葉に出せなかった

二年間通ってるけど

その扉閉まったことなかった


きのう

カタンて閉まって

あなたは後ろ振り向いた

わたしは

「その空間」で

はじめて二人になれたこと

嬉しかった

あなたは咳払いも止めて

窓を閉めて

今思うとおんなじ空気吸ってたんだ

とても

とても

こそばゆくって

これ以上にない居心地良い空間と

時間だった

相変わらず何話したか

あんまり詳しく憶えていない

でもそのときの気持ちと

満たされるような感覚は

はっきり憶えてる

周りなんかどうでもいいと思えるような

わたしの悩みも

「どうでもいい」と感じるような

そんな強い気持ちになれた

不安は曖昧になり

痛みに鈍くなりつつなるんじゃなくって

本当にきのうがあれば

「嫌なことなんてどうでもいいんだよ」

それは

そう思えるのは

「諦めきれない恋心」でしょうか?
余計なことばかり話しちゃうから

これからはあなたが質問して?

ってお願いした

言うことは言って

もうこの時間は終わると思った

でも「時間がない」って言ってたのに

「最近どう?」ってはじまった

たくさん言葉選んだ

沈黙も長かった

わたしも

何故かあなたも

その何もない時間

とても好きなんだ


話す度咳払いして

風邪ひいちゃったかな?とか

直視出来なかった顔も見納めみたいに

じーっと

やっぱり見とれてた

少しボサボサな髪とか

それに反してピシッとしたシャツだとか

窓が空いていて閉めた時の仕草とか

ぜんぶだいすきだけど

ひとつひとつ

お別れを

あなたは

「最高の先生」

だと
少し困った顔して

笑ったのを久しぶりに見れた

ちょこっと嬉しくって

凄く淋しくなった

でもあなたの所

いずれ離れるとはまだ言っていない

先生と別のところ両方は行けないから

今はあなたがいいよって

遠回しに言ったら

少しほっとしたような

そんな顔してた気がする

あの笑顔には勝てない

何でも帳消しにしちゃうような

穏やかな声と共に
ねえ先生?

わたし、自分が間違ってるなんて思ってない

言葉で伝わらないから行動してるだけ

なのにどうしてそれを勝手に僻んだり

妬んだりするんだろう?

ねえ先生、人って難しく出来てる訳じゃないよね

もっと単純なのに

歳を重ねるごと

邪推だとか色んなもの覚えるものなんだ

今まで目を閉じてて知らなかった

本当は綺麗なの忘れちゃうのかな

満たされない人ばっかり

見るだけでわたしが苦しくなる

世の中はこんなに汚れていたんだね

でもそれに抗う人は

別格に美しく見えるけれど
「それ」は「やさしさ」なんかじゃなかった

「それ」は「打算的でずるいもの」だった

嘘をつかないギリギリのライン

今頃解って

結局要らなかった

けれど

「嘘つき」

って言いたい

優しさはき違えて

結局のところ

自分以外傷つけてるじゃない

「本当のやさしさ」

知ったから解った

あなたはいつも

考え抜いて言葉にしてる

やさしさを形にしてた

でも彼は違う

もっと自己中心的な

形のない上っ面の優しさ振り撒いてる

察しろなんてムシがいい

「考えて言葉にする勇気」

それがどれだけ大事か

またひとつあなたから教わった

わたしはもう無理だと思う