ある時、カウンセラーの先生から、人間関係について次の二つを心がけてみるようアドバイスを受けたそうだ。
1、人に気を使わない
2、相手に嫌われても構わない
人に気を使わないってどういうことだろう??
と、それまで相手にずっと気を使ってきた K さんは疑問に思った。
相手に嫌われても構わない。
そんな、、、。
始めは漠然として、どのような意図があるのかわからなかったそうだ。

この二点はさかのぼること、乳幼児期の初めての人間関係がどうであったかに多分に影響する。
乳幼児期の初めての人間関係とは、まさに多くは母親との人間関係が当てはまる。
赤ちゃんは、お母さんに気を使うだろうか?
赤ちゃんは、お母さんに嫌われまいと泣くのを我慢したりするだろうか?
生まれて間もない赤ちゃんが、このようなことを考えて、お母さんと相対するわけがない。
人は最初は間違いなく、お母さんに全力でぶつかるのだ。
しかし、10 年、20 年の月日を経た親子関係を見てみよう。
お母さんに気を使わず、会話ができる親子がどれだけいるだろう。
おそらく100 % の親子には当てはまるまい。
そして、お母さんに嫌われまいと、自分の行動を我慢したりすることは、、。
多くはないかもしれないが、そんなに少なくない親子関係で、お母さんに嫌われまいと努力する子供がいることであろう。
K さんとしみじみ話したことは、人間は思いもよらぬほど大きな影響を、お母さんの言葉や態度から受けているということだ。
人が育っていく過程で、お母さんにかけられた言葉や態度で、子供の人生が染め抜かれていくといっても過言ではないと思うのだ。
K さんはこれまで、お母さんは優しいと思っていたそうだ。
しかし、真摯に自分と向き合ううちに、お母さんの本当の姿が見えてきたという。
表面上は優しく見えたけれど、実際にやっていたことは、子供にとって最悪だった。
抱っこして頬ずりしたり、ふざけあったりするようなことはなく、お母さんから愛されているのか不安になったという。
K さんはいつも、お母さんの顔色を伺って生きるようになったそうだ。
気づけば、いつもお母さんに好かれたくて、お手伝いをしたり、気を利かせたりするようになったという。
「お母さんは私のことが好きかしら?」
「お母さんに嫌われたらどうしよう」
この発想が K さんの人間関係の軸になった。
だから、K さんは友達と話すときにとても緊張する。
人数が多いと、話せなくなったり、気持ちが高ぶって涙が出てくることもある。
また、常に友達に嫌われないように、必要以上に良い人になろうと必死で心を砕く。
気の毒にと、客観的な感想を持たれたかたがいるかもしれないが、考えてみてほしい。
世の中に、本心の伴わない良い人がなんと多いことか。
一歩間違えば、本心の伴わない良い人に、、、なってはいないだろうか。
人に嫌われることを極端に恐れる人が増えていないだろうか。
この背景には、個々の最初の人間関係が大きく影響しているのではないか。
最初の人間関係につまづく人が増えているのではないかと思うのだ。
どんなに便利な時代が来ようと、試験管の中で生命が誕生しようと、人が成長する過程に必要な心の養分は、省略することはできない。
子供は抱っこして、頬をすり寄せて、その存在を大きく肯定し、大きな安心を与えて育てる必要がある。
一人っ子であろうが、10 人兄弟姉妹であろうが、それが生命をこの世に送り出す大人の責任である。
何度も書くが、大切にできない、責任の持てない生命を送り出してはいけない。
(だからと言って、思慮の浅い中絶などもってのほかだ)
K さんは、
「でもさ、何も気づかないで死んでいく人生じゃなくて良かったよ」
と健全さを勝ち取るために、今までの不足を取り返している最中である。




