前回の1次試験に引き続き,2次試験の感想(→前回の記事はこちら).



 2次試験の会場は例年通り東京の都市センターホテル.面接は2回に分けて行われる.1回目が神経学的診察に関する面接で,2回目が提出したレポートに関連する面接だ.担当の面接官はそれぞれの面接に2名ずつで,いずれの面接官も教授クラスの偉い先生ばかり(-_-;)



 神経学的診察の面接.部屋に入ると,

「まずは机の上に持参した診察道具を並べてみてください」

ハンマー,音叉,眼底鏡,ペンライト,舌圧子,爪楊枝を机に並べる.これだけしか持ってきてないや,と今更ながらに思う.眼底鏡,舌圧子は試験会場で同僚に借りたものだし,爪楊枝に至っては前日に飲み屋で調達したものだ.

「先生は普段,痛覚の検査には何を使っていますか?」

痛覚の検査はルレットでやることが多いが,衛生面から爪楊枝の方がベターとされているので,「はっはい,爪楊枝を使うことが多いです..」とつい答えてしまう.

「先生はこのタイプのハンマーを使われているのですね」などと少し雑談をする.

「では,実際に診察をしてもらいましょう」

ここでついたての後ろで待機していた模擬患者さんが登場する.

「Jaw Jerk,上下肢の腱反射をとってください」

「上肢に軽度の錐体路徴候が疑われる場合にどのような点に注意して所見をとりますか?」

「視野と眼球運動の所見をとってください」

「Lermitte徴候とは,どのような徴候ですか?所見はどのようにとりますか?」

「Hoffmann徴候をとってみてください」

「棘上筋,棘下筋のMMTをとってください」

「歩行障害がありそうな患者さんがいます.先生の普段のやり方で歩行障害の診察をしてみてください」

「決闘者の手とはどんなものですか?」

このような質問を受けた.系統だって順番に聞かれるというよりは,その場で面接官の先生と自分が話している流れで,先生が思いつかれたものを指示される感じ.問題なくできてれば,「そうですね.いいですね」と言われる.Hoffmann徴候については,「やり方がちょっと変ですね.うーん」と言われ,「こうじゃないですか?」と先生が実演してくれた.そうこうしているうちに面接の20分はあっと言う間に過ぎて,「じゃあ,そろそろ終わりましょう」と何とか終了.



 全体を通して,受験者がリラックスして診察できるように配慮してくれていたように思う.ただ,別の部屋で面接を受けた友人は,一番最初に「診察バッグも持ってきていないんですね」とイヤミっぽく言われ,その後も散々だったそうだ.東京の試験会場までいつもの診察バッグを持っていく人ってどのくらいいるんだろうか...そもそも僕は診察バッグを持ってない.若手の頃から診察バッグ使っている人ってそんなに多くないよね??試験対策としては,神経内科学会が監修した標準的診察法のDVDは絶対に見ておいた方がいい.でも,このDVDは90分とかなり収録時間が短いので,当然すべての神経診察を網羅していない.不足している部分は教科書で学習しないといけないが,「ベッドサイドの神経の見かた」では少し不十分で,「神経症候学を学ぶ人のため」にを読んでいたのが役立った.




 次に隣の部屋に入って,今度は10症例のレポートに関する面接を受ける.

「先生の症例は幅広く選んでいていいですね.進行麻痺など今ではかなりめずらしい疾患も入っていますし,興味深い症例が多いです」

ちょっと褒められて,悪くない流れだな,と思う.

「脳波,NCVは自分で実施することはできますか?」

「神経生検,筋生検を実施したことはありますか?プレパラートは自分で見ていますか?」

「筋疾患と神経疾患それぞれの筋病理の特徴について述べてください」

「筋電図での筋疾患,神経疾患の所見の特徴を述べてください」

「手根管症候群の患者さんの診察はどのように薦めますか?」

とレポートとは直接関係ないことを色々聞かれる.この時点で既に10分経過している.次に,

「この患者さんをアテローム性脳梗塞と診断した根拠は何ですか?」

「PSPのパーキンソニズムの特徴を述べてください」

レポートに関連したこととして,このような質問を受けた.



 こちらの面接も,非常に穏やかな先生方で,比較的リラックスして面接を受けることができた.レポートに関する質問よりも,それ以外の質問の方が多かった.つまり,レポートの症例についてしっかり答えられるようにしておくことは当然だけれども,他に何を質問されるかわからないので,ある程度幅広い知識が要求される.でも,一次試験の勉強と,普段の臨床を普通にやっていれば答えられる問題が多いはず.僕は全部の質問に正確に答えることはできず,「うーん,ちょっと違うかな.また勉強して下さい」と言われたりもした.



 最終的に合格を付けてくれるかどうかは面接官次第.厳しいことで有名な面接官もおられるそうなので,どの面接官に当たるかによって合否が左右される面は否めず,ある程度運もあるかもしれない.ただ,うまく事前の対策をしておけば,合格の確率を高めることはできると思う.



 以上,神経内科専門医の2次試験を終えての雑感でした.忙しい仕事の合間に試験勉強するのは大変だけれども,知識の整理になるし,こんな機会がなければ絶対に知らずに終わっていただろう知識も身につくので,勉強したことは決して無駄にはならないと思う.これから受験される方は頑張ってください.