安政3年 土佐藩、
父、岩崎弥次郎が庄屋に半殺しにされたのに、奉行が庄屋とぐるであったために、とがは全部父にあるとされ、奉行が会ってもくれぬことに、がてんがいかぬ息子・弥太郎は、吉田東洋という傑物に訴えれば、なんとか城内で聞き入れてもらい、取り調べのやり直しをしてもらえるという龍馬の話にのって、吉田東洋の門前で粘って、つまらない話だったらその場で斬ると言われながらも、話を聞いてもらえることになった。
しかし、東洋は「そんな話はどこにでもある。泣き寝入りするしかない」、とそっけなかった。ふたりの前に控えていた家臣が刀を抜こうとしたそのとき、
龍馬「お待ちくだされぇー」
「恐れながら、」
「お殿様の親戚でおられる松下嘉平様は、」
「日ごろよりお酒をお召しあがりになられると、」
「分別をなくされ、それを咎められるものは、」
「誰もおらんかったと聞いちょります。」
「けんど...」
「けんど、吉田様だけはそれを許さず、」
「お殿様の前で、」
「松下様を殴られたと」
弥太郎「職をとかれるのをお覚悟のうえで、」
「無礼をお許しにならなかった吉田様であったら、」
「きっと、きっとわしらの無念を分かってくださるとー。」
東洋は振り向きざまに怒鳴った。
東洋「黙れ!」
東洋「わしは殴ってもええがじゃー」
「天才...」
「じゃきに。」
龍馬「はっ」
唖然とするふたり。
東洋「そのうち、わしは、」
「また参政に帰り咲く。」
「わしがいかに有能なか、お殿様は分かっておられるきのう。」
「そんな人間は、」
「何をしても、」
「ええがじゃっ!」
あっけにとられるふたり。
東洋「岩崎弥太郎ー」
弥太郎「はっ」
洋「おぬしは何をもっちゅう?」
答えられぬ弥太郎。
東洋「坂本龍馬っ」
龍馬「はっ」
東洋「わしに何ができる?」
首をかしげる龍馬。
「なんの力もないもんは、黙っておるしかしかたがないがじゃ。」
「それが世の中ぜよ。」
そういい捨てると、東洋は振り向き、ふたりの前から去っていった。
驚く竜馬が顔を上げ、弥太郎の方を振り向くと、
カッと目を見開いた弥太郎の目から、
悔し涙がひとしずく頬をつたっていった。
< 続 か な い か も ... >
* バックナンバー
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庄屋の横暴には村のみんなが困っちょった。おとやんはみんなのためにけんかしたがやき「弥太郎の涙」3
それは泣き寝入りせいと...他に何ができる、おんしらぁ「弥太郎の涙」4
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