安政3年 土佐藩
田んぼに引く水をひとりじめにした庄屋を、岩崎弥次郎が抗議したが、庄屋は弥次郎を半殺しにし、奉行は何の咎めも庄屋せず、咎は弥次郎に着せられた。
弥次郎の息子、弥太郎は奉行所に何度も訴えたが聞き入れてもらえず、友達の坂本龍馬に、庄屋が奉行所の後ろ盾があることを利用しているから、抗議しても無理だ、と告げられると絶望する。
殿様の親戚筋の直参の乱行を一喝した吉田東洋という豪傑に、この一件を訴え城内に聞き届けてもらい、奉行と庄屋に裁きを下してもらおうと提案する龍馬のことばに、最初はあきれていた弥太郎であったが、父と母の気持ちを聞かされた弥太郎は、吉田東洋に訴えべるべく龍馬宅を訪ねた。
・ ・ ・
そして、吉田東洋に訴えを聞いてもらうべく、東洋宅に押しかけ、門前で粘っっていた弥太郎と龍馬に三日目の朝が来た。
東洋の家臣「起きや」
「起きんかい!」
弥太郎が目覚めるとふたりの侍がふたりを立ってみている。
弥太郎「龍馬っ、龍馬っ、龍馬」
弥太郎は驚きながら龍馬のひざを何度もたたいた。
弥太郎「龍馬っ!」
龍馬「あいー、なんじゃぁー」
龍馬は寝ぼけていたが、侍に気付くと驚いて姿勢を正して、
ふたりとも頭を下げた。
・ ・ ・
弥太郎「安芸郡(ごおり)井口(いのくち)村、」
「岩崎弥次郎のせがれ、弥太郎にございます。」
龍馬「本町、坂本権平の弟、龍馬にございます。」
家臣「吉田様がおんしらの訴えを聞いてくださるそうじゃ。」
顔を見合わせたふたり、
笑顔を取り戻すと、
龍馬「ありがとうございます。」
再び頭を下げた。
家臣「けんど、下士のぶんざいで、」
「吉田様に直訴するからには、」
「当然、それなりの覚悟をしちゅうのであろうなあ。」
「おんしらの考えは聞くにあたいしないと、」
「吉田様がご判断されたら、」
「この場で手打ちにされても仕方がないがぜよ。」
驚くふたり。
顔を見合わせた。
家臣「さあ、ゆうてみいや。」
弥太郎は何度もうなずくと、
弥太郎「はい」
「くっ」
弥太郎は恐れをなしてことばが出ない。
龍馬「弥太郎」
弥太郎はうなずくと口を開き始めた。
弥太郎「先日、わたくしどもの村で、いさかいがございました。」
「庄屋の島田弁衛門が川の水を自分らーのたんぼに引き込んで、」
「ひとりじめしたがでございます。」
「それで、そのことに異を唱えたわたくしの父、弥次郎が、」
「庄屋たちから殴る、蹴るの乱暴を受け、」
「生死の境をさまようほどの大けがを負うたでございます。」
「けんど、安芸奉行様は父が悪いと決め付け、」
「庄屋は咎めなしという、」
「不当な裁きをくだされたがです。」
龍馬「その裏には、」
「不正があったがにございます。」
きっと目を見開き、目をふせる東洋。
「安芸奉行様はかねてより、庄屋から金品を受け取っちょりい、」
「ゆえに、あのような不正な裁きを...」
弥太郎「こんな理不尽が許されるがですろうか」
東洋の顔が険しくなった。
龍馬「どうか、どうか吉田様のお力で裁きのやり直しを、」
弥太郎「お願いいたします。」
龍馬「お願いいたしますー。」
東洋は背筋を伸ばすと、
東洋「坂本龍馬とゆうたなあ」
龍馬「はいー」
東洋「どうしておんしがここにおる?」
龍馬「はっ?」
龍馬「わたしは、」
「おおけがをされた弥次郎どのの姿を見、」
「さらに」
「不正な裁きに」
「許しがたきを感じたにございます。」
東洋「けんど、そのような話はどこにでもころがっちゅう。」
「わざわざわしが聞かねばならんことではないろうがっ。」
弥太郎「それは泣き寝入りせいと...」
東洋「他に何ができる、おんしら」
答えられぬふたり。
東洋は答えがないと知ると、その場を振り向きざまに立ち去ろうとした。
家臣がそれを見届け、刀を抜こうとした...
龍馬と弥太郎は、このまま斬り捨てられてしまうのか...
* バックナンバー
わしにとってはこの世でたったひとりの親父なかじゃぁ。黙っちゃれるわけがないろうがっ「弥太郎の涙」1
わしら下士じゃぞ、虫けらの言うことに領主が耳を傾けるわけがないろうがーっ」「弥太郎の涙」2
庄屋の横暴には村のみんなが困っちょった。おとやんはみんなのためにけんかしたがやき「弥太郎の涙」3
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