サン=サーンス ピアノ協奏曲 第5番 | いつも心に音楽を

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クラシックの名曲等やピアノ演奏、音楽理論などを中心に展開。
また、尊敬する若きピアニスト牛田智大さんを応援します。

 

 数あるクラシック音楽の名曲、名作の中から、個人的思い入れのひときわ強い作品を独断で紹介、解説します。 


牛田智大さんが演奏した、また近く演奏予定・・・ではない作品という意味では、

前回は チャイコフスキー 交響曲 第5番 を取り上げました。

 

 今回はピアノ協奏曲   

 

 サン=サーンス 

  ピアノ協奏曲 第5番 ヘ長調 Op.101 「エジプト風」

 

         

         

 

 

 

 サン=サーンス( - 1921) はフランスを代表する作曲家で、優れたピアニスト、オルガニストでもありました。

 

誰もがよく耳にする最もポピュラーな作品では 「動物の謝肉祭」でしょうか。

交響曲、協奏曲、オペラ、ピアノ独奏曲のジャンルで特に多く作品を書いています。

 

  彼は音楽史上、稀にみる神童👦で、2歳でピアノを弾き、3歳で作曲を初め、11歳で本格的なピアノリサイタルを開いていますびっくり

 

  また多彩な趣味を持ち、詩、絵画、数学、天文学などにもかなり本格的に親しみ、文筆家としても活躍しました。

 

 

   サン=サーンスのピアノ協奏曲は、ピアノ音楽史上 画期的! といわれることはほぼありません。 正直、歴史的名作に分類されることもありません。 

彼の作風は一言でいえば、保守的、もっといえば時代の割に古臭さを残していますにやり

 

でも僕はサン=サーンスのサウンドがとても心地よく感じられます。

古臭?いといってもやはりフランス的で独特の洒落た聴きやすい感覚は、どの作品にも現れるようで、解りやすく親しみが持てます。

 

交響曲 第3番 「オルガン付き」 や ヴァイオリン協奏曲 第3番もとても好きな作品です。

 

 

              

 

 前置きが長くなりましたが、

サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番は、1896年、作曲者61歳の時の作品

彼は旅行がとても好きで、アフリカを何度か訪れ、この作品もエジプトのカイロに滞在中に書かれていたそうです

 

その為かこの曲の第2楽章に、独特のエジプト風、アラブ風の音階を用い、大変エキゾチックに作られていまして興味深いです。 こんにち「エジプト風」のニックネームで親しまれている所以です。

          

         

しかし、世界的ピアニストは往々にして、この作品を低めに評価するのでしょうか??

フランス人以外の名ピアニストの動画がなかなか少ないのです・・・・が

 

     2019年ピティナ特急グランプリに輝いた(ぶっちぎり優勝) 当時17歳の亀井聖矢さんの演奏は、技巧面ではパーフェクトに近く、スピード感が凄い。スピード出し過ぎなのでは、と思う程。音楽的表現も中々ですが、とにかく圧倒されます! この作品の新しい魅力を示してくれました!

 

   

            亀井聖矢 演奏

        

  第1楽章  アレグロ・アニマート  ヘ長調  3/4拍子

 

ピアノに提示されるコラール風の牧歌的な第1テーマは、爽やかな朝のようで、この楽章全体の明るくのびやかな雰囲気を醸します。

やや哀愁を帯びた第2テーマ(上の動画で2:04-)も親しみやすく、第3のテーマ(3:06-)も併せて、ゆるやかで自由なソナタ形式を形作ります。

展開部(4:12-)ではピアノを中心に激しいサウンドになりますが、第一テーマが何とも絶妙に再現(5:49-)さらに第2テーマ、第3テーマと続き、コーダは第2テーマにより穏やかに終わります。

     

      第2楽章   アンダンテ  二短調  3/4拍子 

 

 (10:07-) 東方趣味に彩られた、「エジプト風」の由来となる楽章。

開始からピアノが極めてエキゾチックな音階を急速に奏で続け、落ち着いてからも独特の雰囲気を醸す音楽をしばらく展開します。

中間部(13:08-)は、作曲者がナイル川で聴いたヌビアの歌を基にしたという晴れやかな旋律が奏され、やがて虫などの声も加わったような楽し気なムードになります。

更に、ピアノが黒鍵だけを使って奏でる部分(16:13-)は、摩訶不思議な効果抜群です!

再びエキゾチックなムードに戻り、やがて夜を迎えようとしている砂漠のように、力を弱めながらほの暗い静けさの中に終わります。

 

        

             この楽章で頻繁に登場する ”アラブ風”音階

 

 

  第3楽章  モルトアレグロ  ヘ長調  2/4拍子

 

 (19:42-)地中海の航海の雰囲気があると言われています。

大変ピアニスティックな効果の高い音楽で、後に作曲家自身によって、★ソロ作品に編曲されてます。 

溌剌として爽快な第1テーマがピアノに示され、オケも加勢し展開されたのち、どこか素朴な印象の第2テーマ(21:15-)が現れ、次第に嵐のようなサウンドになり、中間部分は暫し激しさが続きますが、再び第2テーマが現れ、大自然を思わせるようなのびやかで力強い終結に向かってゆきます。

 

       

 

          

        務川慧悟  

     ロン・ティボー・クレスパン国際音楽コンクールにて サン=サーンス ピアノ協奏曲第5番

 

  務川さんの演奏は、フランスで学ばれて、フランスものを得意とされてる彼の、既に円熟味と愛情さえ感じる落ち着きがあると思います。

 

      

 

             

              ★  「エジプト風」の第3楽章を、独奏版にして更に手を加えたエチュード

 

 

     

           

                  第2楽章の基となった音楽世界  古代以来のエジプト音楽サウンド

 

 

      サン=サーンスのピアノ協奏曲で、最も演奏機会が多いのは第2番ト 短調で、

次いで第4番 ハ短調と、この「エジプト風」で、

  

第1番  二長調 第3番  変ホ長調は、こんにち演奏機会はむしろ稀なようです。

 

    

           

                 ルービンシュタイン  サン=サーンス ピアノ協奏曲 第2番

 

  第2番ト短調も、ロマンティックで幻想的な雰囲気が色濃く、とても魅力的な作品だと思います!

 

 

因みに、牛田さんは、サン=サーンスと言えば、デビュー暫くの頃、リスト編曲「死の舞踏」をリサイタルでよく取り上げていましたが、この作曲家の作品は基本的に好きなのかな?

 

 

       

 

 

 

これまで純フランスものといえば、ラヴェルの名曲2曲(水の戯れ、亡き王女のパヴァーヌ)を披露された印象くらいしかないのですが、

 

このサン=サーンス「エジプト風」、いつかぜひとも披露して欲しいと願っています!

 

 

                                 

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 コロナ禍ドクロ、国内では緊急事態宣言も解除され、様々な社会・経済活動は徐々に動き出していますが、イベント開催、中でもクラシックの演奏会はどうしても”密”になるため、完全実施ができるのはまだ先のようですね・・・ショボーン